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カルロ・アンチェロッティ着任後、プレミアリーグは5勝2分1敗。エヴァートンが復調してきた。直近5試合の3勝2分は、リヴァプールの全勝に次ぐリーグ2位の好成績である。モイゼ・ケーンが才能の一端を発揮し、ドミニク・カルヴァート=ルーインはプレー強度が増してきた。
また、リシャーリソンがまた一歩スーパースターの領域に迫り、ルカ・ディーニュは攻守ともにリーグ屈指のレベルにある。2月18日現在、4位チェルシーとは5ポイント差の9位。「チャンピオンズリーグの出場権も見えてきた」。エヴァトニアンは胸をときめかせているに違いない。
27節:アーセナル(A)
28節:マンチェスター・ユナイテッド(H)
29節:チェルシー(A)
30節:リヴァプール(H)
31節:ノリッジ(A)
32節:レスター(H)
33節:トッテナム(A)
今週末から厳しい闘いが連続する。CL出場権を争うライバルとの闘いが5試合も組まれ、リーグ優勝が99・99%決定しているリヴァプールを本拠グディスンパークに迎撃し、残留という高いモチベーションを持つノリッジとのアウェーゲーム。シャレにならないだ。
名将アンチェロッティをもってしても、五分と五分に導くゲームプランは構築できないだろう。堅守速攻を基軸に据えても、GKジョナサン・ピックフォードが不安定なため、監督の思惑が根底から崩れるリスクをはらんでいる。「ステップがぎこちない」「少なくともパンチで逃げられたはず」などなど、ピックフォードは批判も少なくない。
しかし、アンチェロッティ着任後の敗北は22節のマンチェスター・シティ戦だけだ。25節のワトフォード戦はテオ・ウォルコットが後半の追加タイムに、続くクリスタルパレス戦はカルヴァート=ルーインが88分に貴重なゴールを決めるなど、粘り強さも出てきた。降格圏に足を踏み入れた当時の暗さは消え、エヴァートンからはポジティブな雰囲気が感じて取れる。
アンチェロッティは選手との〈距離〉が近く、なおかつ温厚な性格であるため、「指揮官として優しすぎる」といわれてきた。ただ、ピッチ上を複数のゲームプランで縛り、食事の時間まで強制してきたマルコ・シウヴァ前監督に比べると自由がある。「とてもフレンドリー」(ジェリー・ミナ)「いろいろと気にかけてくれるから話しやすい」(トム・デイビス)。選手の評判の上々だ。
パリ・サンジェルマンに去ったイドリサ・ゲイエの代役として期待されたジャン=フィリップ・グバマンは、負傷したスネの回復が遅れている。戦線復帰までまだ2か月ほどかかりそうだ。その一方で、アンドレ・コメスは足首の重傷から立ち直り、早ければ次節のアーセナル戦からベンチ入りする予定だ。そしてイタリア人のアンチェロッティは、同胞ケーンのホームシックを解消しつつある。
エヴァートンは上昇気流をつかんだ。前述の7連戦を乗り切り、CL出場権争いにさらなる混沌をもたらす気配がプンプンしてきた。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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