「経験者優遇」酸いも甘いも噛み分けた男は絶対に必要だ

ルカ・モドリッチ（レアル・マドリー）、エセキエル・ガライ（バレンシア）、ダビド・シルバ（マンチェスター・シティ）、アダム・ララーナ（リヴァプール）、ウィリアン、オリビエ・ジルー、ペドロ・ロドリゲス（いずれもチェルシー）、ネマニャ・マティッチ（マンチェスター・ユナイテッド）、ドリース・マルテンス、ホセ・マリア・カジェホン（ともにナポリ）、エディンソン・カバーニ（パリ・サンジェルマン）……。

ことし6月で所属クラブとの契約が切れる主なオーバー30だ。いずれ劣らぬ役者ぞろい。移籍市場が開かれる7月1日にはフリートランスファーになっている公算が大きいため、好条件のオファーが殺到するだろう。シルバはヴィッセル神戸なのかアメリカなのか。1月のアトレティコ・マドリー移籍が破談になったカバーニはどこへ行くのか。コロナウイルスの蔓延によって中国という選択肢は消えたが、実力者の獲得を目論むクラブは少なくないはずだ。

しかし、彼らのハンデは年齢である。複数年契約を求めても、クラブは単年を提示する。ベテランの経験がなにものにも代えがたい財産であるにもかかわらず、肉体のあちらこちらに刻まれた傷跡が、歴戦の代償がなぜかマイナス査定になるケースが増えてきた。プレー強度が著しく増している近代フットボールでは、熟練者よりも若者の優先順位が高いようだ。

それでも〈経験者優遇〉は成功のキーワードだ。リヴァプールを支えるジェイムズ・ミルナーは34歳、ジョーダン・ヘンダーソンも6月に三十路を迎える。バルセロナでも33歳のリオネル・メッシとルイス・スアレスが攻撃を彩り、中盤の定位置を奪回したイアン・ラキティッチも31歳だ。また、マドリーでも前線を支えるのは32歳のカリム・ベンゼマであり、レスターのジェイミー・ヴァーディはプレミアリーグの得点王で首位を行き、33歳という年齢が信じられないほど若々しい動きを見せている。

野心と意欲に満ちあふれた若者を軸とするチーム創りに異を唱えるつもりは毛頭ないものの、経験の浅い選手たちだけで勝てるほどプロフェッショナル・フットボールは甘くない。酸いも甘いも噛み分けた男は絶対に必要だ。

ユベントスは34歳のジョルジョ・キエッリーニ、32歳のブレーズ・マテュイディと契約を延長する予定だ。昨シーズンも33歳（当時）のクリスチャーノ・ロナウドを獲得し、今シーズンは40代のピエルルイジ・ブッフォンを再雇用するなど、カルチョ・イタリアーノのカンピオーネはベテランを活用する術に長けている。若返りを急ぎ過ぎているユナイテッドとチェルシーは、イタリアに出向いてでも勉強した方がよさそうだ。

そしていま、長友佑都がガラタサライとの契約を打ち切られた。33歳になってもまだまだ動ける。Jリーグのクラブはいち早く、タフな左サイドバックを獲得すべきだ。若ければいいってもんじゃないっ！

文：粕谷秀樹