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U-23選手権大会では、AFC主催の大会として初めて全試合でVARが採用されたが、VARによる余りに細かな、重箱の底をつつくような判定によって勝負が決した試合がいくつもあった。日本対カタール戦の前半終了間際の田中碧の退場の判定。そして、日本がリードして迎えた76分のPK判定。どちらも、VARがなければ退場にもPKにもなるはずがないようなプレーだった。
タイとイラクの試合では、CKからの競り合いでイラクのDFがハンドの反則を犯したとしてタイにPKが与えられてタイが先制したが、映像を見ても手に当たったかどうか分からないような微妙な接触だった。たしかにDFは手を高く上げてはいるが、たとえボールが手に当たっていたとしても、それによってボールの軌道が大きく変わったわけではなかったのだ。
ビデオ映像を使って何人もの審判員が目を皿のようにして違法行為を必死になって探し出し、微細な反則を“発見”してPKを与えたり、退場を出したりすることが正しいことなのだろうか?
僕は、もう10年以上前からビデオ判定導入論者だった。実際にVARが導入され、「VARがゲームの流れを分断する」として批判の声が高まった時にも僕は「それは運用に慣れていないから」だとして、ビデオ判定については擁護を続けてきた。
だが、今回のAFC U-23選手権でのように重箱の底をつつくような判定によるPKで勝敗の行方が決まるようなら、ビデオ判定導入は誤りだったと言わざるをえない。そんな判定によって試合の決着がついてしまうなんて、ゲームに対する興味を奪うだけだ。
サウジアラビアが攻めながらもタイが耐え続ける。残り時間が少なくなって、さらに延長戦に入って、さて西野監督はどんな大胆な勝負にでるのか……。そんな試合を見る楽しみを僕から奪ったのは審判団だった。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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