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サッカー フットサル コラム 2019年12月27日

ゼンガの〈神対応〉といまでも心の奥に深く突き刺さるひと言

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ゼンガ

メディアの世界で40年近く生きてきた結果、数多くの著名人と接し、インタビューするチャンスに恵まれた。

ブライアン・ロブソン、ドラガン・ストイコヴィッチ、オズバルド・アルディレス、真田広之、草刈正雄、アントニオ猪木、ハルク・ホーガン、初代タイガーマスク、ガッツ石松、南野陽子、第六十三代横綱・旭富士(現伊勢ケ濱親方)……。個性豊かな人たちばかりだ。マンチェスター・ユナイテッドのキャプテンを務めていた当時のロブソンは、言葉を丁寧に選びながら真剣に答えてくれた。間近に座る南野陽子は美しく、胸がときめいたことを鮮明に覚えている。ガッツさんはすっ飛んでいたなぁ。

「おーい、日本から来たメディアってあんたたちのことだろ?」

話しかけてきたのはインテル・ミラノの名GKワルター・ゼンガだった。いまから30年も前の話である。スポンサーを通じ、ユルゲン・クリンスマンにインタビューする手はずを整えていた。ところが、取材前日のミラノ・ダービーで敗れたため、ジョバンニ・トラパットーニ監督がすべての予定をキャンセルしたのである。勘弁してくれ。予算の都合で長くはイタリアに留まれない。一刻も早くだれかに、できるものなら日本でも人気のある選手にコンタクトを取り、インタビューの時間をさいてもらわなくては……。

そう、救いの主はゼンガだった。こちらの事情を説明すると、インタビュー即決。ミーティングルームの使用許可までとってくれた。まさに〈神対応〉である。

さて、30年が過ぎたいまも忘れられない発言がある。

「必要以上に戦術を批判するマッチレポートはどうかと思うよ。だって、あんたたちはロッカールームに入れないから、試合当日の戦略を知らないわけだろ。条件を五分と五分に整える戦略を無視して戦術だけの優劣を論じるのは、かなり無理があるんじゃないかな。大切な部分を省いて伝えるっていうのは、誤解を招くっていうか、ミスリードになると思わないかい」

カルチョ・イタリアーノは戦術的な議論が大好きだ。ゼンガ本人も討論番組の進行役を務めていたが、戦術が独り歩きする流れに大きな疑問符を抱いていたようだ。

フットボールに限らず、マッチレポートは難しい。なにが起きただけではなく、なぜ起きたかを解明し、さらにどのような戦略で挑んだかも深く掘り下げなければならない。守備的な選択は正しかったのか、攻撃的に振る舞うべきだったのか。

フットボールを生業として30年が過ぎたが、マッチレポートはいまでも緊張する。専門的すぎて伝わりづらい用語はできるだけ避けてきた。今後も使おうとは思わない。一般用語でよりわかりやすく、なおかつ監督、選手のプライドを傷つけないマッチレポートは、いつになったら書けるのだろうか。2020年以降の大きなテーマである。

※読者の皆さま、2019年もお世話になりました。どうぞ、よいお年をお迎えください。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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