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11節を終わって首位リヴァプールとは8ポイント差の4位。チェルシーの序盤戦は上々だ。
好調の要因はフランク・ランパード監督の積極策である。タミー・エイブラハム、メイソン・マウント、カラム・ハドソン=オドイ、フィカヨ・トモリといった若手を抜擢。恐れ知らずのアタッキング・フットボールでサポーターを喜ばせている。
また、新戦力のクリスティアン・プリシッチも徐々にフィットし、ジョルジーニョは絶妙のパス感覚で攻撃をコントロールしている。11月24日にはマンチェスター・シティとのビッグファイトが控えているが、現状のチェルシーなら派手な撃ち合いを見せてくれるのではないだろうか。
ただ、微妙な立場に追いやられた選手もいる。何人かのベテランが蚊帳の外になりつつある。
たとえばオリビエ・ジルー。わずか4試合の出場で、先発は2節のレスター戦だけだ。プレー時間も120分と少なく、残念ながらまだ1点も決めていない。センターフォワードの優先順位は、エイブラハム、ミチュ・バチュアイの後塵を配する三番手。ベンチ入りさえ難しくなってきた。
ペドロのポジションも約束されていない。ジルー同様にノーゴール。開幕節のマンチェスター・ユナイテッド戦、2節のレスター戦、7節のブライトン戦に先発しただけだ。ハドソン=オドイやプリシッチの台頭によって、ペドロもまた、優先順位は決して高くない。
ジルーのポストプレーは世界水準だ。ユナイテッドに是非欲しい。ペドロはオフ・ザ・ボールの動きで貢献する。ハードワークも惜しまない。両者ともに貴重なアイテムではある。
しかし、ランパード監督は過去の実績や知名度の有無にとらわれず、「ポジションは実力でつかみ取るもの」と公言している。この方針に疑問を抱いたダビド・ルイスがアーセナルに移籍したことは、周知の事実だ。ジルーとペドロもD・ルイスの気持ちはよく分かるに違いない。人間、齢を重ねると、変化を受け入れにくくなる。
移籍市場が再開する来年1月、いや、ひょっとするとすでに、ジルーとペドロはランパード監督に直訴しているかもしれない。「もっとチャンスをください。無理だとしたら、新しいクラブを探します」。プロならば当然だ。低い優先順位を甘受するのなら、引退した方がましだ。
例によって12月のプレミアリーグは過密日程だ。チャンピオンズリーグも含め、チェルシーは8試合も組まれている。したがって、ジルーとペドロにも先発の機会が訪れる公算は大きい。若手からポジションを奪い返す絶好のチャンスであり、自由競争を掲げるランパード監督にすれば、選手一人ひとりを再評価するまたとない一か月でもある。
ジルーとペドロはチェルシーの中軸に返り咲くのか。生存競争に敗れ、とぼとぼとロンドンを後にするのか。若手は試合数を重ねるに連れて自信を深めている。ふたりのベテランは、心してポジション争いに挑まなくてはならない。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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