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「つまらねえな」
今年5~6月に開催されたアンダー20ワールドカップにノルウェー代表として出場。ホンジュラス戦でハットトリックを達成した。所属クラブのレッドブル・ザルツブルクでも、チャンピオンズリーグのヘンク戦でふたたびハットトリック。アーリング・ハーランドの名が世界に知れ渡りつつある。しかし近ごろ不機嫌だ。
「クラブも友人もエージェントもオレを守ってくれるけど、どこかのだれかさんがフェイクニュースを流している。イライラの数値は10段階で9だな。ほっといとくれ」
タブロイド紙は紙面を埋めるために、小さな話題を脚色して大きく伝える。有識者のコメントと称し、記者の考察が延々と続く。ハーランドが怒った今回のフェイクは、彼の大活躍とマンチェスター・ユナイテッドの得点力不足を強引に結びつけただけで、双方が接触した形跡はどこを探しても見当たらなかった。『ムンド・デポルティーボ』に掲載された「ロベルト・フィルミーノとルイス・スアレスを交換か!?」も、フェイクというかナンセンスが過ぎる。充実の一途をたどるフィルミーノをリヴァプールが手放すなんて、担当者の願望だとしても片腹痛い。
経験を重ねていけば、「タブロイドがまたバカやってるぜ」とハーランドも笑い飛ばせる日がやって来る。これも成長過程のひとつだ。メディアとはうまく付き合わなければならない。なかには口を滑らせようと、極めて意地の悪い質問をする者もいる。マンチェスター・シティにやって来た3シーズン前、ジョゼップ・グアルディオラ監督もメディアの餌食になった。一方的すぎる質問にキレ、記者会見で声を荒げたことがった。するとメディアはグアルディオラを責め立てる。
「好人物と聞いていたが、実際は怒りっぽい男だった」
人たらしのユルゲン・クロップ監督(リヴァプール)でさえ、就任当初はメディア対応に四苦八苦し、敵を作りやすいジョゼ・モウリーニョは、マドリーでもユナイテッドでも良好な関係を築けなかった。
かつてトッテナムやポーツマスなどを率いたハリー・レドナップは、低俗な質問をウィットに富んだユーモアで返す〈特殊能力〉を身につけていた。クリスタルパレスのロイ・ホジソン監督は失礼な内容を問いただし、記者の常識を問うこともあった。サー・アレックス・ファーガソンは「わたしの次男に関する報道は破廉恥極まりない」と訴え、『BBC』(英国公共放送)の取材を7年間にわたって拒否していた。
現在は情報網がより整備され、SNSというコミュニケーション・ツールもある。メディア対応は日々難しくなってきた。しかし、常識の範疇を超えていたり、顔を見せずにただひたすら他人様の傷口に塩を塗りたくったりする、悪意に満ち満ちた内容は完全スルーが望ましい。アンフェアな手法に付き合っていると、無駄な時間を過ごすだけだ。情報の取捨選択は慎重、かつ大胆に──。
自戒を込めて。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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