あのモイーズをたった1ポイント上まわっているだけだ

今節はアウェーのニューカッスル戦だ。数シーズン前までならチョロかった。主力を欠いても、なんとかなる相手だった。今シーズンも出来は芳しくない。前節のレスター戦も守りがルーズで、約束事もなく、0－5の大敗を喫している。武藤嘉紀は昨シーズン同様、周囲と意思疎通を図れないままだ。

監督は、あのスティーブ・ブルース。この業界では珍しいお人好し。ただ、性格の良さが采配にも現れ、相手が嫌がることをしてこない。3ポイント取れるんじゃないか。少しワクワクしてきた。

いやいや、マンチェスター・ユナイテッドもたかが知れている。精彩を欠く試合が続き、サポーターのイライラは序盤戦でMAXに到達する勢いだ。ポール・ポグバは欠場するだろう。嘘か実か、足首の痛みが和らいでいないそうだ。ポグバ不在のユナイテッドからはなにも生まれない。ダニエル・ジェームズが、メイソン・グリーンウッドが単騎で突破する程度では、ニューカッスルでも守れる。

アントニー・マルシャルも欠場濃厚だ。10月のインターナショナル・ウィーク明けに復帰との嬉しい情報とともに、向こうずねの回復は11月上旬までずれ込むという悲観的な見方もある。マーカス・ラシュフォードは不調だ。いったい、どうすればゴールを決められるのだろうか。無理な角度からでも、ニューカッスルDFが寄せてきても、とりあえずシュートを撃った方がいい。ディフレクトしてゴ～～～ル！　なんだか空しくなってきた。

宿命のライバルだったリヴァプールに、同じ町の怨敵だったマンチェスター・シティに引き離されるだけの状況を、経験が足らなすぎるオーレ・グンナー・スールシャール監督が建て直せるとは思えない。ユナイテッド着任後、プレミアリーグ28試合で49ポイント。あのデイビッド・モイーズを、たった1ポイント上まわっているだけだ。モイーズを1ポイントだけぇ～！？　どんだけぇ～！？

身内を擁護するギャリー・ネビルは、「トップランクの選手があと5人必要だ」と語り、スールシャールの力不足をなぜかスルーしている。同じ40代のフランク・ランパード監督（チェルシー）は、小気味よいアタッキング・フットボールでサポーターのハートをつかんだ。スールシャールはうつろな視線でピッチを見つめるだけだというのに……。

「今シーズン、うまくいくとはいっていない」

スールシャールは泣き言を口にした。枠内にシュートを撃てず、0－0で引き分けたAZとのヨーロッパリーグ第2節も、「ピッチ状態が酷すぎる」と試合前から予防線を張っていた。かなりの重症だ。処置は早い方がいい。いくら引っ張っても、上昇気流に乗れるとは思えない。ニューカッスル戦終了後、なにか起きたりして──。ちょっとドキドキしてきた。

文：粕谷秀樹