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サッカー フットサル コラム 2019年9月11日

彼らは悔しさをかみ殺し、日々過ごしている。勝負の世界は厳しい

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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エジル

序列は力で代えられる。与えられたチャンスを活かし、監督やコーチにアピールすれば、ベンチウォーマーからレギュラーに格上げだ。しかし、三~四番手になると出場機会はほとんど得られず、いわゆる飼い殺しになる。そんな屈辱には耐えられない。

この夏、マンチェスター・ユナイテッドからローマに新天地を求めた(ローン移籍)クリス・スモーリングは、典型的な例といっていいだろう。エリック・バイリーがプレシーズンマッチで膝に全治4~5か月の重傷を負ったにもかかわらず、センターバックの序列では四番手。バリー・マグァイア、ヴィクトル・リンデレフはともかくとして、若手のアクセル・ツアンゼベよりも下に置かれたのだから、移籍を決意したのは当然だ。

トッテナムのセルジュ・オーリエも構想外になりつつある。レギュラーの右サイドバックだったキーラン・トリッピアーがアトレティコ・マドリーに移籍。オーリエにチャンスがやって来るはずだった。ところが、トッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ監督はカイル・ウォーカー=ピーターズを第一候補と考え、センターバックのフアン・フォイスやダビンソン・サンチェスを右サイドバックに起用する方針だ。オーリエは厳しすぎる状況に追い込まれた。移籍市場が再開する来年1月に、トッテナムを離れる公算が非常に大きい。

アーセナルではメスト・エジルか。スモーリングやオーリエほどの低評価ではないものの、ウナイ・エメリ監督が着任した昨シーズン以降、その立場は怪しくなってきた。今シーズンも絶対的レギュラーではなく、ダニ・セバージョスの控えに甘んじている。アメリカの有力紙『ワシントンポスト』は、「来年1月、DCユナイテッド移籍か!?」と報じていた。エジルほどの男が、アメリカで終着点を迎えるのは少し寂しい。もしアーセナルを離れるのなら、まだ一度も経験していないセリエAで再起を図るプランも悪くない。

セリエAといえば、ユベントスのマリオ・マンジュキッチとエムレ・ジャンが気がかりだ。チャンピオンズリーグの選手リストから漏れたため、すでに移籍を決意したという。マンジュキッチのもとには早々と、カタールから好条件のオファーが届いたとも噂されている。「ピッチ上で闘いつづけるだけだ」とジャンは平静を装っているが、内心穏やかではない。

エメリ監督(前出)に「新しいクラブを探してくれ」と構想外を宣告されたショコドラン・ムスタフィ(アーセナル)は買い手が見つからなかった。けが人続出が幸いし、ガレス・ベイルはレアル・マドリーに残留した。しかし、序列は決して高くない。彼ら余剰戦力は悔しさを押し殺し、日々過ごしている。各国を代表する選手であるにもかかわらず……。勝負の世界はかくも厳しい。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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