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いい噂どころか、気持ちが滅入る情報ばかりだ──。
オーナーのロマン・アブラモヴィッチは情熱を失った。マリアナ・グラノフスカヤCEOは現場の意見に耳を貸さない。18歳未満の選手を獲得する際にルール違反を犯し、今夏と来年1月の補強を禁止された。そしてエデン・アザールはレアル・マドリーに移籍……。チェルシー・サポーターは不満と不安を募らせてる。
しかし、悪いことばかりではない。フランク・ランパード体制の発足は、新たな時代の幕開けだ。マウリツィオ・サッリ前監督(ユベントスに転出)はすぐれた指揮官だが若くはなく、どことなく地味な風体も大衆受けがよろしくなかった。ランパードは41歳。優良企業のやり手幹部を思わせる外見は、パブリックイメージも申し分ない。
プレシーズンマッチをみるかぎり、ローンバック組も活用できそうだ。タミー・エイブラハム、メイソン・マウント、ティエムエ・バカヨコなど、昨シーズンは他クラブで研鑽を積んでいた選手たちが猛烈なアピールを繰り返している。
とくにマウントは、昨シーズンもランパード監督のもとダービーで闘った。チャンピオンシップとはいえ、9ゴール・4アシストは評価していいだろう。エンゴロ・カンテ、ジョルジーニョ、ロス・バークリー、マテオ・コバチッチ、さらにルベン・ロフタス=チークなど、チェルシーの中盤はポジション争いが激しいが、ここにマウントが割って入るのではないだろうか。ボックス・トゥ・ボックスのスタイルは、現役時代のランパード監督を彷彿とさせる。
昨シーズンは16ゴール・15アシストを記録。チェルシーが挙げた全得点の49%に絡んだアザールが抜けた穴を、クリスティアン・プリシッチが埋められるはずがない。現時点で両選手を比較するのはアンフェアだ。しかし、チェルシーでやり切った者と、野心をたぎらせる若者であれば、期待できるのは後者だ。補強が禁止されているものの、本稿執筆時点で大半の主力は残留する。連携が熟成する可能性が出てきた。
マンチェスター・シティとリヴァプールは違う次元に到達した。チェルシーの現有勢力ではかなわない。しかし、トッテナムは退団する公算大のクリスティアン・エリクセンの穴を埋められるだろうか。アーセナルとマンチェスター・ユナイテッドは強化が遅れている。したがってチェルシーも、そうそう悲観するまでもない。
あとはアブラモヴィッチが情熱を取り戻し、ランパード監督に3~4年を託すサポートプランを、グラノフスカヤがどのようにして実行に移すかだ。コンテ元監督を追い出した勢力はまだ残っている。彼らの意見を鵜呑みにすると、またしてもお家騒動が勃発する。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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