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サッカー フットサル コラム 2019年7月12日

パリSGのスタンスは「それなりの金額でお持ち帰りください」

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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ネイマール

プロなのだから話題は多いほうがいい。メディアはなにかと厄介だが(自分でいうか!)、この業界の注目度は人気のバロメーターでもある。それにしても……。

ネイマールにはネガティブな話題がつきまとう。本人が発信したり、エージェントの無謀な仕掛けだったり、所属クラブの情報操作だったケースもあるとはいえ、一般大衆には受け入れられないような内容ばかりだ。

例えば、エディンソン・カバーニとの確執である。パリ・サンジェルマンにおける主導権争いがエスカレートし……いや、ネイマールがボスになりたかっただけなのだろう。PKのキッカーをめぐり、あるいはミーティング中に、カバーニを侮辱したとの情報が漏れ伝わってきた。こうした状況に陥った場合、メディアの見解はふたつに分かれるものだが、ネイマールを支持する声は聞こえてこなかった。

また、昨シーズンのフランスカップ決勝では、汚いヤジを飛ばした男を殴打した。バルセロナに所属していた当時には、トレーニング中に激しくチャージしたネウソン・セメドに過剰反応。あわや大乱闘の混乱も招いている。自分をコントロールできない性格だ。

数々の愚行に業を煮やしたのか、パリSGのディレクターに再就任したレオナルドも大きな決断に至った。

「ネイマールがその気なら、いつだって退団できる」

不要論とも取れる。

「適正なオファー以外は受け付けない」

予防線も張っている。

ただ、あらゆる手段を用いてでも慰留する、という語り口ではない。スタンスは「それなりの金額でどうぞお持ち帰りください」だ。ナセル・アル・ケライフィ会長も、「セレブ気どりの振る舞いはもうたくさんだ」と、サマーキャンプの初日を無断欠席したトラブルメーカーに不快感を露わにしている。

「ネイマール財団の都合で、15日に合流すると伝達済みだ」とエージェントは反論するが、無断欠席は非常識が過ぎる。言い訳にもならない。しかし、不思議なことに双方の見解は一致している。パリSGが愛想を尽かしたように、ネイマールもバルサ復帰を企んでいた。

二年前、カネの誘惑に負けてパリSGに移籍したことをいまでも後悔し、年俸が大幅にダウンしてもバルサに戻りたいと考えている。ただ、本稿執筆時点で交渉が行き詰まっているアントワーヌ・グリーズマンも、いずれはアトレティコ・マドリーから入団するだろう。レオネル・メッシ、ルイス・スアレスも含め、前線は質量ともに十分だ。

グリーズマンに加えネイマールまで獲得すると、移籍金は3億ユーロ(約366億円)前後に達し、経済的なリスクが大きくなる。数人の選手を放出したとしても、獲得の支出と収入の差額が1億ユーロ(約122億円)を超え、ファイナンシャル・フェアプレーに抵触する恐れがある。バルサ復帰は難しい。

パリSG内の評価はダダ下がりだ。イングランド方面からはネイマールのネの字も聞こえてこない。水面下で接触かと噂されるレアル・マドリーも、パリSGから引き抜くならキリアン・エムバッペだという。さらにセレソンでも、グレミオのエヴェルトンが台頭してきた。自分で蒔いた種とはいえ、ネイマールが厳しい立場に追い込まれている。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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