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なでしこジャパンという呼称は定着している。
耳馴染みの良さは格別だ。後に数多くの○○ジャパンが生まれたものの、なでしこをしのぐ傑作はない。いや、むしろ駄作が多い。いったい、どのスポーツを指しているのか、チンプンカンプンなネーミングも多々ある。無理してニックネームをつけなくてもいいのではないだろうか。あえて私見をいわせていただければ、なでしこに次ぐ耳馴染みの良さは女子新体操のフェアリージャパンである。
さて、6月7日に女子ワールドカップがフランスで開幕するが、本稿執筆時点で日本ではイマイチ盛り上がっていない。メディアは山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見、高齢ドライバーの交通事故、丸山穂高議員の糾弾決議などに時間とスペースを割き、スポーツでもプロ野球のセパ交流戦、メジャーリーグの大谷翔平、テニスのフレンチ・オープンばかりが報道されている。なでしこのニュースは非常に少ない。
やはり、近年の不振が影響しているのだろうか。2011年ワールドカップで優勝し、翌年のロンドン・オリンピックでは銀メダル。15年ワールドカップでも準優勝。なでしこは時代の寵児となり、小中学生にとって憧れのヒロインになった。しかし澤穂希さん、宮間あやさんといった主力が第一線から退いていくと、チーム力の維持が難しくなった。16年リオデジャネイロ・オリンピックは予選で敗退。ひとつのサイクルが終わった。
時は流れ、人は移り気である──。一年前の流行ですら忘れはじめている。4~8年前ならなおさらだ。4シーズン前のチャンピオンズリーグでプレミアリーグ勢はラウンド16で全滅したが、この屈辱は今シーズンの《ヨーロッパファイナル独占》で人々の記憶から消えた。
したがって、なでしこも今回のワールドカップで強烈なインパクトを残し、復活の足掛かりにすればいい。リヨンに所属する熊谷紗希は、クレバーかつ大胆なプレーで女子チャンピオンズリーグ3連覇に貢献。ワールドクラスのDFとして高く評価されている。また、鮫島彩と阪口夢穂の経験値は貴重なアイテムで、岩渕真奈と長谷川唯の高度なテクニック、明快なアイデアはだれもが認めるところだ。今回のメンバーもタレントは揃っている。
そういえば、8年前も大会前はそれほど期待されていなかった。しかし、あれよあれよという間に勝ち進み、準決勝でドイツを、決勝でアメリカを破って世界のテッペンに立った。下馬評を踏まえると、過度なプレッシャーはかかっていなかったのだろう。そしていま、追われる立場から追う立場に変わり、プレッシャーは限りなく軽減された。
歴史は繰り返す──。なでしこは、世界に咲くか!?
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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