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176回目のマンチェスター・ダービーである──。
過去の通算成績は51勝52分72敗、トップリーグに限っても45勝51分62敗。シティはリードを許している。1993-94シーズンから3年連続でダブルを喫し、95-96シーズンにはFAカップも含む3連敗の屈辱を味わった。96-97シーズンからの4年間は下部リーグをさまよっていたため、ユナイテッドと相まみえることすら叶わなかった。
しかし、歴史年表をもとに両チームを比較するのは、いささかアンフェアかもしてない。なぜならシティは2008年に『アブダビ・ユナイテッドグループ』が買収した後、急速に力をつけたからだ。08年以降の10年間は8勝3分9敗(プレミアリーグ)とほぼ五分に持ち込み、11-12シーズンと13-14シーズンにはダブルを食らわせている。また、サー・アレックス・ファーガソン退陣後、5シーズンに渡ってリーグ優勝から遠ざかったユナイテッドに対し、シティは二度も制している。
そして今シーズンも、両チームの差は明らかだ。9勝2分無敗。シティは攻守ともに隙がない。6勝2分3敗。ユナイテッドはだらしない。基本コンセプト、ゲームプラン、上層部と現場の意思疎通、人員の整理など、シティはすべてが理に適っているが、ユナイテッドはあらゆる面でチグハグだ。大衆紙が必要以上に煽るジョゼ・モウリーニョ監督退陣キャンペーンも、選手たちの心に少なからぬ影響を及ぼしている。当然、統一感はどこにもない。
ビッグファイトはただでさえモチベーションが刺激される。昨シーズン、エティハドで行われたダービーでも、ユナイテッドは0-2から逆転した。とくに後半のパフォーマンスは、モウリーニョ体制下では最高の出来といって差し支えなかった。ただ、統一感のないチームは継続性も期待できない。大逆転の後は精彩を欠き、今シーズンも停滞していることは衆目の一致するところだ。だれもスプリントしなかったり、センターバックが悲しくなるほど低質だったり……。
ダビド・シルバを無効化するため、モウリーニョはアンデル・エレーラにマンマークを命じるかもしれない。好調アントニー・マルシャルであれば、カイル・ウォーターとの一対一で優位に立てるかもしれない。しかし、11試合で18失点も喫しているDF陣が、1試合平均3ゴールのシティ攻撃陣を抑えきれるだろうか。
11月7日、ユナイテッドはチャンピオンズリーグでユベントスを2-1で下したものの、クロスバーやポストに何度となく救われ、GKダビド・デヘアの再三にわたる《神セーブ》があったことを肝に銘じる必要がある。試合内容では圧倒され、シティはユベントスよりも鋭く、狡猾だ。稀代の策士モウリーニョをもってしても、週末のダービーは大苦戦を覚悟しなければならない。仮に敗れると、シティとは12ポイント差。冬の到来を待たずに、寒々しい日々がやって来る。
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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