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ニューカッスルのラファエル・ベニテス監督は、研究熱心なことで知られている──。
前節のチェルシー戦も自陣で5-4-1を形成。ラインの上げ下げ、ボールホルダーへの寄せなど、守備のプランに怠りはなかった。残念ながら1-2で敗れたものの、チェルシーを細部まで研究したベニテスの戦略・戦術は、99%的中したといっていいだろう。ニューカッスルの戦力を踏まえると、ビッグ6との対戦ではディフェンシブにならざるをえない。
週末のマンチェスター・シティ戦(アウェー)も同様だ。いや、チェルシー戦よりも耐える時間が長くなる。一瞬の油断が大きな綻びにつながり、気がつくと大量失点を喫している……。よくあるパターンだ。少なくとも1ポイントを持ち帰るためには、戦略・戦術を徹底しなければならない。
したがってこの一戦のポイントは、ニューカッスルが採用する公算大の5-4-1を、シティがどのようにして攻略するか、である。
ボールを保持する時間が極点に短くなるニューカッスルは、前線のサロモン・ロンドンにボールが渡っても、リスクを冒す確率は低い。運動量豊富なマット・リッチーがフォローするだろうが、基本的には自陣に籠城する。慎重居士のベニテスが、シティにスペースを与えるような愚策を授けるとは思えない。
それでもシティは、引いた相手を崩してきた経緯がある。ダビド・シルバが一瞬のスキをついてライン間に進入し、決定的なチャンスを創る。両サイドバックがウイング化、あるいは中盤インサイドに姿を変え、相手守備陣のバランスを崩す。気がつくと5バックが横に大きく開かれている。中盤も本来カバーすべきポジションから遠くかけ離れ、シティに蹂躙されるシーンを何度も目撃してきた。対戦相手のプランが完璧だったとしても、まるで机上の空論だ。シティの実行力は、すぐれた監督の理論をことごとく打ち破ってきた。
おそらくベニテスも、痛い目に遭う。シティは攻撃力で、完成度でチェルシーを上まわるのだから、ディフェンシブなプランにもおのずと限界がある。30%対70%、もしくは20%対80%も予想されるポゼッションの違いが、ニューカッスルを心身ともに追い詰めていくだろう。2005年9月24日に1-0の勝利(ゴールスコアラーはあのマイケル・オーウェンだ)を収めた後、プレミアリーグのシティ戦は3分18敗。データまでもが一方的だ。
この勝負、ニューカッスルは苦しい、苦しすぎる。
※シティ対ニューカッスル戦は、9月1日(土)深夜1時23分からJ SPORTS 4でライブ中継いたします。
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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