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サッカー フットサル コラム 2018年7月16日

フランスの20年ぶりのワールドカップ王者を引き寄せたVAR判定とポグバの強烈弾

元川悦子コラム by 元川 悦子
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フランスの20年ぶり2度目の優勝か、それとも人口400万の小国・クロアチアの初戴冠か。その行方が世界中で注目された15日の2018ロシアワールドカップ決勝。モスクワのルジニキスタジアムに7万8000人超の大観衆を集めて行われた大一番は両軍合計6ゴールが入る乱戦となった。

戦前から優勢と見られていたフランスは前半18分、キックの名手、アントワーヌ・グリーズマン(アトレチコ)の直接FKがクロアチアのエースFWマリオ・マンジュキッチ(ユベントス)に当たって入るというワールドカップ史上初のオウンゴールで先制。10分後にイバン・ペリシッチ(インテル)に同点弾を決められたが、前半34分に勝負の明暗を分ける場面が訪れる。グリーズマンが右CKを蹴った瞬間、ペナルティエリア内でブレーズ・マテュイディ(ユベントス)とペリシッチが交錯。ボールは2人の手に当たったように見えたが、レフリーはVAR判定を選択。結局、PKが認められ、グリーズマンが決める形でフランスに大きな2点目が転がり込む。むしろ前半はクロアチアがゲームを支配していただけに、この2点目は彼らに大きなダメージを与えた。

2-1で迎えた後半。フランスの勝利を決定づけたのが、開始14分のポール・ポグバ(マンチェスターU)の3点目だった。ポグバ自身が攻めの起点となり、右へ展開。史上3人目の10代ファイナル出場者となったキリアン・ムバッペ(PSG)が右サイドを凄まじいスピードで切り裂き、中央へ折り返し、グリーズマンがキープ。後ろに落としたところに飛び込んだのがポグバだった。彼の右足シュートはいったん相手DFに弾かれたものの、こぼれ球を左足インサイドで一閃。値千金の3点目を叩き出す。ここでついた2点差には、粘り強さとタフさでファイナルまで勝ち上がってきたクロアチアにとってもダメージが大きすぎた。

ポグバにとっては今大会初ゴール。本人も感慨ひとしおだったに違いない。ディディエ・デシャン監督率いる今回のフランスは強固な守備ブロックを形成するディフェンシブなチームで、ポグバ自身も持ち前の爆発力や破壊力よりもハードな守りに奔走する場面が多かった。マンチェスター・ユナイテッドでの彼は、16-17シーズンがプレミアリーグ5得点、17-18シーズンは同6得点という数字を見ても分かる通り、もう少しアグレッシブに前に出ていく選手。ジョゼ・モウリーニョ監督も類まれな攻撃センスを生かすため、ボランチより高い位置で使うこともしばしばあった。デシャン監督もその非凡な能力を承知のうえで、あえて最終ライン前の壁として立ちはだかる仕事を課してきた。

それを確実に遂行できる献身性と忠実さがポグバの魅力だ。こうした守りのタスクをしっかりとやり切ったうえで、今回の大きなゴールを生み出したのだから、彼の評価はまた一段階上がったはずだ。加えて言えば、この日はエンゴロ・カンテ(チェルシー)がクロアチア攻撃陣に翻弄されるケースが多かった。その分、ポグバにかかる負担は大きかったはずだ。

デシャン監督もポグバの3点目が生まれる前にいち早くスティーブン・エンゾンジ(セビージャ)を投入して、足りなかった高さを加えて中盤の安定化を図ったほどだ。ポグバとエンゾンジが組んだボランチはそれまで以上にバランスがよくなり、守備陣の負担軽減効果もあった。こういった仕事を含め、この日の背番号6は非常に大きな働きを見せたと言っていい。最終的にムバッペが追加点を挙げ、フランスは4-2で勝利を飾り、グリーズマンがマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたが、陰のMVPはポグバだったと言っても過言ではない。この男の存在なくして、フランスの20年ぶりのワールドカップ制覇はあり得なかった。

デシャン監督は記者会見で「選手として優勝した時より、今回の方がずっと喜びが大きい。選手たちを誇りに思っている」と満面の笑みを浮かべた。

そこに選手たちが乱入。「オ・ネル・シャンピオン(我々は王者だ)」という20年前にもよく歌われたチャントの大合唱を繰り返し、ポグバは真っ先にデシャン監督を激励した。その行動を見ていても、いかにポグバと指揮官が強固な信頼関係で結ばれているかが色濃く伺えた。今大会のフランスはグリーズマンがキャプテンマークを巻いたが、近い将来、ポグバがリーダー格になる可能性も少なからずありそうだ。

ロシアで大きな飛躍を遂げたポグバが来季、マンチェスターUでどのようなパフォーマンスを見せるのかは非常に興味深いところ。3シーズン目のプレミアでは「ハードワークができ、ゴールも量産できる怪物MF」としてより一層、存在感を高めてほしいものだ。

代替画像

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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