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いよいよ終盤戦に突入しつつある2018年ロシアワールドカップ。日本が去った後の準々決勝はタフな戦いが続いた。 まず6日のウルグアイ対フランス戦(ニジニ・ノブゴルド)はエディンソン・カバーニ(モナコ)の負傷欠場が明暗を大きく左右した。ウルグアイはルイス・スアレス(バルセロナ)が最前線で孤立しがちで迫力ある攻めが不発。そんな相手のスキを突き、フランスはラファエル・ヴァラン(レアル・マドリード)とアントワーヌ・グリーズマン(アトレチコ・マドリード)が効率よくゴールし、2-0で勝利。順当にベスト4入りした。
同日のブラジル対ベルギー戦(カザン)は日本戦(2日=ロストフ)で劇的な逆転勝利を収めたベルギーがそのままの勢いで試合に入り、前半のうちに2点をリード。ブラジルを苛立させた。焦燥感を募らせる王国はネイマール中心に攻め込み、後半31分にレナト・アウグスト(北京国安)のゴールで1点差に追いつくも、ベルギーの人数をかけた守備の前にもう1点を奪うことができず、まさかの8強敗退。ドイツ、スペインらとともに優勝候補筆頭と言われた国がまた1つ、ロシアの地を去った。
翌7日のスウェーデン対イングランド戦(サマラ)も手の内をよく知る同士の対戦で硬いゲームとなったが、イングランドは岡崎慎司の同僚DFハリー・マグワイヤ(レスター)が左CKから打点の高いヘッドを決め、1点を先制。後半には相手の猛攻を受けたが、守護神のジョーダン・ピックフォード(エバートン)がスーパーセーブを連発してスウェーデンを阻止。そしてデレ・アリ(トッテナム)がダメ押しとある2点目を奪うという試合巧者ぶりを見せつけ、90年イタリア大会以来の4強入りを決めた。
最後の1試合、ロシア対クロアチア戦(ソチ)は、前半から両者が1点ずつを取り合う激しい戦いになり、90分で決着がつかずに延長に突入した。その前半にクロアチアのドマゴイ・ヴィダ(ベシクタシュ)が2点目を奪った時には勝負が決まったかと思われた。しかし自国の熱狂的応援を背に戦うロシアは延長後半にリスタートからマリオ・フェルナンデス(CSKAモスクワ)が値千金のヘッドで2-2に追いつき、PK戦へもつれ込む驚異の粘りを見せる。そのマリオ・フェルナンデスが3番手でまさかのPK失敗を犯し、ロシアのベスト4入りの夢は断たれたが、クロアチアも一時は負けを覚悟するほどの追い上げを受けた。守護神のエミル・スパヒッチ(ローマ)が後半の終盤に右足を痛めるなど負傷者続出で、彼は満身創痍の状態に陥っている。
こうして準決勝のカードはフランス対ベルギー、イングランド対クロアチアに決まった。前者は拮抗した展開が予想されるが、後者はイングランドがかなり有利と見られる。というのも、前述の通り、クロアチアは120分間の死闘を演じたうえに、ケガ人が多く、ルカ・モドリッチ(レアル・マドリード)ら30代のベテランも消耗度が激しいからだ。
彼らに比べると、イングランドの年齢層は非常に若い。スウェーデン戦のスタメンを見ても、30歳を超えているのはアシュリー・ヤング(マンチェスターU)ただ1人で、あとは20代前半のフレッシュな面々が多い。準々決勝ではエースFWハリー・ケイン(トッテナム)の見せ場が少なかったものの、小柄なアタッカーのラヒム・スターリング(マンチェスターC)とジェシー・リンガード(マンチェスターU)が疲れを知らない無尽蔵の走りで相手ゴール前をかく乱し続けていた。
守備陣の方もカイル・ウォーカー、ジョン・ストーンズ(ともにマンチェスターC)、マグワイヤの3バックが鉄壁の壁を作り、その背後に成長著しいピックフォードが控えている。ピックフォードは185㎝とイングランドのGKにしては小柄な部類に入るが、判断の速さと反応の鋭さ、周囲への的確なコーチングなどあらゆる面で秀でている。
スウェーデン戦でもマン・オブ・ザ・マッチに選ばれ「エバートンでいいシーズンを送れたことが自信につながっている」とコメントしたが、彼の存在感が高まっていることで、守備陣全体が冷静に落ち着いて相手と対峙できるようになっている。それは若く伸び盛りのチームにとって非常に大きなポイントだ。
クロアチアにはマリオ・マンジュキッチ(ユベントス)のような百戦錬磨のアタッカー陣がいて、モドリッチとイヴァン・ラキティッチ(バルセロナ)という高度な技術と老獪さを誇るMF陣がタクトを振る。この難敵を下すことができれば、本当に1966年イングランド大会以来、52年ぶりのワールドカップ奪還が見えてくる。若きイングランドが頂点に立つ可能性はゼロではないだけに、11日のモスクワ・ルジニキでの大一番が楽しみだ。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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