奇跡の初優勝から3年……レスターのサイクルが終わる

週給や移籍金が合意に至らず、二度三度と交渉決裂が伝えられるケースは多々ある。マンチェスター・シティとリヤド・マフレズ（レスター）も同様だ。ことし1月も「公式発表間近」といわれながら、いつのまにかトーンダウンしていった。しかし今度こそ、ついに、ようやく、マフレズのシティ移籍が実現しそうだ。早ければ6日の夕方（現地時間）に記者会見、との情報まで飛び交いはじめている。

「高いレベルで切磋琢磨したい」と常日ごろから語っていたマフレズは、シティ移籍に胸を躍らせているはずだ。レスターと異なり、定位置確保は難しい。当面は二～三番手であり、ひょっとするとベンチにすら入れないかもしれない。ただ、ジョゼップ・グアルディオラ監督のもとで近代フットボールを学び、秘めたる力が覚醒する可能性は十分すぎるほどある。2017/18シーズンのマフレズは、いやがうえでも注目選手のひとりだ。

さて、一昨シーズンはエンゴロ・カンテが、昨シーズンはダニー・ドリンクウォーターがともにチェルシーに新天地を求め、クリスティアン・フックスは18/19シーズンを最後に退団する。ロベルト・フートもチームを去り、ウェズ・モーガンの去就も微妙だ。より多くの出場機会を求め、岡崎慎司が重大な決断を下すことも考えられる。

また、クロード・ピュエル監督が志向するポゼッションとは相性がよくないジェイミー・ヴァーディーも残留が決まっているわけではなく、ティボー・クルトワ（チェルシー）、ヤン・オブラク（アトレティコ・マドリー）、アリソン（ASローマ）を含めた〈玉突き移籍〉の影響が、名GKカスパー・シュマイケルに大きな影響を及ぼす確率も決して低くない。

奇跡の初優勝から3年、ひとつのサイクルが終わろうとしている──。

カンテとドリンクウォーター、フートはすでに去った。マフレズも退団濃厚だ。フックスは18/19シーズンで幕を引き、モーガン、ヴァーディー、岡崎、シュマイケルも、事と次第によっては他チームのユニフォームを着るだろう。クラウディオ・ラニエリ監督（当時）とともにプレミアリーグを制した勇者の大半が、レスターを去ったとしても不思議ではない。15－16シーズンの優勝メンバーで残留する公算が大きいのは、マーク・オルブライトンとダニー・シンプソンだけだ。

チームは生き物だ。監督が代われば主力の顔ぶれも異なる。いずれワンクラブマンは死語になり、パオロ・マルディーニ、フランチェスコ・トッティのような生き方に疑問を呈する時代がやって来るのだろう。ミドルレベルのレスターであればなおさらだ。ステップアップを目論む選手がいれば、より多くの出場機会を求める者もいる。プロとして、当然の生き方だ。

レスターのおとぎ話に続編はなかった。3年前の辛苦を知る語り部たちは、四方八方に散らばってしまうのかもしれない。時は、あっという間に過ぎていった。