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2018年ロシアワールドカップでの日本代表の奮闘も終止符が打たれ、大会はいよいよ佳境に突入しつつある。ベスト8に勝ち上がったのは、ウルグアイ、フランス、ブラジル、ベルギー、ロシア、クロアチア、スウェーデン、イングランドの8カ国。前者4チームがひしめく山は大激戦だが、後者4チームの山は意外な顔ぶれという印象はある。その中で本命なのは、やはりイングランドだろう。
今大会のイングランドは「2強2弱」の構図が明確だったグループGに入り、まず初戦でチュニジアを2-1で撃破。第2戦でパナマを6-1で圧倒し、早々と決勝トーナメント進出を決めた。3つ目のベルギーとの首位攻防戦ではハリー・ケイン(トッテナム)やラヒム・スターリング(マンチェスターC)やジェシー・リンガード(マンチェスターU)ら主力を休ませ、1位通過を狙ったが、惜しくも0-1で敗れ、2位でラウンド16に勝ち上がった。
8強を賭けた相手はコロンビア。彼らも初戦で日本にまさかの不覚を取ったが、第2戦でポーランドを3-0で倒して息を吹き返し、グループH最終戦のセネガル戦も1-0で勝利。見事に1位の座をつかんできた。エースとして君臨するはずだったハメス・ロドリゲス(バイエルン)が負傷離脱したのは痛かったが、世界的知将のホセ・ペケルマン監督がラダメル・ファルカオ(モナコ)を中心に立て直しを図り、攻守両面で強固な組織力を取り戻してきた。それだけにイングランドにとっては難敵に他ならなかった。
ボール支配率がコロンビアの49%に対し、イングランドが51%、シュート数も14対16(うち枠内が4対9)とほぼ数字的にも互角だった通り、この試合は非常に拮抗したものになった。それでもイングランドは後半12にエース・ケインがPKで1点を先制。虎の子の1点を守り切って90分を終える寸前まで行った。しかし、終盤になってコロンビアの底力が爆発。ファン・クアドラード(ユベントス)が中に入れたボールをジェリー・ミナ(バルセロナ)が押し込んで土壇場に1-1に持ち込み、延長へともつれこんだ。
その延長でも決着がつかず、とうとう試合はPK戦へと突入。イングランドは3番手のジョーダン・ヘンダーソン(リバプール)が外したものの、他の選手たちは全員がゴール。逆にコロンビアはラスト2人が外し、イングランドがギリギリのところで8強入りを決めることになった。
こういう勝ち方をしたチームは勢いに乗る。ワールドカップのような短期決戦は勢いが非常に大事なだけに、彼らにはいい流れが来ていると言っていい。しかもエースのケインがここまで通算6ゴールを挙げ、得点ランキング単独トップに立っているのも好材料だ。
個人タイトルを争うと見られたクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード)やリオネル・メッシ(バルセロナ)がいち早く大会を去り、最大のライバルと見られるロメル・ルカク(マンチェスターU)も日本戦では得点できずに通算4点のままだ。となれば、ケインが得点王を手にする可能性は大いにある。そのためにも、まずは7日の準々決勝・スウェーデン戦で勝ち進み、あと2試合を追加することが非常に重要だ。
スウェーデンにはヴィクトル・リンデレフ(マンチェスターU)らイングランドでプレーする選手も少なくないだけに、手の内は分かりあっているチーム。欧州予選プレーオフでイタリアを徹底した堅守で封じ込めたのが記憶に新しいが、その堅守はロシアワールドカップに来ても健在。ここまで3試合で失点を許したのはドイツ戦の2点のみ。それ以外の3試合は全て完封勝利を挙げているから、その強固な守備組織にイングランドも苦しみそうだ。
そこでやはり期待されるのが、ケインの決定力だ。もちろんスターリングやリンガード、デレ・アリ(トッテナム)ら若くフレッシュなアタッカー陣の推進力も魅力だが、今回のイングランドは大黒柱の存在があってこそ。ケインが点を取るか否かでチーム全体の流れが変わってくると言っても過言ではない。
ベンチには岡崎慎司の同僚であるジェイミー・ヴァーディー(レスター)やダニー・ヴェルベック(アーセナル)も控えてはいるが、ガレス・サウスゲート監督のケインに対する信頼は絶大だ。彼が封じ込められるようなことがあると、90年イタリア大会以来、28年ぶりの4強入りの夢が幻と消えるかもしれない。それは大会の盛り上がりを考えてもマイナスだ。ケインを軸としたイングランド攻撃陣がスウェーデンの堅牢な守備を崩せるか否か。そこに注目して、7日の大一番を見たい。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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