白旗を掲げるのは早すぎる。スタリッジの復活に期待しよう

本来であれば、この男の才能をもってすれば、いまごろはロシアの大地で暴れまわっていたはずだ。

ダニエル・スタリッジ──。

2013－14シーズンは凄かった。ルイス・スアレス（現バルセロナ）とともにリヴァプールの攻撃をけん引し、29試合・26得点。イングランド代表のエース候補ともてはやされ、当時のマンチェスター・シティを率いていたマヌエル・ペレグリーニ（現ウェストハム監督）も高く評価していた。

「将来は約束されたようなものだ。だれもがうらやむポテンシャルを持っているね。それにしても惜しいことをしたよ。彼はシティの下部組織出身だっていうじゃないか。なぜ手放したんだ!?　強化担当はどうかしている」

しかし、翌シーズンから足首、膝、ハムストリング、腰、背中など、各所の負傷に悩まされる。バルセロナに移籍したスアレスの穴を埋めるどころか、ピッチに立つコンディションですら維持できなくなっていた。

15年の秋、ブレンダン・ロジャーズ（現セルティック監督）が解雇され、ユルゲン・クロップ体制が発足しても、スタリッジのコンディションは一向に上向かなかった。新監督が「得点感覚が衰えているとは思えない。とにかく、フィジカルを万全の状態に仕上げること」と期待を寄せても、負傷を繰り返すばかりだ。いつしかクロップのリストから外れ、18年の冬にはウェストブロムにローン移籍。ただ、新天地でもコンディションは整わず、2試合・ノーゴールという散々な結果に終わっている。

リヴァプールではもはや構想外だ。19年6月30日で切れる契約を更新するという情報は、まったく聞こえてこない。傷だらけのスタリッジではモハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノ、サディオ・マネを脅かすに至らず、ＦＷの序列としてもダニー・イングス、ドミニク・ソランケを下まわる。スタリッジの居場所はないということだ。

しかし、満身創痍の肉体が回復すれば、まだまだ通用する。体力面の不安から、いきなり90分フル稼働は無理だとしても、スタリッジ独特の感性をスーパーサブとして必要とするチームも現れるはずだ。レンジャーズの新監督に就任したスティーブン・ジェラードのもとで、再生のプランを描いてもいいだろう。トルコのベジクタシュ、ガラタサライが興味津々との情報も流れはじめた。

リヴァプールにおけるサイクルは終わったものの、まだ28歳。白旗を掲げるのは早すぎる。二年後のヨーロッパ選手権で、四年後のワールドカップで、完全復活を遂げたスタリッジの勇姿を見たいものだ。