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2005年5月25日、リヴァプールはPK戦の末にACミランを破り、チャンピンズリーグ(以下CL)を制した。前半で0-3のビハインドに陥りながら、不屈の闘争心でヨーロッパの頂点に立った彼らの奮闘は、〈イスタンブールの奇跡〉としてフットボールの歴史に長く、いや、永遠に語り継がれていくに違いない。そして……。
あれから13年、リヴァプールにふたたびチャンスが訪れた。CL決勝の相手はレアル・マドリーである。
ピッチ内外の収入では〈白い巨人〉が上だ。近年の実績でも勝負にならない。15-16シーズンからCL連覇中のマドリーに対し、リヴァプールはミランにリベンジを許した06-07シーズン以来、11年ぶりの決勝進出だ。プレミアリーグでも優勝争いの常連ではなく、イングランド国内で勝ち取ったタイトルは、05-06シーズンのFAカップと11-12シーズンのリーグカップだけ。モハメド・サラー、ロベルト・フルミーノ、サディオ・マネ、フィルジル・ファンダイクといった主力も、修羅場らしい修羅場は経験していない。クリスチャーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマ、セルヒオ・ラモス、マルセロなど、大舞台の経験値で上まわるマドリーは、キエフの決戦でも平常心で闘えるだろう。
また、リヴァプールのゲーゲンプレスがはまりづらい重心設定、戦術的に整備されていないにもかかわらず、3連覇に王手をかけた選手個々の力とジネディーヌ・ジダン監督のカリスマ性などを踏まえ、マドリー有利の声はやはり多い。サラーが百戦錬磨のマルセルとの一対一で後れをとり、右サイドが封じられるとの指摘も聞こえてきた。
ただ、ゲーゲンプレスがはまらなかったとしても、第一ディフェンダーがパスコースを限定。第二、第三の刺客が相手陣でボールを奪う、いつものリヴァプールらしい動きからチャンスを創ることもできるはずだ。マドリーは、GKケイラー・ナバスが足もとのボール処理を苦手とし、最終ラインと二列目の間に大きなスペースが生じる悪癖も解消されていない。付け入る隙は十分にある。
勝負事はなにが起きるかわからない。大手ブックメーカーの『ウィリアム・ヒル』の予想がマドリー=2・30倍、リヴァプール=3・10倍だとしても、前評判が覆されたケースはしばしばある。13年前も、ミラン有利の声が圧倒的に多かった。
シーズン開幕前、リヴァプールが決勝に進出するとはだれも予想していなかったはずだ。しかし、ユルゲン・クロップ監督が選手たちのモチベーションを巧みにリードした結果、13年ぶりの戴冠まであと一歩のところまで迫っている。準々決勝でマンチェスター・シティを破壊した攻撃力が、マドリー守備陣を粉砕したとしても決して不思議ではない。
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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