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対マンチェスター・シティ戦の基本戦略は、〈恐れない〉ことだ。ケビン・デブライネ、ダビド・シルバ、ラヒム・スターリング、レロイ・ザネといった凄腕を揃える攻撃陣に恐れをなし、自陣の深めにブロックを築いて守っても、最終的には崩される。もちろん、全チームが用いるべきゲームプランではないが、十分な攻撃力を有しているのなら、シティとはどつき合いを演じるべきだ。リヴァプールはプレミアリーグでもチャンピオンズリーグでも、威風堂々と振る舞った。
しかし……。
マンチェスター・ユナイテッドには期待できない。勇気、大志、そして冒険心など、人間が持っていてしかるべき積極的な感情に、ジョゼ・モウリーニョ監督は蓋をした。数多くの枠内シュートを撃たれても、無失点であれば「われわれが試合をコントロールしていた」とうそぶき、ロメル・ルカク、ファン・マタ、アレクシス・サンチェス、ジェシー・リンガード、マーカス・ラシュフォードなど、質量ともに豊富な攻撃陣の個性を生かすプランを組み立てようともしない。
4月7日、敵地エティハドで敗れるとシティの優勝が決まる──というシチュエーションでは、いつも以上に守備を固める公算が大きい。引いて引いて、さらに引いて、〈複数のバス〉がペナルティボックス付近を固める。狙いはスコアレスドローだ。当然、攻撃はルカクへのロングフィード。しかし、チーム全体の重心が低いため、仮にルカクがボールを収めたとしてもサポートが薄く、瞬く間に自陣エリアの奥深くまで戻される……。もどかしい展開が延々と続くのではないだろうか。
試合間隔のアドバンテージも影響を及ぼすほどではない。中六日も空いているとはいえ、ユナイテッドはリーグ内で最も動かないチームだ。中二日のシティを凌駕するインテンシティ、スプリントを期待するだけドッと疲れる。ルカクへのロングボールで全体が間延びしたライン間をシティに完全支配されたとしても不思議ではなく、両チームの実力差を思い知らされるケースも覚悟しておいた方がよさそうだ。選手個々の能力と組織としての機能が美しいハーモニーを奏でるシティを相手に、止まっているだけのバスでは効果がない。
いまさら攻撃的に振る舞えとはいわないが、ユナイテッドはユナイテッドらしく、〈名門の矜持〉を示さなくてはならない。仮に敗れたとしても、世界中のサポーターが納得できるパフォーマンスを──。
シティ対ユナイテッド戦は、4月7日 (土) 深夜1時15分からJ SPORTS 2でライブ中継いたします。
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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