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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2024年12月04日

【輪生相談】年齢からなのか、体力がすぐ落ちてしまうことに悩んでいます。もっと速く走れる様になりたいのですがどうすればいいでしょうか?

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はじめまして。当方44歳から自転車始めて、4年位たちます。年齢からなのか、体力がすぐ落ちてしまうことに悩んでいます。基本週末乗るのですが、少し頑張って強くなった様に感じても、次の週には戻ります。何でそんな気持ちになるのか解らないのですが、速く走れる様になりたいのです。今の目標は富士ヒルシルバー。過去の富士ヒルは1時間26分です。宜しくお願い致します。

(男性 会社員)

■栗村さんからの回答

栗村さん

なんということでしょうか。実は僕も、50歳を過ぎて通勤ライドをはじめたことをきっかけにかつての「熱」が再燃し、まずは富士ヒルシルバーを目指している52歳のおじさんサイクリストなのです。質問者さんは48歳くらいでしょうか。境遇は似ていますね。

さて、ご質問ですが、練習してもすぐに元に戻ってしまうとのこと。質問文の中には「体力」と「気持ち」という2つのキーワードがありますが、その両方について考えましょう。

まず、現在のトレーニングの質と量ですが、なかなか体力が向上しないということは、1.パフォーマンスをなんとか維持できるレベルの質と量でしかない。2.オーバートレーニング状態である、のどちらかが考えられます。ご質問を見る限りオーバートレーニングの可能性は低そうなので、トレーニングの質を見直す必要がありそうです。

目標である富士ヒルシルバーは75分以内ですよね。それであれば、75分以上のトレーニングはあまり必要ないので、平日を含めて75分の「全力走」の能力を上げることを意識してください。つまり、けっこうな短時間・高強度トレーニングになります。もちろん「ゾーン2(低強度)」での長時間トレーニングも有効ですが、社会人はあまり時間がないので、時間効率の良い方法を優先するべきです。

ただし、年齢を重ねると回復力が落ちると言われていますから、トレーニングと回復のバランスが重要です。たとえば週に2回短時間・高強度のトレーニングをするとしても、土日に2日連続で行うのと、水曜日・土曜日という風に間を空けるのとでは、どちらがいいでしょうか?おそらく後者です。なぜなら、前者だと、1日目のトレーニングの疲れがとれない状態で2日目のトレーニングを行うことになるため、2日目の質が落ちるからです。

52歳の僕も、高強度のトレーニングはせいぜい週に2回くらいが限度だなあと感じています。実は最近Zwiftにハマっていて、多い時は週3回くらいZwiftレースに出て毎回オールアウトしているのですが、ここのところオーバートレーニング気味になっています。ですから、そのトレーニングの効果を最大限に引き出すためのスケジューリングが大事になるのです。

というわけで、一例として平日1日と週末に乗る場合のトレーニングを提案してみます。まず、水曜日あたりにローラー台を利用してFTP(1時間持続できる最大ワット数)値での20分走を一本、やってみましょう。もし苦しければ5分のインターバルに分割し、合計20分でもOKです。前後にウォームアップ15分とクールダウン10分は入れてくださいね。慣れてきたら、もっと上の強度のインターバルを組み込むと効果的です。

ちなみに、もし性格的に苦にならないのであれば、Zwiftレースに出れば上記の強度には余裕で達するでしょう。ただし、その場合はある程度の人数が出場していて、更にゴールまで他人と競えるレベルのレースを選ぶことが重要です。スタートしてすぐに千切れたり、逆に楽過ぎても効果が半減してしまいます。

ダウンロード.jpg他人と競えるレベルのレースを選ぶことでZwiftも強度の高いトレーニングになる

一方、週末ですが、土曜日は水曜日と同じことをするか、外を走れるのであればなるべく上りを多くこなせると理想的です。トレーニングは自分が目指すレースへの順応作業なので、リアルのヒルクライムレースを目指すのであれば、やはり実走で上りをこなすのが最も効果的なのは間違いありません。頂上まで30〜60分くらいの上りがあればベストですが、どこかでFTP値を大きく上回る様な5分前後のダッシュは取り入れてください。高強度領域を叩くことは大事ですから。ただし、全体で2時間以内で終えて翌日に疲れが残らない様にしましょう。

日曜日はデータ類を一切見ずに体と対話しながら好きにサイクリングしてください。ゾーン2ベースで、自転車に乗っていて楽しいと感じることが重要です。また、高強度トレーニングではペダリングやフォームが崩れやすくなるので、日曜日は低強度でケイデンスを意図的に変化させたりしながら、ペダリングやフォームを意識しながら走ると良いでしょう。また、最近のホビーレーサーは室内練習の割合が増えてスキルの低下が目立ってきているので、日曜日にスキル練習を取り入れるのも長期的に自転車を楽しむ上でとても重要になります。

そして、自転車に乗らない日は、補助トレーニングとして基本的な筋力・体力アップのために、毎日もしくは1日おきくらいの頻度で、ごく基本的な自重筋トレをやることをお勧めします。プランクのような簡単なものでいいので、歳とともに低下しがちな筋肉量を補うのです。検索すると、国内・海外問わずに多くの自転車向け筋トレ動画が出てきます。あと、普段から歩いたり階段をのぼったりするクセをつけるのも良いでしょう。

これで自転車に乗るのは週3日になりますが、強度をしっかりと上げられていれば、大抵の中年フルタイムワーカーは回復が追いつかなくなると思います。

上記はあくまで一例です。大事なことは、FTPなどのヒルクライムのパフォーマンスに近い領域のパワー値が長期的に上がっていることです。そのためには、週1〜2回の高強度トレーニングを開始する時点では、前回のトレーニングの疲れが完全にとれていることが条件です。とはいえ週1回であってもFTP走を定期的に続けるのは大変ですから、パフォーマンスの伸びが滞ったら2週間くらい自転車から離れるのも大事です。

また、パフォーマンス向上の前にメンタルが参ってしまうケースも多々ありますが、その場合はオーバートレーニングからの気力低下と、単に飽きてしまってやる気が起こらない2通りのパターンがあります。前者は休むことで、後者はトレーニングパターンを増やすことで改善できる可能性があります。

あと、食事や睡眠など回復に配慮することが必要なのは言うまでもありません。ちゃんと回復を計算に入れれば、まだまだ伸びるお年頃です。一緒に頑張りましょう!

文:栗村 修・佐藤 喬

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