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公式戦としては今季最終レースとなる『ツール・ド・おきなわ』に出場するために木曜日から沖縄入りします。
私が初めてこのレースに出場したのは23歳のとき。
当時、『大塚製薬ノックス』というクラブチームに所属していて、とにかく『逃げる』ことに全ての情熱をぶつけるレースを繰り返していました。
この年の実業団ランキングを3位で終えていた私は翌年からシマノ入りがほぼ内定していて、自分を成長させてくれたこのクラブチームでの最終レースを自分のスタイルで走り切ろうと密かに燃えていたのです。
スタート直後にアタックを仕掛けると当時の国内有名プロ選手が数多く含まれた約10名ほどの先頭集団に入り、すぐにメイン集団との差が数分に開いたにも関わらず、更にそこからアタックを仕掛けるという完全にキレた走りを繰り返して、大物プロ選手に『落ち着け!』と怒鳴られたことを覚えています。
150km地点過ぎで一旦はメイン集団に捕まったものの、その後約20名ほどに絞られた先頭集団から再び単独で抜けだして10kmほど独走するも、完全に売り切れてしまい最後は11位でのゴールとなりました。
近年のチームプレー化したレースではまず有り得ない完全なる自己満足レース…
それでもレースを終えたあとに独りで砂浜に行って『再びヨーロッパを目指す!』と熱く想ったことは、今でも沖縄の海を見ると鮮明に蘇ってきます。
その後、選手として数回このレースを走って最高順位は5位…
監督として参加するようになってからの最高順位は2位…
結局、一度も勝利は経験していませんが、『ツール・ド・おきなわ』はある意味で非常に印象的なレースでもあります。
それは、このレースがシーズン最終レースであるからでしょう。
このレースの後には、いつもいくつかの別れが待っています。
1年を通して実力を示し格上のチームに旅立つ選手、逆に契約更新ができずに他チームへ移籍していく選手…
1年間共に戦ってきた選手たちとの別れは決して楽しいものではありません。
『ツール・ド・おきなわ』が終わっていつも感じることは、レースの世界は弱肉強食な世界であり全ては結果次第という現実です。
この世界は、レベルが上がれば上がるほど、よりシンプルな世界となります。
選手として使いものになるかならないか…
性格が良いとか、協調性があるかなどはもはや関係なく、選手としての仕事をこなせているかが全ての判断基準となります。
その部分で甘さが残るチームというのは、結局、使いものにならない選手と心中するハメになるでしょう。
その時が来るまでは選手を信じて愛し続けないといけませんが、その時が来たなら頭を切り替えないと、チームもそして選手自身もダメにしてしまいます。
この事は、チャンピオンスポーツの世界にアシを踏み入れた者全てに平等に科せられる宿命なのです。
そんな、この世界特有の厳しさに触れるレースに、今年も勝利を目指して挑戦します。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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