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【Cycle*2022 ブエルタ・ア・エスパーニャ レースレポート:第16ステージ】波乱の最終局面を制したピーダスンが仲間に捧げる勝利「これはアレックス・キルシュと赤ちゃんのためにある瞬間だ」
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介「残り3kmでアタックすることはプリモシュ(ログリッチ)と話し合って決めていた。実際にも予定通りの走りができていたよ。すべてが完璧だった…最後の直線まではね。落車については何が起きたのか分からない。説明のしようがないよ。それよりも怪我の具合を見ていかないといけない」(ユンボ・ヴィスマ スポーツディレクター、アディ・エンゲルス)
接触したライトがスプリントラインを変えていたのであれば問題となる事案だが、今回はそうではないため、ペナルティは発生しない。もっとも、ライト自身は困惑しきっている。
「最後の直線は確かにログリッチにブロックされたような感じになったけど、正直に言うとスプリントが始まった時点で僕に勝ち目がなかった。かなり脚にきていたんだ。無理して前をこじ開けようなんて余裕もなかった。それだけに、ログリッチと僕に何が起きたのか分からないんだ。タイミング悪く起こってしまった出来事だと捉えるしかない。まったくもって意図的ではないし、何より彼がレースを続けられることを祈っているよ」(フレッド・ライト)
結局というべきか何というべきか。ピーダスンの歓喜、そしてログリッチの悲劇から3分以上遅れて“現場”へとやってきたエヴェネプールは、しばらくしてトップから8秒遅れのグループでのフィニッシュ扱いに決まった。それがそのまま、ログリッチに奪われたタイムということになる。パンクによる影響は、最小限で済んだ。いや、ログリッチの負傷を思えば、体には何のダメージもないエヴェネプールの方が被害は少なかったと言っても良いほどである。
パンクの影響で少しだけタイムを失ったレムコ・エヴェネプール
「昨日(休息日)このコースを試走して、最後の数キロに恐怖を感じていたんだ。無理はしないと決めていて、実際に集団の後ろに下がっていた。上りに入ってから集団内のポジションを上げようと思っていたけど、パンクしてしまってそれはできなかった。3kmルールには助けられたよ。そうじゃなかったらタイムを大きく失っていたからね。ログリッチについてはフィニッシュしてからすべてを把握したけど、レースを続けられることを願っているよ。今日、彼は勝ちにいっていたと思うけど、気持ちを切り替えて明日のステージを走ってほしいね」(レムコ・エヴェネプール)
大波乱となった大会第3週初日。これは嵐の前触れなのか、ただただ慌ただしい1日に過ぎなかったのか…。その答えは、次以降のステージで分かる。
文:福光俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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