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【Cycle*2021 パリ〜トゥール:レビュー】チームの献身と自身の努力を今度こそ勝利へと結びつけたアルノー・デマール「すべてが報われた。勝利に酔いしれてる」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかデマールは一切ためらわなかった。スプリントに向けて、ストゥイヴェンが自らの後輪から動かなくなったが、構わず前を追いかけた。残り350mで2人を完全にとらえた。そのまま勢いを殺さず、ラインまで250mを残し、力強くロングスプリントに打って出た。
「穴を埋めるために自らイニシアチヴを取った。その直後に250mの表示板が目に入って、目の前が大きく開けていたから……全力で加速を切った。本気で勝ちを逃したくなかった。スプリントをもぎ取りに行った」(デマール)
背後でもがくボナムールとストゥイヴェンを悠々と退け、デマールがフィニッシュラインを先頭で駆け抜けた。チーム全体の仕事と、自らの渾身の努力を、今度こそ勝利へと結びつけた。2020年は年間14勝、ジロ区間4勝と大暴れし、2021年も6月までで8勝と絶好調を保ってきたピュアスプリンターにとって、6月11日以来4ヶ月ぶりにつかみ取った栄光だった。
最後のスプリントをもぎ取ったデマール
「シーズン中盤はすごく苦しかった。ツールの途中リタイア、ブエルタでの無勝利……。でも妻はいつだって支えてくれたし、チームのみんなが僕を信じ続けてくれた。僕もプロとして、決して投げ出さず、努力を続けた。いつか辛い日は終わりが来ると分かっていた。そして今日、すべてが報われた。勝利に酔いしれてる。最高だね」(デマール)
ちなみに旧パリ〜トゥールを2013年3位、2016年2位と逃してきたスプリンターにとって、新パリ〜トゥールでの勝利は、どうやら少々予想外でもあったようだ。
「旧大会もかなり大きな意味を持つレースだったけれど、ぶどう畑の小道のおかげで、戦いはよりいっそうハードになった。新しいコースは決して僕向きとは言えなかった。スプリンターにとってはかなりきついんだ。でも、今日は、望んでいたとおりにすべてが進んだ」(デマール)
ボナムールは、大躍進の2021年を、2位で締めくくった。初出場ツール・ド・フランスではスーパー敢闘賞に輝き、8月のブルターニュ・クラシックでは、ワールドツアーのワンデーレースで初めてのひと桁台6位に食い込んだ。チーム内でリーダーの地位に昇格し、そして迎えた「落ち葉のクラシック」での表彰台乗り。
「ちょっとがっかりしてる。最後は顔を見合わせてしまったし、デマールがとてつもない勢いで上がってきた。残念だよ。でもデマールは偉大なるチャンピオンだ。負けた相手が彼だったことで、失意もほんの少し薄まるというものさ」(ボナムール)
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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