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【ツール・ド・フランス2021 レースレポート:第10ステージ】エディ・メルクスの誇る34勝まで後1つ。今大会3勝目のカヴェンディッシュ「チームがすべてお膳立てしてくれた」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかプロトン
南西へと真っすぐに突き進む道の上では、終盤へ向けて、徐々に、しかし着実にスピードは上がっていく。フィニッシュまで残り50kmで、逃げ2人の余裕は早くも1分を切った。もちろん平坦ステージのセオリーに従って、プロトンはすぐに飲み込んでしまうつもりもない。20秒から1分ほど後方で、あとしばらくは2人を監視し続けた。
ただし残り39km。道の両脇が大きく開け、風の通り道が出来上がる。それに合わせてマイヨ・ジョーヌ擁するUAEチームエミレーツが、メイン集団先頭で隊列を組み上げると……いよいよ吸収へのカウントダウンが始まった。残り38kmでファンデルサンドは自ら匙を投げた。ウルの奮闘も2km先で打ち切られた。突如としてバイクエクスチェンジが猛烈に引き始めたからだ!
右斜め後方からの風に乗ったオージー集団の加速は、しかし不発に終わる。集団にちょっとした緊張感をもたらしただけで、カヴを振り払うことも、分断を作り出すことも出来なかった。
続いてジュリアン・アラフィリップが先頭に立つと、残り30km、ゆるい下りを利用して急激な加速に転じた。まさにそのタイミングでコルブレッリがパンク。一時は40秒ほど離され、イタリアチャンピオンはナーバスなまでの追走を余儀なくされたが、むしろ集団側が加速を止めた。分断を作り出すほどの風は吹いていなかったからだ。
もう1度だけ、プロトンは風に運命を託す。ラスト16km、進行方向を北に転換するタイミングだった。またしてもウルフパックの世界王者が最前線でがむしゃらにペダルを回し、今度はボーラ・ハンスグローエやEFエデュケーション・ファーストも積極的に企みに加わった。総合4位ヨナス・ヴィンゲゴーも果敢に先頭交代へと飛び込んだ。ついに……集団にほころびが生まれ、残り12km、ついに小さな斜め隊列がいくつもでき上った!
「最終盤は凄くスピードが速かった。小さな登りと風のせいで大混乱だったよ。でも僕はチームメートのおかげで常に良いポジションにいられたんだ。こういう展開は大好き。すごく楽しかった。単純なスプリントに向かうストレスより、こういう動きがあった方がおもしろいよね」(ワウト・ファンアールト)
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