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「たったの」1分24秒なのか、それとも1分24秒「も」なのか。ブラドレー・ウィギンスが、雨のペスカーラで総合ライバルたちから軒並みタイムを失った。……マリア・ローザのチャンスも失ったのだろうか。その答えは、翌第8ステージの長距離個人タイムトライアルで、明らかになるはずだ。
果てしなく起伏が続く177kmへと向かって、6人がステージ序盤に飛び出した。エマヌエーレ・セッラ、マーティン・チャリンギ、イオアニス・タモウリディス、ドミニク・ロラン、ピム・リヒハルト、そしてアダム・ハンセンは、最大7分半ほどのリードを奪って、アブルッツォの丘陵地帯を急ぎ続けた。
はるか背後のプロトン内では、ヴィーニファンティーニ・セッレイタリアが、ほぼチーム全員で集団制御にあたっていた。理由は明らか。ジロ直前に、アブルッツォに本拠地を置く企業アックア・エ・サポーネが、同チームに出資を行ったからだ。ゴール地のペスカーラ郊外で生まれ育ったダニーロ・ディルーカが、自らの契約と同時に、サブスポンサーとして連れてきた。しかも昨年限りで惜しくも解散したアックア・エ・サポーネのチームリーダー、ステファノ・ガルゼッリも、今ではヴィーニファンティーニのジャージを身にまとっている。蛍光イエローチームにとって、特にディルーカにとって、この日は勝つべきステージだった。
一方で総合を争う大多数の選手たちは、55kmのタイムトライアルを控えて、「ウィギンスからタイムを少しでも稼いでおきたかった」(ヴィンチェンツォ・ニーバリ)に違いない。もちろん、他方のスカイプロサイクリングは「できる限り危険を避け、リーダーを守り、タイムを失わないこと」(リゴベルト・ウラン)というのが、大切な目標だった。
様々な陣営の計算は、細くうねったアップダウンを重ねるうちに、徐々にかき乱されていく。残り70kmから猛烈に加速を始めたヴィーニファンティーニは、それでもラスト40kmで2分にまでタイム差を縮めた。ところが3級峠キエティ・ピエトログロッサで、ついに先頭2人になったセッラとハンセンは、想像以上に粘り強かった。しかも、降り始めた雨が、追う足を大きく鈍らせた。
じっとりとアスファルトに絡みついた雨は、2008年ジロ山岳賞の足をも引っ張った。ゴール前29km地点、下りカーブでセッラが大きく横滑り。すぐに走り出し、ハンセンに追いつくも、おそらく体力を大幅に削ってしまった。ゴール前20kmの3級峠サンタ・マリア・ディ・クリプティスで、逃げの友の刻むリズムに、突如としてついていけなくなった。
「スプリント牽引役」として是非にと請われ、アンドレ・グライペルと一緒にHTCコロンビアからロットへと移籍した31歳(ちなみにこの翌日が32歳の誕生日!)は、軽々と上りをこなしていった。昨年3つのグランツールを全て完走したタフガイは、ゴールまでの20km、まるで疲れを知らぬように力強く走り続けた。なにより2004年に「世界で一番厳しい」と噂のクロコダイル・トロフィーを勝ち取っている元MTBライダーは、漠やら岩山、泥沼の中を駆け回った経験のおかげで、イタリアの濡れた路面にヒヤリとさせられることは1度もなかった。
「今日は逃げ向きのステージだと思っていた。朝からモチベーションが高かったんだ。そのために頭も剃ってきたんだよ。差が7分に開いたときに、チャンスがあるぞと思った。でもタイム差が縮まってきて、やはりダメか……とも考えたけどね。セッラが脱落して驚いたし、集団に吸収されると思っていた。フィニッシュラインを越えたときの感動はとてつもなかったね。キャリアで一番美しい勝利だよ。最高の誕生日プレゼントになった!」
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