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この世の果てには、新世界へと続く茫洋たる大海が広がっていた。見晴らしのよい丘の上で、選手たちはとびっきりの爆発力を競い合った。フランドルの「ミュール=(壁)」コッペンベルグをこの春も勢いよく駆け上がったファビアン・カンチェラーラを、アルデンヌの「ユイの壁」を4月に制したダニエル・モレーノが、見事に退けてみせた。
この日のゴール前35kmにも、勾配30%越えの壁が立ちはだかっていた。残念なことに、攻撃の要地とはならなかったけれど。アタックをかけるには、確かに、フィニッシュラインまで遠すぎた。ただスタートから9km地点で飛び出したダニーロ・ウィス、アレックス・ラスムッセン、ユッシ・ヴェッカネン、そしてデニス・ヴァネンデールの望みを断ち切るのには、十分すぎるほどの試練だった。一時は7分半近いリードを奪い、ぎりぎり55秒差で常軌を逸した坂道へと飛び込んだ彼らには、無駄な抵抗を試みる余裕さえなかった。エスケープの中ではただ1人、ニコラ・エデだけが、どうにか先を続けた。
一部の「上れるスプリンター」や「パンチャー」系の選手たちも、この壁で夢を断たれた。体調万全なら区間優勝候補の一角に上げられるはずのフィリップ・ジルベールやサイモン・ゲランスは、それぞれエネコ・ツアーと前夜の落車の影響がたたり、プロトンから完全に置き去りにされた。
また例えば「第3ステージよりも、むしろ第4ステージが脚質にあってるかな」と豪語していたジャンニ・メールスマンも、激坂の途中で後方へと滑り落ちた1人だった。なんとかチームメートたちの援助を得て、下り坂で、メイン集団への再合流は無事に果たした。しかし追走のために、大いにエネルギーを費やしてしまった。
壁を先頭で抜け出したエデは、その後アメッツ・チュルーカを待ち、さらにはルイスレオン・サンチェス等4選手と協力しながら、逃げ距離を着々と伸ばして行った。しかも後発組5人があっさり諦めてしまった後でさえ、単独で頑張り続けた。ジロ・デ・イタリアのように「フーガ賞(逃げ距離の総計で競う賞)」があればよかったのだけれど……。幸いにも、ゴール前15kmでついに吸収されたフランス人には、「敢闘賞」が手渡された。
生まれて初めてのグランツールリーダージャージを身にまとう41歳、クリストファー・ホーナーを支えるレディオシャック・レオパードが、完璧なるプロトン制御を続けていた。「高速上りフィニッシュは自分に向いていない」と言うヴィンチェンツォ・ニーバリを、総合ライバルの抜け駆けから少しでも保護するために、アスタナのアシスト勢も隊列を敷いた。最後の上りが近づくに連れて、まさに前日と同じように、オリカ・グリーンエッジやキャノンデール プロサイクリングが前方へと競りあがってきた。最後の上りでまっさきに仕掛けたのは、前日と同じ、フアンアントニオ・フレチャだった。前日の3kmよりは短い、残り1.1kmからの飛び出しだ。
しかしラスト600m、小さな激坂巧者が、切れ味鋭いカウンターアタックを成功させた。前日に山頂スプリントを打ちに行ったホアキン・ロドリゲスではなく、その影武者的存在の……モレーノだった!
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