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「調子は良かったんだけど、ライバルを引き離せるだけの力がなかったね。ニーバリはボクの後輪から決して目を離さなかった。アタックを仕掛けるたびに、彼は後ろにくっついてきた」(ホーナー)
ネットアップの奮闘は、幸いにも、報われる時がやって来た!ラスト2kmのアーチの下で、レオポルド・ケーニッヒが大きな一発をぶっ放した。同僚たちの強い意志を引き継いで、チェコの若者は――前夜、同国出身のゼネック・スティバールが区間を制したことも、大いに刺激となったのかもしれない――、山頂へと急ぎ始めた。
「今朝、チームに『ステージを勝ちに行きたい』と話して、ボクをサポートしてくれるよう頼んだんだ。チームメイトたちは素晴らしかった。プロトン全体を敵に回さなきゃならなかったけれど、ボクらは、やり遂げたんだ」(ケーニッヒ)
前方にはいまだアントンが、年末限りで消滅するオレンジチームのために、栄光をつかみとろうと踏ん張っていた。後方では昨ツールで旋風を巻き起こしたティボー・ピノが反応し、さらには、ジロ総合を過去2度制したイヴァン・バッソが、十分に温まったディーゼルエンジンを全開にふかした。ダニエル・モレーノやニコラス・ロッシュや、バルト・デクレルクも、束になって追いかけてきた。5人全員が、グランツール区間勝利の経験を持つ、お墨付きの実力者だった。
しかし、グランツール初参加の新人を、誰も止めることはできなかった。マリア・ローザ姿のニーバリが雪の中でマウロ・サンタンブロジオに区間勝利を譲ったあの日、地球の反対側のカリフォルニアで難関ディアボロ峠を制したケーニッヒは、南スペインで勝利を自らの手もとへと引き寄せた。
「ブエルタに出場できたことで、第1目標はすでにクリアした。そして2番目の目標も、今日ステージを制して、達成することができた。夢だった。アタックをかけた後は、しばらく一定のペースを保った。それからアントンが前方に見えてきたから、再び加速した。そしてステージを制するために、全力を尽くした。ちょっと驚いてる。目標に手が届いた今、この先は、ブエルタ開幕前から宣言していた通り、総合トップ10入りを目指す」(ケーニッヒ)
現時点でケーニッヒは、堂々、総合5位につける。そして、ホーナーが熱望していたマイヨ・ロホを、ひらりと肩にまとったのは……、前日まで8秒差で総合3位につけていたロッシュだった。
「ラスト2kmで、アタックするチャンスがやって来た。理想的な瞬間だった。しかも幸いなことに、一緒に飛び出したのは、ものすごい強豪ばかりだった。ステージを勝とうとは思ってなかった。ただ、とにかく、マイヨ・ロホのことだけを考えていた。だってグランツールのリーダージャージを、今まで1度も着たことがなかったからね。前へと突っ走った。全てを尽くした。これにて任務完了さ」(ロッシュ)
第2ステージで生まれて初めてのグランツール区間優勝を手に入れたちょうど1週間後に、ロッシュは生まれて初めてのマイヨ・ロホを手に入れた。区間3位のボーナスタイム4秒も懐に収め、総合2位ホーナーを17秒差に引き離した。
また区間2位でゴールしたモレーノは、やはり17秒差で総合3位にジャンプアップ。ところで、チームメイトが前に飛び出したせいで、ホアキン・ロドリゲスは「下手にアタックがかけられなくなってしまった」そうだ。プリトだけをひたすら警戒していたアレハンドロ・バルベルデと一緒に、ケーニッヒから19秒遅れでフィニッシュラインを越えた。バルベルデは総合31秒遅れ、ロドリゲスは1分03秒遅れ。ボーナスタイムを荒稼ぎした昨大会と違って、ツールで全力を尽くした両者は、今年は少々苦戦を強いられている。
「でも、ニーバリからタイムを稼げたのは満足だ」とバルベルデが語るように、イタリア人はライバル2人から8秒タイムを失った。総合でも18秒遅れの4位と後退した。「スピードの速い山頂ゴールが苦手」と常々口にするニーバリは、初日チームタイムトライアルで手にしたアドバンテージを、徐々に減らしつつある。一方で1日目に1分26秒を落としたバッソは、この日ライバルたちから少しずつタイムを奪い取ったにも関わらず、現時点でも総合1分28秒遅れ。チーム競技の遅れが、いまだに大きな足枷となっている。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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