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「ミニ」ツール・ド・フランスと呼ばれるパリ〜ニースは、グランツール総合覇者の「登竜門」でもある。ミゲル・インドゥラインは1989年にパリ〜ニースを制し、2年後にツールで初優勝を手に入れた。1982年から大会7連覇の偉業を達成したショーン・ケリーは、7年目の1988年に、ブエルタで初の栄光を勝ち取った。2007年に初優勝したアルベルト・コンタドールと2012年優勝のブラドレー・ウィギンスは、それぞれ4ヶ月後のツールで初めてのマイヨ・ジョーヌを持ち帰っている。史上通算14人が、そのキャリアにおいてパリ〜ニースとグランツールの両方を制してきたが、パリ〜ニースより先にグランツールを勝ち取ってしまった早熟なチャンピオンは、偉大なるエディ・メルクスとトニー・ロミンゲルの2人だけ。
そして2015年パリ〜ニースのグランツール優勝経験者は、ウィギンス1人。当然ながら、未来のグランツール覇者候補は、片手では足りないほど揃っている。昨ツール総合2位ジャンクリストフ・ペロー、昨ジロ総合3位ファビオ・アールを筆頭に、ラファル・マイカ、リッチー・ポート、ロメン・バルデ、ティージェイ・ヴァンガーデレン、ワレン・バルギル、ウィルコ・ケルデルマン、アンドリュー・タランスキーetc……。
虎視眈々とマイヨ・ジョーヌを狙う「未来のチャンピオン」たちは、第6ステージ・土曜日の山岳ステージと、第7ステージ・日曜日の登坂タイムトライアルで最後の戦いを繰り広げる。第6ステージは、全長180.5kmのコースに1級峠3つ、2級峠3つがぎゅうっと詰め込まれている。しかし勝利の女神は、単なるヒルクライマーではなく、むしろ超一級のダウンヒラーに微笑みかけるに違いない。なにしろ最終峠ペイユをこなした後は、ニースの海岸道路プロムナード・デ・ザングレまで、なんと全長25kmのロングダウンヒル!もしも「南仏の太陽」が雨雲で隠されていた場合……、とてつもない大波乱も起こりえる。
そして最終日は、エズ峠を舞台とした、全長9.5kmの登坂タイムトライアル。3年前に復活した「決戦コース」は、2012年ウィギンス、2013年ポートと、いずれもマイヨ・ジョーヌがトップタイムをたたき出してきた(2014年は行われなかった)。今年も、美しき鷹の巣村を抱くこの山で、黄色いジャージが圧倒的な力を魅せつけるのだろうか。平均勾配4.7%、最大8.5%の山道での、約20分の孤独な努力の果てに、第73代パリ〜ニース覇者は誕生する。
そうそう、総合争いとは関係ないけれど、FDJ時代は「犬猿の仲」で、今季ついにチームメートの関係を解消したナセル・ブアニとアルノー・デマールによる本気のスプリント勝負も見逃せない!
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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