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その、ダート区間へ向かって、アスタナは猛烈に列車を走らせた。山に入ると同時に、メイン集団の制御権をティンコフ・サクソから奪い取った。パオロ・ティラロンゴ、ダリオ・カタルド、ディエゴ・ローザ、タネル・カンゲルト、ミケル・ランダ、そしてファビオ・アル。今ジロ通して山でレースを作り上げてきた水色列車が、今大会最後の難関山岳ステージも果敢に攻め立てた。
切り込み隊長はカンゲルトが務めた。道がいまだアスファルトの時点で、2度の加速を切ると、メイン集団を一瞬で小さく絞り込んだ。アルとランダは当然のように付いていった。3週目になってようやく本来の調子を取り戻したリゴベルト・ウランも反応した。コンタドールはいまだ、不調を露にしていなかった。
ライダー・ヘシェダルとステフェン・クルイスウィクも、いつものように、最前線に居残った。それどころか、両者はアスタナだけに加速を任せず、積極的にスピードレースのイニシアチヴを取った。なにしろ2回目の休養日を総合13位で迎えたヘシェダルは、第19ステージ終了時点で7位にまで順位を上げていた。カンゲルトの加速で4〜6位の3人が一気に千切れたこの状況を、最大限に利用したかった。一方のクルイスウィクは、前夜に青い山岳ジャージを手放した。第19ステージに大逃げで首位をさらい取ったジョヴァンニ・ヴィスコンティ、さらに自身とはわずか2pt差のベナト・インサウスティをどうにか振り払い、「チーマ・コッピ」での逆転ジャージを狙っていた。こうしてカナダ人とオランダ人は、チャンスと脚が許すたびに、がむしゃらに前へ突進した。
最初のサインは、未舗装ゾーンに突入した直後に現れた。今大会最大の「新発見」ランダが、ゴール前33km、単独アタックを仕掛けた。コンタドールは早速ダンシングポジションで追いかけ始めたものの、すぐにサドルに座り込み、追走を断念した。本格的な事件に発展したのは、残り30kmの地点だった。ヘシェダルの何度目かの加速に、クルイスウィクも付き添い、ウランも腰を挙げ……、ついにはコンタドールが動けないことを理解したアルも、マリア・ローザを捨てて走り去った。どんな大チャンピオンであれ、3週間のグランツール期間中には必ず、「空白の1日」が訪れると言われている。最終日前日に、コンタドールにそんな苦しい1日が訪れた。ひとりになった。
「ハンガーノックではなかった。脱水状態だったんだ。それほど暑くなかったから、奇妙に聞こえるかもしれない。でも、今朝、体重が落ちていた。気にも留めていなかったし、ステージ中はしっかり水分補給をしていたんだけど……、もしかしたら十分ではなかったのかもしれない」(コンタドール、公式記者会見より)
決して焦りはしなかった。フィネストレの山頂ですでにランダから1分27秒、アル集団から55秒も突き放されたが、下りでしっかり水分補給に努めた。カンゲルトが背中に張り付こうが、前方との差がじわじわと広がっていこうが、「セルフコントロール」を心がけ、一定のペースを保ち続けた。
ランダはザカリンを捕らえ、前方へと突き進んでいた。ヘシェダル、クルイスウィク、ウラン、アルの4人は、まるで「逃げ集団」のように先頭交代を繰り返して、コンタドールから遠ざかっていった。セストリエールの上りで両陣営が合流し、アスタナが2人となってからは、ランダが積極的に牽引作業を引き受けた。
「今大会中のランダの献身は、本当に素晴らしかった。たとえばモルティローロでは、僕の調子が最悪だったにも関わらず、6、7kmも僕に合わせて走ってくれたんだからね。あのことはいつまでも忘れないだろう。今日もまた、彼がとてつもない仕事をやり遂げてくれた。彼は素晴らしいチャンピオンであるということを、再び、こうして、証明した」(アル、公式記者会見より)
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