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2秒遅れでたどり着いた15人程度の小集団スプリントは、前評判通りにサガンが制した。区間2位3回、区間3位1回と、どうも勝てないけれど、めっぽう安定感のある走りで、ポイント賞でも首位のアンドレ・グライペルからわずか3pt差に急接近した。また上ってからのフィニッシュではあっても、正確なる上りフィニッシュではなかったため、「最終3kmで落車やメカトラブルのせいでタイムを失った選手には、アクシデントの時点で所属していた集団と同じゴールタイムを与える」という救済ルールが適応された。つまりマルティンが落車した時点で先頭集団にいた122選手には、実際のゴールタイムに関わらず、スティバールから+2秒差が記録された。
またマルティンの災難に巻き込まれて、地面に倒れこんだのは4人。バルギル、ヴィンチェンツォ・ニーバリ、ティージェイ・ヴァンガーデレン、ナイロ・キンタナと、いずれも総合表彰台候補ばかりだった。さらにクリス・フルームもニーバリと接触したが、ぎりぎりでバランスを立てなおした。幸いにして、誰1人として大きな怪我は負わなかった。バルギルは「腰と肩に打ち身ができたけれど、大丈夫」(ゴール後インタビューより)、ニーバリは「脚と肩を軽く痛めた程度」(ゴール後インタビューより)、キンタナは右肘を痛めたが「表面的な怪我」(チーム公式HPより)、フルームは右膝に軽く血がにじんだだけで済んだとのこと。
転んだ本人は、軽い怪我では済まなかった。ゴール直後に移動レントゲン設備で精密検査をした結果、左鎖骨の骨折が認められた。すぐに祖国ドイツのハンブルグに飛び、外科手術を受けることが決まった。左肩が動かせないという理由で、真新しいマイヨ・ジョーヌをあらかじめ舞台裏で着込んで臨んだ表彰式が、マルティンにとっては2015年ツールとのお別れセレモニーとなってしまった。
「まるで映画のようだ。感情のジェットコースターに乗っているみたい。そして今、僕は本当に悲しい。チームはジャージを守るために全てを尽くしてくれたし、あと数日は守るチャンスがあったはずだから。これがツール・ド・フランスさ。本当に走り続けたかった。でも僕のレースは終わった。簡単に受け入れられることじゃないよね。本当に戦い続けたかった」(マルティン、チーム公式リリースより)
ファビアン・カンチェラーラも3日目にマイヨ・ジョーヌ姿で落車し、そのまま大会を去っていった。マルティンは正式なるマイヨ・ジョーヌのまま、翌第7ステージをDNS(不出走)となる。少々呪われた黄色いジャージは、丸1日、ツールのプロトンから姿を消すことになる。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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