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最終マンス峠の上りでハンセンとハラーが捕らえられ、入れ替わるようにプラサが飛び出した後も、状況は変わらなかった。スペインのルーラーが細い山道を一心不乱に突き進む一方で、後方では、誰もがじっとサガンの出方ばかりを伺っていた。
「みんなが僕のことばかり見ていたし、僕がアタックを仕掛けると、みんなが張り付いてきた。誰も仕事を引き受けようとはしなかった。だから、僕が、レースをこじ開けようと試みた」(サガン、ミックスゾーンインタビューより)
マウンテンバイクで鍛えたハンドル捌きを駆使して、サガンは全速力でダウンヒルへと飛び込んだ。2003年の暑い日に、この峠からの下りで、ホセバ・ベロキは溶けたアスファルトにホイールをとられた。2011年の雨の日は、濡れそぼった細かいヘアピンカーブの連続に、アンディ・シュレクは尻込みした。前者は大腿骨を骨折し、後者は大きくタイムを失った。そんな、まるで呪われたような道を、恐れることはなかった。
「だって僕は、ビッグボールの持ち主だから!」(サガン、ミックスゾーンインタビューより)
サガンにとって残念なことに、そしてプラサにとって幸いなことに、山頂での1分差は、12km先のフィニッシュラインではちょうど半分にしか縮まなかった。2005年ブエルタでグランツール区間初優勝を手に入れた35歳が、10年後に、生まれて初めてのツール・ド・フランスのステージの栄光をもぎ取った。
「35歳のほうが、25歳の時よりも、ずいぶんと勝利のありがたみを実感できるものだね。僕にとって最初で最後のグランツール勝利は、2005年のブエルタで、しかもタイムトライアルだった。ラインレースでの勝利は、また一味違う。ツールで勝つと言うのは、いつだってすごく難しいことだけど、今日は全ての歯車がかみ合った。僕には脚があったし、ファイティングスピリッツも満タンだった。本当にスペシャルな気分だよ!」(プラサ、公式記者会見より)
キャリア22回目の勝利の喜びをプラサがしみじみと噛みしめたのだとしたら、キャリア6年目ですでに80勝以上を叩き出してきたサガンは、今大会5度目の2位をおどけて笑い飛ばした。マイヨ・ヴェール用ポイントをゴールでさらに17pt積み上げて、89pt差のダントツ首位を突っ走る25歳は、インタビュー会場で「アイ・ラヴ・ユー、クリス!」とフルームに絡んだり、「ゴールジェスチャーの意味は?」と聞かれると「ウルフ・オブ・ウォール・ストリートに出てくる歌だよ(でマシュー・マコノヒーがレストランで歌う)」と、ジェスチャーを繰り返しながら鼻歌を20秒ほど歌ったり。あちこちで爆笑の渦が巻き起こったのは言うまでもない。
静かに走ってきたマイヨ・ジョーヌ集団は、マンス峠に入った瞬間から、短いバトルへと突入した。アルベルト・コンタドールが真っ先に加速し、アレハンドロ・バルベルデもアタックを見せた。しかし登り最終盤で、唯一の飛び出しを決めたのは、すでに総合で8分差以上の遅れを喫しているヴィンチェンツォ・ニーバリだった!
山への突入前に、チームメートたちに「ここで何かしなきゃ。どんなわずかなチャンスでも、タイムを縮めるためにはトライする」とディフェンディングチャンピオンは宣言していたという。山頂での13秒のリードを懐に、得意のダウンヒルでさらにリードを開きにかかった。
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