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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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総合8位のニーバリと、マンス峠の登坂口で一気に脱落した9位トニー・ギャロパンを除く総合トップ12、つまり10選手も下りでスピードを緩めようとはしなかった。あまりにも急いでいたせいだろうか。蛇のようにうねった細い下り坂を、普通なら一列棒状で行くべきところなのに、道幅いっぱいに広がったまま下ってしまった。そんな混雑状態の中、ティージェイ・ヴァンガーデレンがワレン・バルギルと軽く接触した。バルギルの後輪ブレーキのレバーが効かなくなった。ブレーキがかけられないフレンチライダーは、左側にいたトーマスと激しくぶつかった。そして英国人は……、道の外へと弾き飛ばされた!
ヘリコプターからのテレビ映像は、衝撃的だった。トーマスは道路脇の電柱に頭部から激突し、沿道の観客の脇を抜けて、草むらへと転がっていく姿が確認された。マイヨ・ジョーヌのフルームは、つい数秒前まで併走していたチームメートの事故を、チーム無線で知らされた。
「連絡を受けてすぐ、周りの選手たちにそのことを伝えようとした。落車が起こったから、ここから先は落ち着いて下ろう、って言いたかったんだ。でもフィニッシュはほんの数キロ先に迫っていたし、ライバル達はハードなレースを好んだようだった」(フルーム、公式記者会見より)
そのハードなレースを好んだ面々は、ニーバリとの最終的なタイム差をなんとか28秒差に食い止めた。「海峡のサメ」は総合8位のまま変動はなかったし、総合首位まで7分49秒差、表彰台圏内までは4分17秒差といまだ遠い。しかし休養日明けのアルプス4連戦で、ついに反撃に出る準備が整ったことを、ライバル達にはっきりと知らしめた。
さらに38秒後、トーマスがゴールへとたどり着いた。安堵のため息と喜びの声があちこちから漏れ聞こえ、テレビカメラやジャーナリストたちが奇跡の生還者の周りに殺到した。ところが本人は相変わらずクールな様子で、ブラックジョークさえ飛ばすほど、頭は明晰だった。
「柱に頭をぶつけたけど、大丈夫だったよ。観客が僕を道まで引き上げてくれた。ドクターからはいろいろと質問された。あなたの名前は何ですか?って聞かれたから、『僕はクリス・フルームです』って答えたんだ」(トーマス、ゴール後インタビューより)
トーマスもまた総合6位の座を守った。ギャロパンが9位から11位に陥落し、バウケ・モレマとバルギルが1つずつ総合順位を上げた以外は、一切の変動はなかった。ナイロ・キンタナは3分10秒差の総合2位で、ティージェイ・ヴァンガーデレンは3分32秒差の総合3位で、アレハンドロ・バルベルデは4分02秒差の総合4位で、そしてアルベルト・コンタドールは4分23秒差の総合5位で、大会2回目の休養日を過ごすことになる。
「あとシャンゼリゼまで、実質4つしかステージはないんだね。シャンゼリゼが待ち遠しいけれど、まだ戦いは終わっていないんだ。今日もあらゆるチームがアタックを試みてきた。休養日からパリまでは、連日こういったシナリオが繰り広げられるのだろう。僕もチームも、パリまで、今日と同じようにしっかりと戦っていきたいね」(フルーム、ミックスゾーンインタビューより)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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