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しかしゴール前8.5km、6つ目の、そしてこの日最後の峠に差し掛かると同時に、ランダは勝利へのアタックを決めた。ジロ・デ・イタリアで山頂フィニッシュを2つ制したバスク人が、祖国のグランツールで初めての区間勝利へと突き進んだ。
「ゴール前5kmまできたところで、勝てるぞ、と思った。でもラスト3kmがひどく辛かった。今までのキャリアで最も難しい3kmだった」(ランダ、ゴール後TVインタビューより)
アルもまた、ベテランのスペイン人コンビに、抑えこまれたりはしなかった。アシストたちの懸命の努力の甲斐あり、ロドリゲスとバルベルデに追い付くと、逆にラスト8km、自ら攻めに転じた。
「他の選手たちが、ちょっと、互いに様子を見合っていたように感じた。だけど、僕は、思い切り自分の走りをしたかった。全てを尽くしたかった。だからアタックを打ったんだ」(アル、公式記者会見より)
今年のジロで、アルベルト・コンタドールと渡り合ったアルは、まずは大会前半の立役者、マイヨ・ロホ姿のトム・デュムランとポイント賞ジャージのエステバン・チャベスを振り払った。2度目の加速では、モヴィスターの2人、バルベルデとナイロ・キンタナを切り捨てた。そして、一緒にくっついてきたプリト&モレノさえも、残り6kmで突き放した。完全に1人になると、マイヨ・ロホ目掛けてスピードを上げ続けた。
アンドラの山のてっぺんで、アスタナが二重の喜びを噛み締めた。ランダは区間勝利をつかみ取った。チャベス、デュムランに続いて、同じく1990年生まれのアルがマイヨ・ロホを引き継いだ。この春のジロでは、コンタドールの落車というハプニングのおかげで、25歳の若者は、1日だけマリア・ローザを身にまとっている。今回は、自らの優れた登坂能力で、最も美しいジャージを手に入れた。
「僕が今大会の『ボス』になったかって?いやいや、まだ10日間も戦いは残っている。それに今大会には、本当に強い選手たちが揃っているからね。僕は1日1日を戦っていくだけだよ」(アル、公式記者会見より)
地元アンドラで区間勝利とマイヨ・ロホこそ逃したロドリゲスは、アルから37秒遅れで1日を終えた。総合では27秒差で追いかける。またラファル・マイカが、1分28秒差で総合4位に食い込んでいる。なにより序盤10日間を盛り上げたデュムランとチャベスが、この日も最後までしっかりとしがみついた。いや、むしろ追走のイニシアチヴを取り続けるほどの驚異的な意欲と脚力を証明して……、総合ではそれぞれ3位・30秒差と5位・1分29秒差に堂々居座っている。
一方で「強い選手」の代表格であるはずのツール表彰台3人は、苦しい状況へと追い込まれた。フルームは総合で7分30秒遅れの15位に沈み、ツール→ブエルタの変則ダブルツール制覇はほぼ絶望的になった。休養日に高熱が出たというキンタナも、この日の最終峠で大きく崩れ、総合では3分07秒遅れに後退した。バルベルデはいまだ総合6位・1分52秒差につけているが、「ツールの代償を払うことになってしまった」(チーム公式HPより)と、どうやらいよいよ連戦続きの疲労を感じ始めているようだ。
「グランツールでこんなに難しいステージは戦ったことがない」と、多くの選手が改めて口を揃えた。138kmの短いステージを、首位選手は4時間34分54秒(時速30.120km)、最下位175位の選手は5時間10分01秒かけて走りきった。4人がステージ中に大会を去った。中でもセルジオ・パウリーニョがTV撮影オートバイとの接触で脚を負傷し、レース続行を断念せざるを得なかった。所属チームのティンコフ・サクソは、すでにペーター・サガンがニュートラルサービスのオートバイに跳ねられて、負傷リタイアしている。この日チームは、公開書簡にて、開催委員会ユニパブリックと国際自転車競技連合UCIに対して謝罪と状況改善を求めたばかりだった。パウリーニョの事故直後には、チームオーナーのオレグ・ティンコフ氏がSNSで「大会ボイコットさえ考えている」と発言している。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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