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サイクル ロードレース コラム 2017年8月22日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 第3ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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さらにはミケル・ニエベが、7月のツールでも見せたように、高速テンポで牽引を引き継いだ。人生最後の栄光を追い求めるアルベルト・コンタドールが真っ先に脱落し、ラファル・マイカやイルヌール・ザカリンも振り落とされた。

山頂まで約1km。ついにフルーム本人が加速を切った。例の高速ペダル回転がさく裂し、ただエステバン・チャベスだけがすかさず後輪に飛び乗った。186㎝の長身が幾度も加速を畳みかける背後で、164㎝の小柄なヒルクライマーはまるで影のように、ひたすら張り付いた。フィニッシュまで誘う7.1kmのダウンヒルへも、同時に飛び込んでいった。

一方で「脚の調子は良かったのに、(フルームの加速時に)ポジション取りが悪くて、すぐに反応できなかった」(フィニッシュ後TVインタビューより)というロメン・バルデが、山頂間際で追走に乗り出した。ファビオ・アルも同調した。7月のツールでフルームを大いに揺さぶった2人は、連続ヘアピンカーブの先にちらちらと垣間見えるライバルを捕らえようと、下りを大胆に攻めた。まんまとラスト4kmで合流を成功させる。

4人に絞り込まれた先頭集団は、高速でラスト1kmのアーチを潜り抜けた。区間勝者はこの中から出るに違いない。きっと誰もがそう信じた。そのせいで、ほんの少しだけ、互いに顔を見合わせる時間ができてしまった。

「区間をどうしても勝ちたかったのに……、突然びっくりした。まさか後ろから追いついてくるなんて!」(バルデ、フィニッシュ後TVインタビューより)


上りで少し遅れを取った強豪たちは、下りで勢いを取り戻していた。なんとかチーム内にマイヨ・ロホを留めおこうとダヴィド・デラクルスが奮闘し、やはりリーダージャージに手が届きそうなビーエムシー レーシングチームのニコラス・ロッシュとティージェイ・ヴァンガーデレンが全力を振り絞り、バルデとダブルリーダーを組むドメニコ・ポッツォヴィーボと、なによりニーバリが本腰を入れて下った。

「追いつくために大いに力を使った。ただ僕に残された唯一の勝機は、スプリントを打つことだと分かっていた。だけど、どうやって体力を回復して、どうやってスプリントに持ち込んだのか、自分でもさっぱり分からない。スプリントを仕掛けたあと、少し速く飛び出しすぎたかな、ともちょっとだけ考えた。でも、とにかく、幸いなことに、僕は勝てたんだ」(ニーバリ、公式記者会見より)

こう後に振り返ったニーバリは、追いついただけでなく、直後に矢のように飛び出した。そのまま猛スピードでフィニッシュラインを先頭で駆け抜けると、2010年第20ステージ以来2度目のブエルタ区間勝利を手に入れた。ただし、あくまでも記録の上であり(実際に区間を制したエセキエル・モスケラの成績が後に削除された)、区間勝者としてブエルタの表彰台に上ったのは、実は人生で初めての経験となる。3大ツールの全てで総合優勝を果たした史上6人目の王者が、ついにジロ区間7勝、ツール区間5勝と合わせて、本当の意味で「3大ツールの全てで区間勝利を取った」選手となった。

「なによりボーナスタイムが欲しかった」と語るニーバリが望み通りボーナスタイム10秒を手に入れた背後では、デラクルスが2位=6秒、フルームが3位=4秒をそれぞれ上乗せした。その結果フルームが、ダクルス、ロッシュ、ヴァンガーデレンをわずか2秒差で退けて、総合首位に浮上した。まさしく中間ポイントでのボーナスタイム3秒を収集の成果だった。

「まさかマイヨ・ロホがこんなに早く取れるとは思ってもいなかった。嬉しい驚きだし、非常に誇りに思う。最後まで守れるかどうかは分からない。なにしろ激しい戦いが今後も繰り返されるはずだ。間違いなく、この先は出来る限りのボーナスタイムを、取っていかなきゃならないだろう」(フルーム、公式記者会見より)

フルームは2011年大会の第10ステージ後に、赤いジャージをわずか1日だけ着用したことがある。その後2度とマイヨ・ロホを取り戻すことなく、上述の通り13秒差で優勝を逃した。また2015年ツールでは、大会3日目にリーダージャージを獲得するも、やはりわずか1日で手放している。この時は第7ステージ後に、改めてマイヨ・ジョーヌを手に入れると、パリまでもう2度と脱ぐことはなかった。果たして今回のブエルタでは、どんな運命がフルームを待ち受けているのだろうか。

わずか2秒という僅差で3人が続き、31秒遅れで初日を終えたニーバリは、この2日間で10秒差の総合5位にまで順位を上げてきた。絶不調だったツールとは違い、絶好調のチャベスも6位11秒差につけている。またアルが7位38秒差、ポッツォヴィーヴォが9位43秒差、バルデが10位48秒差と続く。先頭集団には食い込めなかったものの、イェーツ兄弟もアダムが8位39秒差、サイモンが11位48秒差とまだまだ上位に留まっている。一方のコンタドールは早くも総合3分10秒の遅れを喫した。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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