村上宗隆、退路を立つ覚悟の短期契約

侍ジャパンでの村上宗隆

再建中のホワイトソックスが、村上宗隆と2年総額3400万ドル（約54億円）で契約合意した。長期ではなく短期で勝負し、2年後の移籍市場で評価を最大化する狙いが見える。

MLBネットワークなど、米メディアによると一塁手としての起用が見込まれている。守備の負担を抑え、打撃に集中しやすい配置でもある。三塁も編成が固まり切っておらず、状況に応じて守備位置を動かせる陣容は本人にも球団にも利点がある。

AP通信によれば、村上は球団手配の通訳が付き、日米間の航空費の支払いも受ける。さらに本人の同意なしにマイナーへ送れない条項がある。再建期のチームで安定して出場機会を得ながら、メジャー投手のスピードボールや配球、異国の環境に慣れる時間を確保しやすい。

再建球団を選ぶ利点がある。優勝争いの球団では、数週間の不振が続けばスタメン落ちがチラつく。一方でホワイトソックスでは、じっくりと腰を据えてメジャーの球威と配球に順応をはかり、数字が上向くまでの過程も含めて試合に出場し続けることができる。

一塁中心でもDHや三塁での出場機会もあれば、体の負担管理もしやすい。日程はNPBより移動が多く、対戦投手の情報量も増える。短期間で環境に慣れることが、2年後の評価へ直結する。

金額の内訳も明確だ。AP通信によれば、契約金は100万ドル（約1億5800万円）で、年俸は2026年が1600万ドル（約25億円）、2027年が1700万ドル（約27億円）。

さらに2026年のタイトルに連動した出来高があり、MVP受賞で2027年年俸が100万ドル上積みされる。投票2位または3位で50万ドル（約7880万円）、4位から10位で25万ドル（約3940万円）、新人王で25万ドル（約3940万円）の増額も設定された。

ホワイトソックスにとっては、金額以上の投資になる。ロイター通信によれば、ヤクルトへポスティングの譲渡金657万5000ドル（約10億円）を支払う必要があり、年俸と合計した総額は4057万5000ドル（約64億円）に達する。それでも獲得に踏み切ったのは、昨季60勝102敗に沈んだチームに長打力が不足していたためだ。

短期契約の最大の狙いは、2年後の大型契約だ。守備の低評価と三振の多さが需要を狭めた一方、この契約で2027年シーズン後に再びFA市場へ出られる。メジャーのパワーピッチャーに対し、村上が強い打球を増やし、対応力を示せば、27歳で迎えるFAで大きな契約に直結する。

結果が出なければ、烙印を押される。退路を立つような覚悟の短期契約だ。再建チームでの出場機会、一塁中心の起用、2シーズンで周囲の評価を高める。三冠王はシカゴから、新たな挑戦をはじめる。

文／写真：山田結軌（MLBジャーナリスト）