AIが予測した2024年シーズン成績の答え合わせ：菊池雄星編

AI予測の答え合わせ：菊池雄星編

J SPORTSでは2024年シーズンの開幕前、AIによる選手成績を予測するコラムを掲載した。今シーズンも3月に掲載する予定だが、それに先立ち、昨季のAI予測がどれほど当たったのか？答え合わせをしてみよう。

★AIが予測する菊池雄星のMLB2024シーズン成績
https://news.jsports.co.jp/baseball/article/20190310226729/

これは少々乱暴なカテゴライズになるが、2024年シーズンをプレーしたメジャーリーガーを勝ち組と負け組に分けるとしたら、菊池雄星は間違いなく勝ち組に組み込まれるだろう。

何しろ、シーズンオフにエンジェルスと、3年総額6367万5000ドル（約97億円）の大型契約を結んだのだから、彼を勝ち組と言わずしてなんと言おうか。

そして、この大型契約に昨季、菊池がアストロズへ移籍した後のパフォーマンスが大きく物を言っているのは、誰の目にも明らかである。しかし、シーズン前に、菊池の2024年シーズンを予測したAIにとって、この移籍後のアストロズでの活躍は、計算外だったに違いない。

というわけで、まずは2024年の春先にAIが披露したブルージェイズ（当時）の先発左腕の予測を振り返ってみよう。

登板28.4 先発28.4 投球回146.2 防御率4.99
勝利7.5 敗戦9.9 セーブ0 奪三振155.6 与四球61.2 与死球17.4
自責点81 失点87.1 被安打134.3 被本塁打21.9
奪三振率9.58 与四球率3.77 被本塁打率1.35 被打率.240
BABIP.311 FIP4.69 WHIP1.34

そして、これに対し、実際に菊池が出した答えはこちらである。

登板32 先発32 投球回175.2 防御率4.05
勝利9 敗戦10 セーブ0 奪三振206 与四球44 与死球2
自責点79 失点85 被安打167 被本塁打25
奪三振率10.55 与四球率2.25 被本塁打率1.28 被打率.245
BABIP.312 FIP3.46 WHIP1.20

当初、問題視された与死球爆上がりの大胆予測については後述するとして、全体を見渡すと負け越すところは的中させており、被打率とBABIPも、ほぼほぼ当たっている。

だが、より本人自身のパフォーマンスに直結する投球回、防御率、奪三振、与四球、奪三振率、与四球率、そしてWHIPはAI的に見ると総じて残念な結果に終わっている。

しかし、ここに菊池が昨季途中にアストロズへ移籍するまでの成績を記すと、必ずしもAIの予測が外れていたわけではない。。

防御率4.75 奪三振率10.12
与四球率2.33 被本塁打率1.32 被打率.272
BABIP.344 WHIP1.34

もし、菊池がブルージェイズに残留していたとしたら、AIはかなりいい線を行っていた可能性が高く、防御率はニアピン賞もので、WHIPに至っては完全的中だったのである。

しかし、制球難により四球が増すというAIの見立ては、どちらにせよ否定されることになり、もちろん菊池は与死球王になどならなかった（2024年シーズンのアメリカンリーグにおける最多与死球はクリス・バシットとタナー・ハウクの16）。

仮に菊池がAIの予測通り、のべ17人の打者に痛い思いをさせていたとしたら、昨季ア・リーグの与死球王になっていたのだが、実際に菊池の与えた死球は、規定に達した投手では最少タイの2。菊池は制球難どころか、かなり制球の優れた投手だったのである。

だが、少し厳し目のことを書くと、昨季の菊池は契約最終年であり、シーズン途中のトレードも視野に入れて、AIは予測を立てるべきだったと言えなくもない。

確かに移籍により、そこまで成績が好転するのを見抜くのは、予測というよりは予言に近い先見力かもしれないが、最新の人工知能には、それくらいの慧眼を期待したいものである。

ちなみに、アストロズのユニフォームを着た菊池の成績は以下の通りである。

登板10 先発10 投球回60.0 防御率2.70
勝利5 敗戦1奪三振76 与四球14 与死球0
自責点18 失点22 被安打42 被本塁打8
奪三振率11.40 与四球率2.10 被本塁打率1.20 被打率.188
BABIP.241 WHIP0.93

これらは何れもエリートレベルの数字であり、仮に菊池が１シーズンを通してこのパフォーマンスを維持していたとすると、防御率（リーグ2位）、奪三振率（同1位）、与四球率（同8位）、被打率（同1位）、BABIP（同4位）、WHIP（同3位）はリーグ屈指の数字。

さらにK/BB（奪三振と与四球の比率）も5.43でリーグ5位にランクインと、サイ・ヤング賞レベルの成績を残していたことになる。

この辺を加味した上で、AIが菊池の2025年シーズンをどう予測するかは、とても興味深いところである。