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管理栄養士・長坂聡子さん
プロ野球選手のあまり知られていない裏話として、体重コントロールの難しさがある。彼らにとっては身体の重さが少し変わるだけで、その繊細なパフォーマンスはもとより、疲労度やスタミナにも影響するからだ。
私たちも、たくさん活動したり、食べたり飲んだりすると、一時的に体重が大きく変動することがあるが、選手たちはシーズン中、ストレスのかかる環境下で、ものすごい量の練習と試合をこなしているのだ。コンディショニングと一言で言っても、その難易度は想像を超える。
これから夏場に向けて、多くの選手は体重が落ちてしまわないようなコンディショニングに取り組む。そこで今回も、楽天イーグルスで選手たちを専任サポートする管理栄養士・公認スポーツ栄養士の長坂聡子さんに話を伺った。
実はひとたびシーズンが始まると、減量が必要な選手は楽天ではほとんどいないと長坂さんは言う。「プロ野球の競技特性もあると思いますが、体重が落ちていく選手の方が多いんです。特に新人選手は、これほどのトレーニングや、試合をしながら1年を過ごした経験がない選手がほとんどなので、夏場も乗り切って戦い続けるためには、ある程度の体重があった方がいい」。
「もちろん、選手それぞれの体質にもよりますし、シーズンを戦うための体重のコントロールよりも、まずはプロ野球選手としての身体づくりからスタートする必要がある場合もあります」。
一方で中堅やベテランになると毎年のように技術と併せて、自身のコンディションを見つめ直し、体重もそれぞれで増減させてシーズン入りをしてくるのだという。
「自分がベストだと思える体重はその年によって異なるため、過去数年分の体重や、除脂肪体重のデータを見ながら、この時はこうだった、この時にケガをしたなど、選手の話を聞きながら一緒に考えています」。
「特にベテランは、自分自身で1年間戦うためにはどのような身体が良いのかわかっている選手が多いので、ただ体重をどうするか、ということだけでなく、もっと具体的に筋肉量や脂肪の増減などについて話すことも多いですね」と長坂さん。
ただ、野球選手には大柄な選手から小柄な選手まで、様々な体型のタイプがいる。アスリートなので、筋肉質で体脂肪率が一般人よりはるかに低いと想像しがちだが、これも選手によって異なる。むしろ、ひと桁パーセントの場合は、体脂肪が少なすぎることによるリスクが懸念されるという。
「競技特性や試合日程などから考えると、野球に関しては体脂肪率はひと桁である必要はないと思うほどです。というのも練習や試合も長いうえ、1週間に6試合戦って、さらに移動もあります。そうした環境下ですから、脂肪もエネルギー源にもなるので、スタミナ維持のためにも、ある程度の体脂肪率は必要なのではないかと」。
「これももちろん選手それぞれですし、特に外野手など守備範囲も広く、速く走ることも必要なポジションの選手は、スタミナとの兼ね合いにもなると思います」。
逆に、パワーヒッターで打力が何より求められている選手であれば、体重が減ることでへばってパワーが落ちてしまわないよう、筋肉量が重要なのはもちろんだが、体脂肪量はあまり気にせず、体重の変動に注意しているのだそう。
また、投手の場合は1人ひとり繊細な投球フォームを操るため、身体が変わると球のキレにも直結してしまう。そのため、選手の感覚を何よりのプライオリティに置いたうえで、体重や体脂肪率はどれくらいが適しているのか話をしながら先発、中継ぎなどタイプに合ったウエイトコントロールの方法を探るのだという。
田中和基(中央左)
なかなか具体的な選手名は明かせないとしながら、最後に1人だけ教えてくれたのは田中和基だ。キャンプから打球の強さが話題になり、オープン戦でも存在感を発揮。シーズンに入ってからも、少ない打席数ながら5月3日は決勝の2ランホームランを放つなど、劇的シーンを演出した。しっかり準備をしてきたことが伺え、今季その輝きが印象的な選手の1人だ。
長坂さんも「今年は本当に違いましたね。オフに2~3キロ増量して開幕に備えていたのですが、それを今も落とすことなく、しっかりキープできています。増量したことについても、本人が『自分はこういう選手だと思うので、こういう風に体重を増やしました』と、自ら話してくれました。これまでも見てきて、すごく意識が変わったなと思う選手の1人です」と目を細める。
長坂さんは選手を見かけては、コンディションについて声掛けをしているが、選手たちからも「体重が…」と話かけてくれることが増えたという。一軍と二軍ともに担っているため、サポート内容は多岐に渡る上、メニュー管理だけでも大仕事だが、長坂さんは1人ひとりとのコミュニケーションを大切にしながら、それぞれが常により良いコンディションになるよう、日々心を砕いているのだ。
取材・文:松山ようこ/写真提供:東北楽天ゴールデンイーグルス
松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
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