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ベーブ・ルースとの成績を比較
大谷翔平といえば、その驚愕の二刀流パフォーマンスを伝える上で、現地メディアでは、何かとベーブ・ルースを引き合いに出すのが常套手段となっているのは、日本でも良く知られていることである。
歴史上、二刀流選手としての大谷の比較対象となり得る選手がベーブ・ルース唯一人しかいないのだから、それもやむなしということなのだろう。
しかし、『ニューヨークタイムズ』は現地19日付で電子版に掲載した記事で、「オオタニはルースの生まれ変わりかと言うと、物事はそんなに単純ではない」と、これまでとは幾分異なるテイストでこの2人を比較し、論じている。
同紙は「ショウヘイ・オオタニは“新たなベーブ・ルースか”、あるいは“全く新しい別もの”か?」と題した記事を掲載。
そのサブタイトルを「ロサンゼルス・エンジェルスの二刀流スターは、数え切れないほどヤンキースのレジェンドと比較されているが、彼らの足跡はかなり異なっている」とし、次のように1世紀を隔てた2人の二刀流スターについて伝えている。
記事では冒頭で、「“21世紀のベーブ・ルース”“現代のベーブ・ルース”“ベーブ・ルース以来最高の二刀流選手”などなど、水曜に今季40号本塁打を放ったショウヘイ・オオタニの比較対象を探すべく歴史を振り返ると、ファンやスポーツライターは大体において唯一人、ベーブ・ルースのみに辿り着く」とした。
そして、前述のように「オオタニはルースの生まれ変わりかと言うと、物事はそんなに単純ではない」とした上で、ベーブ・ルースのキャリア序盤に着目。
「1915年から1917年の3シーズン、ルースはボストン・レッドソックスでフルタイムの先発投手だった」とし、「時折代打で出場し、そのパワーで人々を驚かせることはあったが、当時彼の本業は投手だった」と、二刀流選手としてキャリアをスタートさせた大谷との違いを指摘。
当時、投手を本業としていたルースは1917年に打率.325をマークし、長打も放っていたことから、「ルース自身、もっと打撃にフォーカスしたくなった」ため、二刀流に転向し、記事では「オオタニとの比較はここから始まる」としている。
1918年と1919年の2シーズンでは、ルースの登板機会が1917年以前と比べて半減しつつ、打席数が倍増したことから、記事ではこの2シーズンのみ、「真の二刀流プレーという観点から、ルースによるオオタニ的なシーズンだった」としている。
そして、二刀流選手としてのルースの記録を「1918年に打者として.966 OPSに11本塁打という記録を残したルースは、1919年になると1.114 OPS、29本塁打をマークし、投手としてはそれぞれのシーズンの防御率を2.22そして2.97とした」と簡単に振り返った。
◆ベーブルース 1917~1920年成績
・1917年:326.1回、24勝13敗、防御率2.01、128奪三振/142打席、打率.325、 2本塁打、 12打点
・1918年:166.1回、13勝 7敗、防御率2.22、 40奪三振/380打席、打率.300、11本塁打、 66打点
・1919年:133.1回、 9勝 5敗、防御率2.97、 30奪三振/542打席、打率.322、29本塁打、114打点
・1920年: 4.0回、 1勝 0敗、防御率4.50、 0奪三振/616打席、打率.376、54本塁打、137打点
◆大谷翔平 2021年成績(8月20日現在)
・2021年:100回、8勝1敗、防御率2.79、120奪三振/477打席、打率.272、40本塁打、88打点
その上で、「オオタニの2021年はこれら何れのシーズンとも一致しない」とし、次のように新旧の二刀流スターを比較している。
「オオタニは今年、24試合に先発登板するペースでプレーしているが、これはフルタイム投手としてのルースよりは少ないながら、(二刀流でプレーしていた)パートタイム投手としてのルースよりは多い」。
「そして、オオタニは600打席を上回るペースでプレーしているが、これはルースが投手としてもプレーしていたどのシーズンよりも多い」。ただ、ルースに対して公正を期すために言うと、オオタニはほとんど指名打者としてのみ起用されているため、彼にはルースがしたように守備の重荷は加わらない。
オオタニのピッチングの成績は8勝1敗、防御率2.79と、ルースがフルタイム投手としてプレーしていた頃と同じように、リーグトップに近い数字となっている。打者として、オオタニは本塁打でメジャーを、長打率でアメリカン・リーグをリードしており、これも確実にルース的業績と言える」。
ルースはヤンキースへ移籍した1920年以降は、実質的に打者に専念しているため、前述したように二刀流選手として大谷と比較できるのは、上記の2シーズンのみ。
時代が違うため、単純に比べることはできないが、それでも当時のルースの成績と隣り合わせで見ると、今季の大谷の二刀流選手としての数字が如何に傑出しているかは理解できる。
なお、記事では1920年以降のルースについて、「打者としてのルースの猛烈な進化の理由がピッチングを止めたことに完全に、あるいは部分的に、起因しているのかどうか100%定かではない」とし、「彼は1920年に25歳だったが、これは選手のスタッツが急激に向上する年齢だ」とした。
その上で、「仮に1920年代のルースが数日おきに投手として登板していたとしても、当時の彼は本塁打を量産していただろうと推測する者もいる」と、何となく、やんわりとレジェンドを擁護している。
今の大谷と比較してしまうと、たとえベーブ・ルースであれ、そうした援護射撃的な記述を必要とするということであろう。
J SPORTS 編集部
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