人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

バドミントン コラム 2023年7月3日

五輪レース好スタートの保木/小林、中国戦の大逆転負けから奮起

バド×レポ by 平野 貴也
  • Line

大きな悔しさからのスタートを、エネルギーに変えて進む。バドミントン日本代表、男子ダブルスの保木卓朗小林優吾(トナミ運輸)は、パリ五輪出場権獲得レースが始まった5月、4週目に迎えたシンガポールOP(BWFワールドツアースーパー750)で約1年ぶりとなるワールドツアー優勝を飾った。保木は「スディルマンカップで悔しい負け方をした。そこから(自分たちの心境が)どうなるのかと思ったけど、奮起できた。やってやるぞという気持ちになれて、一つひとつの試合に気持ちを込めてやることができています」とその前にあった悔しいスタートに触れた。

保木/小林ペア

保木/小林ペア

■スディルマン杯で味わった「あと1点」届かぬ悔しさ
五輪レースの初戦だったスディルマン杯は、男女混合の国別対抗戦。5種目を戦い3勝を競う方式だ。日本は、準決勝で中国と対戦。2-1で回った第4種目が、男子ダブルスだった。この種目のエースとして起用された保木/小林は、世界ランク5位のリュウ・ユチェン/オウ・シュァンイを相手にファイナルゲーム19-13とリード。追い上げを受けながらも20-16でマッチポイントを握った。4点リードの中、1点取れば、日本の勝利。勝算の高い状況になったが、徹底して前に出てきた中国ペアに押し込まれ、まさかの6連続失点で20-22の逆転負け。勢いを失った日本は、最終種目の女子ダブルスも敗れて2-3で逆転負けを喫した。相手は昨年に組み替えたペアだが、リュウは、18年の世界選手権金メダリスト。21年東京五輪でも銀メダルを獲得している実力者だ。小林は「あの場面で思い切りできなかった自分たちにも課題は感じましたけど(193センチの長身を誇る)リュウ選手があの場面でも冷静に前に突っ込んできて、自分たちのサーブ周りをいなしながら、次の球を狙ってきた。場数を多く踏んでいる選手に及ばなかったなと感じました」と中国のトップクラスの底力を感じさせられた瞬間を振り返った。

■レース開始も揺るがぬ自信、小林「昨年、想定して緊張感をプラスしていた」
大きなプレッシャーの中で、チームを勝利に導く1点を取れなかったことが、悔しくないわけがない。しかし、その後にシンガポールOPを優勝できたこともあるのだろうが、2人に動揺は見られなかった。
小林は、次のように話した。
「今は、良いコンディション。これをキープできれば勝てると思っていたし、シンガポールで優勝できて、これで合っているんだと自信になった。このコンディションをキープすれば、これからも決勝進出や優勝を狙える。今は地力を出せば勝てるし、それで勝てなかったら相手が良いんだと割り切った気持ちでいけば、自ずと良い結果が出るかなと思う。昨年、レースを想定して自分に緊張感をプラスしてやってきた。五輪レース序盤は、その練習が生きて自信になった」
これまでは、敗れれば自責のコメントが目立ち、ナイーブな一面を見せていた彼だが、どっしりと構え、結果に左右されずに突き進む覚悟が感じられた。

■小林の新たな調整法は、下半身強化
プレー内容でも、進化の手応えはある。小林は、過密化が進む国際大会に対応するため、22年秋からコンディションの調整方法に工夫を凝らしている。4月に明かしたのは、下半身強化への特化だった。以前は上半身、下半身とも強化していたが、疲労が蓄積してフットワークやジャンプが鈍ると、上半身のパワーでスマッシュを打つため、上半身だけが肥大する現象が起きていたという。そこでトレーニングは下半身強化に特化。小林は「昨夏のジャパンOPや世界選手権では体が重かった。上半身のトレーニングをやらないことで、力みがなくなった。ジャンプも跳べるようになり、動きにメリハリがついた。以前は、力いっぱいに打っていたけど、今は脱力して同じ速度で打てている」と手応えを語った。
安定感を増した小林の強打を生かすのは、保木のゲームメークだ。映像を見て相手を分析。自身がレシーブから前衛に入るパターンを磨いているが、ほかにも「僕たちは、ディフェンス場面が弱いイメージがあると思いますけど、レシーブでも勝てる部分を作っていかないといけない。球回しでいかに相手を崩して、小林に(縦関係の陣形へ)ローテーションできるかが課題」と攻撃へ移行するための守備強化に余念がない。

■世界選手権を制した21年は「別の人がやっていたのかなという感覚」
保木/小林の「ホキコバ」は、東京五輪後の21年秋に急激に台頭したペアだ。同年12月にはBWFワールドツアーファイナルズと世界選手権で優勝。世界に名前を売った。しかし、22年は苦しみながらも大混戦の男子ダブルスで上位生存競争に耐える格好となった。2つの経験を経て、今季は自然体で自分たちの力を信じて五輪レースに臨んでいる。保木は、4月のインタビューで以下のように振り返った。
「21年後半は、今になると、自分たちがやっているような感覚ではなくて、別の人がやっていたのかなという感覚。あの時は何をやってもうまく行ったし、どんな相手にも勝てると思った。あそこで株を上げ過ぎた分、22年は皆さんが期待してくれたほどの結果が出なくて、ダメだなって思われていたかもしれない。でも、22年に我慢してコンスタントにベスト8に入ろうと考えながらやっていたのが、多分、どのペアにとっても普通(の状態)。21年は、本当に奇跡。そこを考えずにコンスタントに行くことがレースの中で一番大事と思う。勝って満足していたら、レースはあっという間に終わる。それが東京五輪のレースだった。前半にインドネシアOPでベスト4に入って、世界選手権で2位になって。どこか安心して、急激に結果が出なくなった。勝っても負けても、もう1回という気持ちが大事」

■7月の3大会でも安定感ある戦いを見せられるか
7月は、3つの国際大会に出場する。初戦は、4日開幕のカナダOP(スーパー500)。中国や韓国、マレーシアなどの上位ペアが不在で、第1シード。保木は「500のグレードでほかの国の上位選手が出てこないドロー。優勝を全力で取りに行きたい。『全集中』で向かっていければ」と意気込みを語った。続いて18日開幕の韓国OP、そして25日開幕のダイハツジャパンOPと続く。保木は、連戦でコンディション調整が課題になると指摘しながらも「競技をやっている中で、取ってみたいタイトルの一つ。狙っていきたい」と自国開催の大舞台に意欲を示した。着実に一歩一歩、たくましく、初の五輪出場へ歩を進めるつもりだ。

文:平野 貴也
平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
バドミントンを応援しよう!

バドミントンの放送・配信ページへ