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バドミントン コラム 2023年4月27日

バドミントン桃田「あの舞台にもう一度」、新スタイルで2度目の五輪目指す

バド×レポ by 平野 貴也
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■守備型から攻撃型への変化に挑戦

桃田賢斗(NTT東日本)

男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)

這い上がる手がかりは、プレースタイルの変化だ。東京五輪後、桃田は「復活」を目指していた。事故以前の桃田は、抜群のコントロール力を宿したレシーブが最大の武器。相手にコート奥から強打を打たせ、ネット前に返球。前に走らされて対応が遅れる相手から主導権を奪うスタイルだった。しかし、事故後は相手の強打を拾えず「打たせている」はずが「打たれている」状況に変わってしまった。周囲から「守ってばかりいないで攻めるべきでは?」と見られるようになったが、東京五輪から1年後の昨夏、東京で行われた世界選手権で2回戦敗退を喫した際も、桃田は「スマッシュは自分の持ち味ではないと思う」とプレースタイルの変更に否定的だった。
しかし、翌週のジャパンOPも1回戦敗退と厳しい結果。同年秋の欧州遠征をキャンセルして国内に留まった桃田は、12月の全日本総合選手権に出場して優勝したが、「打たせる」から「打たせない」にプレースタイルが変わっていた。強打を打とうとすると体勢に無理が生じる球を相手コートに送った。そして、23年3月のドイツOPでは、自分が上から打つラリーを多く展開。日本代表が主戦場とするBWFワールドツアーの大会はスーパー500以上で、ワンランク下のスーパー300の大会ではあったが、西本を破って準決勝に進出。プレースタイルを変えようとしているというよりは、考え過ぎず、シンプルにプレーした結果だと言う桃田だが「守ってばかりだと、今の自分が持っているものでは厳しい。こっちが攻撃することで、相手も十分な体勢で打つことは少なくなる。そういう場面を増やしていければ。前のプレー(スタイル)をずっと引きずっていても、何も生まれない。また新しい自分のスタイルを(作って)、前の自分を超えて行けるように、プレーが出来たらいい」と活路を見出すためにラリーの狙いを変えていることを明かした。

■スタイル変化で生まれる課題の解消が浮上のカギか

攻撃的なスタイルと言えば、スマッシュなど速くて強い球をイメージしがちだが、桃田の場合は違う。好調時はレシーブのアンダーハンドストロークで見せていたコントロールを、オーバーハンドを多用する攻撃的なラリーの中で生かす形だ。強打と思わせ、足が止まる相手に対し、ネット前へスッと落ちる球で主導権を奪う。桃田は「スマッシュで決めるというよりは、落下地点に早く入る。ネット前もそうですし、後ろの球も、自分が落下地点に早く入ることで相手も狙い球を絞れなくなる。そこでちょっとずつタイミングを外して、長い試合に持って行って、ずっと自分が主導権を握るようなプレーが理想」と進化形を描いた。ただし、強打も交えなければ、コート前方をケアされて速い返球を狙われる。強打した場面でカウンターを狙われる場面もあり、まだ新スタイルでの勝ち方を探っている段階だ。ドイツOP準決勝では、中国の新鋭リー・シフェンに0-2で完敗。続く全英OPは、初戦で敗れた。新しいスタイルに挑戦する中で生まれる課題を解消していくことが、浮上のカギになりそうだ。
後がない状況での、難しい挑戦だ。だが、冒頭に紹介した、2度目の五輪出場を目指す気持ちの表現には、続きがある。
「あの舞台にもう一度立ちたい気持ちはありますけど、そんな先も見ていられないので、できることを一つひとつ、やっていけたらいい。もう、考え過ぎて、自分を苦しくさせるのもいいかなと。しんどいことばかりですけど、その中でも自分なりの楽しみ方を見つけて行けたら、また変わって来るんじゃないかと思っています」

難しいと分かっていることに挑戦する。大人になれば、苦しいばかりの道に見えるが、その道に輝く目で挑んだ時もあったはず。スタイル変更を主とした試行錯誤を楽しめるか。世界ランク20位台、日本勢4番手。誰の目にも困難に映るスタートから、桃田は2度目の五輪出場を目指す。

文:平野 貴也
平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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