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バドミントン コラム 2022年9月8日

山口が2週連続優勝、西本が28歳で初Vを飾ったジャパンOPの価値

バド×レポ by 平野 貴也
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山口茜選手

日本のバドミントンファンに、これ以上ない満点回答を示した。9月4日に閉幕した国際大会のダイハツヨネックスジャパンオープンで、女子シングルスの山口茜(再春館製薬所)と男子シングルスの西本拳太(ジェイテクト)が優勝。混合ダブルスでは、東京五輪で銅メダルを獲得している渡辺勇大東野有紗(BIPROGY)が準優勝した。日本では前週に東京で世界選手権が開催されたが、上位候補となりながらメダルを逃して心身のエネルギーを失い、ジャパンオープンは早期に敗退に終わった日本選手もいた。大会序盤は、最終日まで日本選手が勝ち残らない可能性も考えられたが、終わってみれば3種目で決勝に残り、4000人を超す観衆は、楽しみにしていた日本と世界の戦いを堪能することができた。

■「楽しむ」山口、無敵の強さに世界の強豪がお手上げ

特に、2週連続で自国開催の国際大会を優勝した山口のパフォーマンスは、圧巻だった。準々決勝では、プレースピードに定評のあるポンパウィ・チョチュウォン(タイ)の高速アタックを鋭い反応でレシーブ。チョチュウォンは「彼女はとても速くて強かった。相手の速い展開で、私の方がミスをした。山口選手はディフェンスもすごい。良い攻撃をしても返されてしまう。新しい戦略を見つけてトライしないといけないけど、今は分からない」とお手上げだった。準決勝は、世界選手権の決勝と同カード。ファイナルゲーム24-22という大接戦で陳雨菲(チェン・ユーフェイ=中国)を再び撃破した。決勝戦では、世界選手権で銅メダルを獲得したアン・セヨン(韓国)を21-9、21-15のストレートで一蹴。特に、トップスピードで仕掛けたという第1ゲームでは無敵の強さを披露し、観衆を驚かせた。世界選手権を連覇、つまり全日程を消化したばかりで疲労もある中、自国開催で観客の応援が嬉しかったという山口は「これ以上ない結果だと思うので、すごく良かったと思いますし、苦しい場面だったり、今週も最後まで楽しむということを貫き通せたというのが、すごく良かったなと思います」と手応えを示した。

西本拳太選手

■期待値超える大健闘、快進撃の西本が全盛期到来を宣言

期待に応えたのが山口であるならば、良い意味で期待を裏切ったのが、男子シングルスの西本だった。初戦で世界ランク10位のラクシャ・セン(インド)を破ったのが、快進撃の始まりだった。相手の速射砲のようなドライブに対し、下がって距離を取ることなく応戦。相手の得意分野で対抗できることを示すと、ヘアピンショットでネット前にシャトルを沈め、相手が高く上げてきた球を積極的に強打。第2、3ゲームを奪って逆転勝利を収めた。さらに2回戦でも第7シードのジョナタン・クリスティー(インドネシア)に1-2で逆転勝ち。連日、大激戦を制する西本劇場はその後も続き、会場の大阪・丸善インテックアリーナを大いに盛り上げた。準決勝では、前週の世界選手権の初戦でも破った世界ランク3位のアンダース・アントンセン(デンマーク)に連勝。決勝では、世界ランク5位の周天成(チョウ・ティエンチェン=台湾)にも2-1で競り勝ち、28歳にしてワールドツアー初優勝を飾った。苦手だった低空戦を克服し、上位ランク選手と互角に戦える自信を得た西本は、30代を間近にして「僕の全盛期は、これからなので」と繰り返した。期間中、毎日、日本のファンに良い驚きを与えた、今大会のヒーローは、間違いなく彼だった。

渡辺勇大選手/東野有紗選手

■渡辺/東野は世界王者に雪辱、2週連続の銀メダル

渡辺/東野は、世界選手権に2週連続の銀メダル。決勝戦では、連覇を果たしたデチャポル/サプシリー(タイ)から第1ゲームを先取し、第2ゲームも20-19でマッチポイントを迎えた。しかし、そこから3失点でひっくり返されると、ファイナルゲームでは序盤に5-11と大きく引き離され、終盤の追い上げも届かず18-21で敗れた。渡辺は「どんな大会でも決勝の舞台に立つことは、すごいこと。でも、どんな大会でも結果を残したくて、僕らはやっている。そうである以上、負けてしまっては……。(準優勝にも)価値はありますけど、優勝の方がさらに価値が高い。そういうところを目指してやっていると再確認できましたし、悔しいと思えたことは、僕にとって嬉しいこと」と独特の表現で悔しさを言い表した。ただ、今大会では準決勝で大きな1勝を挙げた。相手は、世界選手権の決勝で敗れた世界ランク1位の鄭思維/黄雅瓊(ツェン・シーウェイ/ファン・ヤーチョン=中国)。4月のアジア選手権から7大会連続で優勝を飾っていた、この種目最強のペアだ。前週の反省から大きなレシーブではなく、小さく低く相手コートに返球することで、攻撃場面が増加。コンディションや戦い方次第で勝てる立ち位置にいることを証明してみせた。24年パリ五輪の金メダルを目指す渡辺/東野にとっては、このペアの撃破は、避けては通れない一つのテーマと言えるだけに、価値ある勝利となった。

奈良岡功大選手

■21歳の奈良岡、2回戦敗退も世界ランク3位に大善戦

ほかでは、男子シングルスの常山幹太(トナミ運輸)、女子ダブルスの松本麻佑永原和可那(北都銀行)がベスト8に残った。常山は、東大阪大学柏原高校時代を過ごした「第2の故郷」大阪で躍動。恩師やかつての仲間、後輩たちが見守る中で上位をうかがう健闘を見せた。また、同じ種目では、日本にとってキラリと輝く試合があった。初出場となった21歳の奈良岡功大(IMG)は、2回戦敗退となったが、世界ランク3位のアンダース・アントンセン(デンマーク)に大善戦。技巧派でラリーを組み立てていくのが基本的なプレースタイルだが、今大会は挑戦者らしく果敢に強打を打って仕掛けた。第2ゲームを取り返すと、ファイナルゲームは終盤に19-17でリードする展開に持ち込んだが、4連続失点で敗戦。奈良岡は「守っていたら余計に後手に回ったと思う。(攻めて)行った方が可能性はあると思いました。これからの成長につながると思うので、行きましたけど、あれ(スマッシュ)は入ってほしかったですね」と最後に攻撃を仕掛けたところで、自身の持ち味であるクオリティーの高さが出せなかった場面を悔しがった。しかし、24年パリ五輪までに日本のエースとなって世界と戦える可能性を示し「相手は世界ランク3位でしたけど、これくらいできると分かった。あとは、ここから、勝てるかどうか。ちょっとした(差の)部分が大きいと思うので、練習の中でどうやって、こういう場面をイメージして対策するか。これから突き詰めていきたいです」と経験を糧に飛躍するイメージを描いた。

世界選手権と2週連続での同国開催による選手のコンディション調整の難しさは見られたが、ジャパンオープンは日本で唯一、世界トップクラスの真剣勝負が見られる大会。その舞台において3種目で決勝進出と躍進した日本代表の姿を見たジュニア世代から、後を追いかける選手が出てくれば、彼らの見せた活躍と試合は、より大きな価値となる。

文:平野 貴也
平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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