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バレーボール コラム 2025年5月20日

高橋藍、シーズンラストゲームの最後にショートサーブを選んだ理由

バレーボールコラム by 坂口 功将
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クラブシーズンを戦い終えた高橋藍(サントリーサンバーズ大阪)

『大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)』の余韻が冷めやらぬ中、大阪と京都を舞台に開催された『アジアチャンピオンズリーグ男子ジャパン2025』。クラブシーズンの集大成となるこの大会に参加したサントリーサンバーズ大阪の高橋藍(高ははしご高)は最後の瞬間、心の中でしたり顔を浮かべていた。

世界ナンバーワンのクラブを目指す。そのビジョンを掲げるサントリーに今季入団した高橋。昨年に日本体育大学を卒業し、プロ選手として臨む初めてのクラブシーズンを日本でプレーしたわけだが、そこでは日本代表でも証明している実力を存分に発揮する。

『令和6年度天皇杯全日本バレーボール選手権大会』と『SVリーグ』のシーズン2冠に貢献し、SVリーグのチャンピオンシップではファイナルのMVPに輝いた。

バレーボールアジアチャンピオンズリーグ男子ジャパン2025

そうして臨んだ今回のアジアチャンピオンズリーグ。これはアジアバレーボール連盟に加盟する各国の12チームが集い、アジアの頂点を決める大舞台だ。なお、上位2チームには世界クラブ選手権の出場権が付与される。

高橋自身もサントリーの一員として、「アジアで1番になって、世界クラブ選手権の切符をつかむ」ことを目標として強く口にしていた。

だが、準決勝でアル・ラーヤン(カタール)にフルセットの末に敗北。世界クラブ選手権への道は潰えた。それでも最終日には3位決定戦を戦わなければならない。「メンタル的にも難しい部分もありました」とは高橋の告白だ。

バレーボールアジアチャンピオンズリーグ男子ジャパン2025

【ハイライト動画】3位決定戦 サントリーサンバーズ大阪 vs. フーラード・シールジャーン・イラニアン

そうして臨んだフーラード・シールジャーン・イラニアン(イラン)との3位決定戦で、サントリーはストレート勝ちを収める。それも25-15、25-15、25-19と全セットで20点台に到達させない完勝だった。

その試合では最終第3セット、20-17からサントリーはサイドアウトを奪うと、サーブ順は高橋に回ってくる。高橋のサーブを起点に、まずはトランジションアタックでドミトリー・ムセルスキーが得点してブレイクに成功。

強烈なサーブを見せる高橋藍

続けて、高橋が相手レシーバーをのけぞらせるような打球でサービスエースを決めると、その次の得点では高橋が今度はバックアタックを炸裂。24-17のマッチポイントで高橋は再びエンドラインに立つ。

「もちろん自分自身のサーブで崩したり、エースを奪うつもりでした。強いサーブを打つ選択肢もあるなかで…」

その直前のサービスエースもバックアタックも、強烈な打球を繰り出していただけに、その選択は十分に考えられた。だが、ここで高橋が放ったのは緩めのボール。相手リベロの手前に落とすようなショートサーブだった。

「相手を見たら、しっかりと構えていたので。それに今日の試合では自分がストロングサーブを多めに打っていたので、ショートサーブへの警戒が遅れているのかなと感じていました。なので、最後は裏をかいた、といいますか」

結果的には相手に返球されてサイドアウトを許したものの、「裏をかいた」と口にした瞬間、ふと含み笑いを浮かべる。

「自分の中でも楽しみながらショートサーブを打ちにいきました。いいショートサーブにはならなかったですけれど、あえて選ぶことで相手の裏をつきたいなと思ったんです」

3位決定戦後の高橋藍

アジアナンバーワン、そして世界クラブ選手権の出場権獲得という目標は果たせず、その悔しさは当然あった。けれども試合を戦い終えて、2024-25シーズンを勝利で締めくくった今、その表情は晴れやかだった。

「(最終日は)疲れなどもありましたが、これがこのチームで戦う最後の大会でしたから。目標に向かって戦っていき、そうして最後に笑うことができました。感謝の気持ちなどいろんな感情があふれ出てきて、それがスポーツをやっているなかで自分自身が好きな瞬間ではありますから。このアジアチャンピオンズリーグは楽しめてプレーできたかなと思います」

クラブシーズン最後の大会、その最後の試合、その最後の瞬間まで高橋自身は楽しんでいた。楽しみ尽くそうとしたからこそ、得意のショートサーブを放ったのである。

文:坂口功将/写真:(C)AVC

アジアチャンピオンズリーグ

坂口 功将

スポーツライター。1988年生まれ、兵庫県西宮市育ち。
「月刊バレーボール」編集部(日本文化出版)で8年間勤めたのち、2023年末に独立。主にバレーボールを取材・執筆し、小学生から大学生、国内外のクラブリーグ、そしてナショナルチームと幅広いカテゴリーを扱う。雑誌、ウェブメディアへの寄稿のほか、バレーボール関連の配信番組への出演やイタリア・セリエAの解説も務める。

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