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1月はクラシックレースの季節。激化するタイトル争いと日本選手の明るいニュース | アルペンスキー FIS ワールドカップ 2021/22
SKI GRAPHIC present’sアルペンスキーコラム by SKI GRAPHIC現在のマルコ・オーダーマットは手がつけられないほどの強さ。出場14レース中、表彰台に立たなかったのは4レースしかない
12月のフランス&イタリア転戦を経て、1月はワールドカップがもっとも盛り上がる時期。レースごとの勝負が盛り上がるのはもちろん、各タイトル争いの焦点も絞られてくる。さらに2月の北京五輪をにらんだ各国チームの代表権争いもあって、どのレースも目を離すことが難しいのだ。
1月14日現在、総合のトップに立っているのはマルコ・オーダーマット(スイス)。開幕戦のセルデンGSで優勝して以来、これまで13レースを戦って優勝6回と2位3回。そのうち4勝をあげているジャイアント・スラローム(GS)では、3位以下に下がったことがなく、総合得点ではポイントリーダーであることを示すレッド・ビブを今季誰にも渡していない。積み上げたワールドカップポイントは945点で、2位のアレクサンダー・オーモット・キルデ(ノルウェー)に400点近い差をつけている。そのキルデから、ヴィンセント・クリーヒマイヤー(オーストリア)までが100点差内に詰まっていることを考えれば、ほぼ独走体制に入ったといってもいいかもしれない。彼の強みは、GSを中心にスーパーG、ダウンヒルまでをカバーするオールラウンダーであること。3種目で表彰台に上る力を持っているのは、現在の男子ワールドカップでは他にいない。今後、怪我などのアクシデントがない限り、総合で彼の優位は揺るがないだろう。
昨年の怪我から力強く復帰したアレクサンダー・オーモット・キルデ。これまでに5勝をあげオーダーマットを追撃するがその差はなかなか縮まらない
しかし、種目別に見てみると、それぞれが激戦だ。ダウンヒルでは4レースが終了し、全て異なる選手が優勝。ポイントリーダーはドミニク・パリス(イタリア)だが、8人が100点以内にひしめく混戦模様だ。
またスーパーGは、3レースで優勝しているアレクサンダー・オーモット・キルデと2勝のマルコ・オーダーマットが2強だが、安定して上位に食い込んでいるマティアス・マイヤー(オーストリア)にもチャンスは残されている。昨シーズンの種目別チャンピオンのヴィンセント・クリーヒマイヤーは、4位につけているものの、コロナ感染のためウェンゲンのスーパーGに出場できなかったのが大きく響きそうだ。
GSはオーダーマットの最強種目だ。5レース中優勝4回、2位1回と圧倒的な強さを誇っており、現時点で彼を倒すのは至難の業といってよいだろう。たった1度勝てなかったアルタ・バディアの第3戦で優勝したのはヘンリック・クリストッファーセン(ノルウェー)。彼にとっては久々の勝利に喜びを爆発させたが、その後のレースでは成績が安定せず、完全復活には至っていない。今季GSで覚醒したマニュエル・フェラー(オーストリア)が2位1回、3位2回と安定した成績を残し、種目別2位で追っている。とはいっても、残り3レースでオーダーマットを逆転するのはほぼ不可能。昨シーズンの総合&GSチャンピオンのアレクシー・パントュロー(フランス)が依然として目覚めていないだけに、早ければ次のレース、クラニスカ・ゴーラの第6戦で彼の種目別優勝が決まりそうだ。
アルタ・バディアGSで久々に優勝したヘンリック・クリストッファーセン。これで波に乗るかと思われたが、不安定な成績が続いている
その点、多くの選手にタイトル獲得のチャンスが開かれているのがスラローム。原稿執筆時点ではまだ3レースしか消化していないこともあり、まだまだ先行きは不透明だ。この種目も3レースで3人が優勝しており、ポイント争いは混沌としている。しかし、1月はスラローム月間といわれるほどレースが連続しているだけに、今後の2週間程で大勢が決まるはず。ウェンゲン(スイス)、キッツビューエル(オーストリア)、シュラドミング(オーストリア)とビッグレースが続き、スラローマーにとっては、勝負の時期だ。
その中で、マドンナ・ディ・カンピリオ(イタリア)のスラローム第2戦で8位となった小山陽平(ベネフィット・ワンSC)に大きな期待が集まる。このときの小山は、1本目54番スタートでベストタイムから1秒92遅れの21位でクオリファイ。2本目はスタート直後の緩斜面でやや出遅れたものの、その後は5位、5位、1位のスプリットタイムでカバーし、2本目2位の会心の滑りを完成させた。しかもゴール前の最終区間は全選手中ベストのスプリットタイムを記録している。彼にとっては2年ぶり2度目の2本目進出だったが、けっして守りに入らず、急斜面をアタックしたのは感動的だった。コースが難しくなればなるほど力を発揮するタイプだけに、これからのレースが楽しみだ。
マドンナ・ディ・カンピリオの急斜面を攻める小山陽平。初のカップポイント獲得を8位という予想以上の順位で飾った
また、キッツビューエルのスラローム第5戦では相原史郎(東海大学)がワールドカップにデビューする。1月半ばに行なわれたヨーロッパカップで11位、8位と好成績を連発。ワールドカップの出場条件であるFISポイントランキング150位以内という基準をクリアしたことで、ゴーサインが出たのだ。21歳の誕生日の3日後となるデビュー戦。果たしてどんな滑りを見せてくれるのか注目したい。
ヨーロッパカップでの快進撃でランキング急上昇。相原史郎がいよいよワールドカップの舞台に上がる。写真は昨シーズンの野沢温泉カップ
一方女子の戦いも興味深い。現状ではトップのミカエラ・シフリン(アメリカ)をペトラ・ヴルホヴァ(スロバキア)が追いかける展開で、総合優勝争いは2人の一騎討ちのようにも見える。しかし、2人が得意とするスラロームとGSは、すでに大半のレースを消化。反対にダウンヒルとスーパーGはまだ多くを残しており、スピード・レーサーたちの追い上げが充分に可能。とくにダウンヒルを3戦全勝、スーパーGも4戦2勝と2位1回のソフィア・ゴッジャ(イタリア)が絶好調で、この勢いが続けば、シフリン、ヴルホヴァとの差は一気に縮まってくることが予想される。
総合でトップに立っているミカエラ・シフリン。シュラドミングのスラロームで優勝し、この種目通算47勝目。1種目の勝利数でインゲマル・ステンマルクの記録を抜いた
もっとも、実のところ二人は高速系にも大きなポテンシャルを持つオールラウンダー。とくにシフリンは、今季のスーパーGで2度3位になっており、いざとなればダウンヒルの表彰台も狙える力がある。勝負がもつれてくれば、高速系レースにも全力で挑むはず。おそらく総合優勝争いはシーズン終盤、さらにヒートアップすることだろう。
高速系種目で圧倒的な強さで突っ走るソフィア・ゴッジャ。シーズン後半には総合優勝争いに絡んでくるだろう
日本チームでは、腰痛のため出遅れていた安藤麻(日清医療食品)が、年末からレースに復帰した。痛みは依然消えておらず、1日に滑れる本数も限られる状態。常に自分を追い込むタイプの安藤には、ストレスの溜まる日々だったようだが、1月13日にシュラドミングで行なわれたスラローム第7戦で今季初のワールドカップポイントを獲得した。まだ本調子とは言い難く、タイム差も大きくつけられたものの、これを切っ掛けに再び上昇に転じて欲しいところだ。
腰痛で出遅れた安藤麻が徐々に調子を上げてきた。シュラドミングの難コースを攻略し今季初めてワールドカップポイントを獲得
さらに、国内強化指定ながらワールドカップ挑戦中の向川桜子(富士フィルムBI秋田)がリエンツ(オーストリア)のスラローム第4戦で27位となったことも明るいニュースだ。
国内強化指定という厳しい立場ながら、少ないチャンスを生かしてついにワールドカップで結果を残した向川桜子
彼女にとっては初、20歳でのワールドカップデビュー以来、9年27レース目での初ポイント獲得。その後、コロナの検査で陽性反応が出たため、ザグレブ、シュラドミングは欠場となったのが悔やまれる。
SKI GRAPHIC
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