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スキー コラム 2021年12月17日

2週間で4種目8レース 怒涛のイタリアシリーズに注目 | アルペンスキー FIS ワールドカップ 2021/22

SKI GRAPHIC present’sアルペンスキーコラム by SKI GRAPHIC
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圧倒的な強さでホームレースの勝利を飾ったクレモン・ノエル

北米シリーズから再びヨーロッパに戻った男子ワールドカップは、まずはヴァル・ディゼールに上陸。先週末には、ジャイアント・スラローム第2戦とスラローム第1戦が行なわれた。なかなか出番が回ってこなかったスラローマーたちも、ようやくシーズンの開幕を迎えたわけである。

そんなスラローム初戦は、フランスのエース、クレモン・ノエルが2本ともベストタイムという完璧な滑りで圧勝した。少年時代をヴァル・ディゼール・スキークラブで過ごした彼にとっては、ねじくれた急斜面の難コース“ベルヴァルドの壁”も勝手知ったるホームコース。今季は1本目、2本目ともに例年より所要タイムが4~6秒も短い高速スラロームだったが、詰めかけた地元ファンの前で躍動。他を圧倒する異次元の滑りを見せつけ、2位に1秒40という大差をつけて通算9勝目(すべてスラロームで記録)をあげた。

このタイム差にも驚かされたが、2位3位も意外な顔ぶれだった。2位は第2シード、21番スタートのクリストッファー・ヤコブセン(スウェーデン)で、3位はGSスペシャリストのイメージが強いフィリップ・ズブチッチ(クロアチア)。ともにスラロームの自己最高位という成績だった。

スラローム第1戦(ヴァル・ディゼール)の表彰台。予想通りの強さを発揮したクレモン・ノエルはともかく、2位3位は意外な顔ぶれとなった

日本からは、小山陽平(ベネフィット・ワンSC)と加藤聖五(野沢温泉SC)が出場。1本目は小山が34位(+2.43)、加藤が39位(+2.90)と、いずれも2本目へのクオリファイはならなかった。

小山陽平はヴァル・ディゼールのスラロームで1本目34位。クオリファイまであと少しの位置にいるが、まだ足踏みが続いている

2本目へのカットラインはトップと2秒22差なので、惜しいと言えば惜しいのだが、ふたりとも過去2シーズン、これくらいのタイム差でどうしても壁を超えられず、同じ位置での足踏みが続いている。この日は第1シードのなかでマルコ・シュヴァルツ(オーストリア)、アレクシー・パントュロー(フランス)ら計4人が完走しながら2本目に進めないという異常な展開。難しいレースだったことは確かだが、その分チャンスではあったわけで、彼らにとって悔しさの募るレースとなってしまった。

話は前後するが、土曜日に行なわれたGS第2戦にも触れておくと、こちらも非常に難しいレースだった。前日までに約50cmの新雪が積もり、夜を徹した懸命の整備でコースを掘り起こしての競技開始。下地は硬かったものの、やはりコースは荒れ、複雑にねじれた癖のある急斜面は例年以上に難度が高かったようだ。かつての“ミスターGS”テッド・リゲティが「このコースには、GSらしくのびのびとスキーを走らせる部分がまったくない」と嘆いたように、細かなターンと斜面変化への対応に追われるせわしないGSとなり、多くの選手を苦しめた。そんななかで高い技術で勝利をつかんだのは、マルコ・オーダーマット(スイス)。今季初めて表彰台に立ったディフェンディング・チャンピオン、アレクシー・パントュローを0秒59差で2位に抑えて今季3勝目をあげた。GSでは開幕戦に続く連勝だ。3位はマニュエル・フェラー(オーストリア)が入り、GSでは自身2度目の表彰台となった。日本選手は加藤と石井智也(ゴールドウインSC)が出場した。レッヒのパラレルレースで27位となり初のワールドカップポイントをあげた加藤が、得意のGSでどう戦うか注目されたが、カットラインに0秒88、トップとは4秒13遅れの46位に沈んだ。日本選手には珍しく緩斜面を得意とする彼にとってこのコースは相性が悪く、さらに荒れた雪面にも悩まされ予想外の惨敗となってしまった。

石井は、2年ぶりのワールドカップ復帰だったが、オーダーマットから4秒65遅れの50位。5年前には2本目クオリファイに100分の1秒差に迫ったコースだけに期待が集まったが、出場64人中60番というスタート順の不利を覆すことはできなかった。

GSで期待される加藤聖五だが、ヴァル・ディゼールのコースは惨敗。次のアルタ・バディア2連戦で真価が問われる

さて、男子のワールドカップは、今週からイタリアシリーズに突入。12月のハイライトともいえるこれから年末にかけて、主にイタリアのドロミテ山塊のスキー場で開催される。

12月17日(金) ヴァル・ガルディナ スーパーG
12月18日(土) ヴァル・ガルディナ ダウンヒル
12月19日(日) アルタ・バディア ジャイアント・スラローム
12月20日(月) アルタ・バディア ジャイアント・スラローム
12月22日(水) マドンナ・ディ・カンピリオ スラローム
12月28日(火) ボルミオ ダウンヒル
12月29日(水) ボルミオ スーパーG
12月30日(木) ボルミオ スーパーG(レイク・ルイーズ代替)

やや過密気味のスケジュールでの計8レース開催。いずれも名コース、難コースとして名高い会場で熱戦が繰り広げられるのだ。ここで調子の波をつかめるかどうかが、1月以降のワールドカップ、さらには2月の北京オリンピックでの成績に影響するだろう。果たしてオーダーマットの快進撃がこのまま続くのか、依然出遅れたままのパントュローは巻き返せるのか興味は尽きない。

総合でトップに立つマルコ・オーダーマット。GSとスーパーGで3勝をあげ、ダウンヒルでも4位、15位と好調。

最後に、女子についても簡単に。
現時点で総合トップを走るのは、ミカエラ・シフリン(アメリカ)だ。父親の突然の死からもうすぐ2年。その精神的ショックから、この2シーズンは精彩を欠いていたが、ようやく立ち直りつつある。得意のスラローム、GSでは本来の強さが戻り、昨シーズンは遠ざかっていた高速系レースにも積極的に出場。サン・モリッツのスーパーG2連戦では、2レースとも3位と気を吐いた。

父親の死による精神的ダメージから立ち直り、好調時の強さを取り戻しつつあるミカエラ・シフリン

これを追うのはレイク・ルイーズでの高速系3連戦で全勝したソフィア・ゴッジャ(イタリア)、さらに昨シーズンの総合チャンピオン、ペトラ・ヴルホヴァ(スロバキア)もレヴィSLを連勝するなど、表彰台を外さない安定感で3位につけている。

ソフィア・ゴッジャはレイク・ルイーズ3連戦を全勝。高速系種目では圧倒的な力を見せつけている

その中、日本のエース安藤麻(日清医療食品)は、腰の痛みのためにしばらく休養を余儀なくされていたが、練習を再開。おそらくクーシュヴェルのスラローム(12月21日)からはワールドカップに戻ってくるだろう。3レースを欠場したことでWCSLは34位に下がり、第2シードから外れてしまった。したがってスタート順の不利は否めないが、痛みさえなくなれば、第2シード復帰にはそれほど時間はかからないはず。まずは復帰戦の彼女の滑りに注目したい。

文:田草川 嘉雄

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