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スキー コラム 2021年4月2日

アレクシー・パントュローが総合チャンピオン ワールドカップ13年目で、ついに大クリスタル・グローブを獲得

SKI GRAPHIC present’sアルペンスキーコラム by SKI GRAPHIC
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10代の頃から将来の総合チャンピオンと目されていたアレクシー・パントュローだが、この大クリスタル・グローブをつかむまでには13年が必要だった

昨年10月18日、セルデン(オーストリア)の氷河で開幕し、約5月間にわたって計39レースが行なわれた2020/21シーズンのアルペンスキー・ワールドカップは、レンツェルハイド(スイス)のワールドカップ・ファイナル(最終戦)をもってすべてのスケジュールが終了した。コロナ禍による無観客試合、日程・会場の変更も多く、加えて、2月には2週間にわたってコルティナ・ダンペッツォ世界選手権も行なわれた。選手にとってもまた大会の運営側にとっても、タフでハードでかつイレギュラーな冬だったはずだが、とにもかくにも無事に終わったことをまず喜びたい。

レンツェルハイドでワールドカップ・ファイナルが行なわれるのは、7年ぶり6回目。レギュラーシーズンのレースよりも、最終戦の舞台となることのほうが多い不思議なスキー場だ。背景には世界選手権を誘致したいという地元の願いがあるのだが、21世紀に入ってすでに2回、お隣ともいえるサン・モリッツで世界選手権が行なわれているからか、なかなか順番が回ってこない。しかし、素晴らしい景観に恵まれた長大なコースは、滑り応えは充分。スイスを代表するリゾートのひとつである。

レンツェルハイドの難点は、残念ながらこの時期、悪天候に見舞われる日が多いことだ。過去のワールドカップでも、雪や雨や霧で多くのレースが中止の憂き目にあっている。そして、それは今年も例外ではなかった。しかも男女のダウンヒル、スーパーGがすべて中止。今回は時ならぬ大雪とそれにともなう視界不良が原因だった。

7年ぶりにワールドカップ・ファイナルの舞台となったレンツェルハイド。大会前半悪天候に災いされ、男女のダウンヒルとスーパーGが中止となった

ワールドカップ・ファイナルはレースひとつひとつが重要なのはもちろんだが、ワールドカップ総合や種目別のタイトル争いの決着の場でもある。逆転の可能性がある選手は、最後のレースに望みをかけるし、最終レースの朝までトップに立っていた選手が、その日の午後に悔しさにまみれていることも、過去には何度もあった。しかし、レースが行なわれなければ、どうしようもない。タイトルの行方は、誰も責めることのできない割り切れなさを残しつつ、それでも決まる。2020/21シーズン男子総合では、アレクシー・パントュロー(フランス)が、マルコ・オーダーマット(スイス)の追撃を振り切って初のチャンピオンに輝いた。ワールドカップ13年目。早くから将来の総合優勝候補と言われ続けて、総合2位を2度、3位を3度経験した末にたどり着いた頂点だった。

GS最終戦2本目をフィニッシュするアレクシー・パントュロー。このレースで優勝し、追いすがるマルコ・オーダーマットを突き放した

昨年は、わずか54点差でアレクサンダー・オーモット・キルデ(ノルウェー)に及ばなかったパントュロー。新型コロナウイルスの急拡大に伴ってワールドカップが7レースを残して突然終了。逆転の可能性が充分にあっただけに、悲運な2位に終わっていたのだ。だが、今季はダウンヒルとスーパーGのいずれも中止となったため追いかけるオーダーマットの得点チャンスが消滅。同じ準オールラウンダーながら、技術系種目が得意のパントュローに対して、オーダーマットは高速系寄り。仮にこの2レースが行なわれていたとしたら、167点というふたりの得点差はどう転がっていただろうか?

マルコ・オーダーマットにとって、高速系2レースの中止は痛手だった。しかし総合、スーパーG、GSの3部門で2位。堂々たる成績で6年目となるシーズンを終えた

とはいえ、パントュローの初優勝に文句をつける要素はひとつもない。5回の優勝9回の表彰台、そして19回のトップ10入りは、いずれも今季最高の数字。シーズン序盤から飛び出し、つねに総合のタイトル争いをリードし、そして最後まで首位の座を守り抜いた安定感は、総合優勝の大クリスタル・グローブを手にするのにふさわしいものだった。オーダーマットを最後に突き放したGS最終戦での勝利は見事。彼は総合に加えて、GS種目別優勝の小クリスタル・グローブをも獲得したのだ。フランス人の総合優勝は男女を通じて1996/97シーズンのリュック・アルファン以来24年ぶり4人目の快挙である。

一方わずかにタイトルに手が届かなったオーダーマット。シーズン終盤に調子をあげていただけに、2レースの中止は残念だっただろう。それが微妙に影響したのか、GS最終戦は11位と失速。この日の朝の段階では種目別トップにいながら、大事な大事なレースで今季のGSでもっとも悪い順位に終わり、パントュローの逆転を許してしまった。しかし、それでも総合2位、種目別スーパーG2位、同GS2位と、スイスの若きエースとして、堂々たる成績であることは間違いない。今が伸び盛りの23歳。来シーズンの彼がさらにどこまで成長するのか、今から楽しみで仕方がない。

男子の総合及び種目別上位ランキングは以下の通りだ。

男子総合
1位 アレクシー・パントュロー(フランス)1260点
2位 マルコ・オーダーマット(スイス)1093点
3位 マルコ・シュヴァルツ(オーストリア)814点

男子ダウンヒル
1位 ベアト・フォイツ(スイス)486点
2位 マティアス・マイヤー(オーストリア)418点
3位 ドミニク・パリス(イタリア) 338点

男子スーパーG
1位 ヴィンセント・クリーヒマイヤー(オーストリア)401点
2位 マルコ・オーダーマット(スイス)318点
3位 マティアス・マイヤー(オーストリア)276点

男子ジャイアント・スラローム
1位 アレクシー・パントュロー(フランス)700点
2位 マルコ・オーダーマット(スイス)649点
3位 フィリップ・ズブチッチ(クロアチア)606点

男子スラローム
1位 マルコ・シュヴァルツ(オーストリア)665点
2位 クレメント・ノエル(フランス) 553点
3位 ラモン・ツェンホイゼルン(スイス)503点

ダウンヒルは今年もベテラン勢が強かった。なかでも34歳のベアト・フォイツの強さが光り、種目別4連覇を達成

ダウンヒルは、上位10人のうち8人が30歳以上のベテラン勢。なかでも34歳のベテラン、ベアト・フォイツ(スイス)が4年連続のタイトル獲得と今年も強かった。シーズン序盤こそ、ややもたついたが、中盤以降は本領発揮。世界選手権を含めて優勝と2位しかなく、さすがの安定感だった。

スーパーGは3年連続で種目別2位だったヴィンセント・クリーヒマイヤーが、ついに初のチャンピオンに輝いた

スーパーGはヴィンセント・クリーヒマイヤーが、30歳にして初めてのタイトルを獲得。3年連続のスーパーG種目別2位の後、悲願の初優勝を遂げた。彼は世界選手権でもダウンヒル、スーパーGの高速系2種目を完全制覇するという充実ぶりだった。

スラロームのチャンピオンはマルコ・シュヴァルツ。優勝は2レースだが、シーズンを通して上位をキープし初のタイトルをつかみとった

スラロームは、最終戦を待たず、クラニスカ・ゴラの第10戦の段階で優勝が決まり、マルコ・シュヴァルツ(オーストリア)が初の小クリスタル・グローブを手にした。

今季は11レースが行なわれた男子スラロームだが、彼を含めて、クレメント・ノエル(フランス)、マニュエル・フェラー(オーストリア)、ヘンリック・クリストッファーセン(ノルウェー)の4人が2勝。だが、そのなかで、シーズンを通してもっとも安定していたシュヴァルツが抜け出し、かつてマルセル・ヒルシャーがほぼ独占してたスラロームのクリスタル・グローブを2年ぶりにオーストリアに持ち帰った。

文・田草川 嘉雄

SKI GRAPHIC

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