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激化するタイトル争い 総合はA・パントュローとM・オーダーマットの一騎打ちに
SKI GRAPHIC present’sアルペンスキーコラム by SKI GRAPHICパントュローが81点差でリード。悲願の総合優勝に最短距離にいるとはいえ、タイトル最後までもつれるだろう
コルティナ・ダンペッツォ世界選手権による中断を経て、ワールドカップが再開した。早いもので、2020/21シーズンもすでに終盤。残すところ男女ともに2会場6レース(+チームパラレル)のみとなった。男子は今週末(3/13~14)にクラニスカ・ゴーラ(スロヴェニア)でジャイアント・スラロームとスラロームが、そして3/17~21にレンツェルハイデ(スイス)でワールドカップファイナル(最終戦)が行なわれる。昨年は新型コロナ感染症の急拡大のため、多くのレースが消化できないまま3/7の段階でワールドカップが終了。しかし、今シーズンはどうやら最終戦まで開催できそうな気配だ。ぜひ最後まで無事にレースが行なわれることを祈りたい。
さて、ワールドカップ総合及び各種目別のタイトル争いもいよいよ大詰めを迎えた。現時点ですでにチャンピオンが確定しているのは、ララ・グート-ベラミ(スイス)が5年ぶりに王座を奪還した女子のスーパーGのみ。他はまだまだ予断を許さない混戦模様となっている。
男子総合はアレクシー・パントュロー(フランス)とマルコ・オーダーマット(スイス)の争いに絞られてきた。3月8日現在のポイントランキング上位は以下の通り。
1位 アレクシー・パントュロー(フランス)1050点
2位 マルコ・オーダーマット(スイス)969点
3位 マルコ・シュヴァルツ(オーストリア)718点
4位 マティアス・マイヤー(オーストリア)700点
5位 ヴィンセント・クリーヒマイヤー(オーストリア)675点
6位 ロイック・メイヤー(スイス)630点
終盤に入って急激に調子を上げてきたをオーダーマット。若さの勢いで逆転を狙う
計算上は3位以下の選手にもまだ可能性は残されているものの、それぞれの種目特性を考えればパントュローとオーダーマットの一騎打ちとみてよいだろう。序盤から突っ走ったパントュローに対してオーダーマットは尻上がりに調子を上げ、その差を81点にまで縮めてきた。優勝者に与えられるカップポイントは100点。つまり1レースでひっくり返る可能性があるわけだ。ともに、準オールラウンダー。パントュローはダウンヒルを除く3種目で、オーダーマットはスラロームを除く3種目で得点を重ねてきた。スラロームは2レース残っているが、ダウンヒルは最終戦での1レースを残すのみなので、その点ではパントュローが有利だろう。しかし、現在の勢いではオーダーマットに分がありそうだ。仮にパントュローが勝てば1996/97のリュック・アルファン以来25年ぶりにフランスへ、オーダマットが勝てば2009/10シーズンのカルロ・ヤンカ以来11年ぶりにスイスへ総合優勝のタイトルを持ち帰ることになる。過去には、わずか2点差で、アクセル・ルンド・スヴィンダール(ノルウェー)がベンジャミン・ライヒ(オーストリア)を抑えて総合チャンピオンに輝いた2008/09シーズンの例がある。今季もそんな大激戦となりそうな予感もするのだが、はたして総合優勝の大クリスタル・グローブを手にするのは、どちらだろうか。
また、種目別では以下のような状況だ。
男子ダウンヒル(残り1レース)
1位 ベアト・フォイツ(スイス)486点
2位 マティアス・マイヤー(オーストリア)418点
3位 ドミニク・パリス(イタリア)338点
スイスとオーストリア、2大強国のエース同士の戦いとなったが、点差と安定感でフォイツがかなり優勢と言えるだろう。彼が勝てば種目別4連覇となる。
ダウンヒルの種目別3連覇中のベアト・フォイツ。今季も2勝をあげ、4連覇達成が濃厚だ
男子スーパーG(残り1レース)
1位 ヴィンセント・クリーヒマイヤー(オーストリア)401点
2位 マルコ・オーダーマット(スイス)318点
3位 マティアス・マイヤー(オーストリア)276点
クリーヒマイヤーが初の種目別タイトルに王手をかけている。逆転の可能性はあるが、彼の安定感を考えればおそらく逃げ切ることだろう。
世界選手権ではダウンヒル、スーパーGともに金メダルを獲得したクリーヒマイヤー。ワールドカップでも初のタイトルを狙う
男子ジャイアント・スラローム(残り2レース)
1位 アレクシー・パントュロー(フランス)550点
2位 マルコ・オーダーマット(スイス)525点
3位 フィリップ・ズブチッチ(クロアチア)486点
GSでもパントュローとオーダーマットがタイトルを争っている。パントュロー有利な状況だが、残り2レース。失敗は許されない状況だ。さらにズブチッチにも大逆転の可能性は残されている。
男子スラローム(残り2レース)
1位 マルコ・シュヴァルツ(オーストリア)589点
2位 ラモン・ツェンホイゼン(スイス)443点
3位 セバスチャン-フォス・ソールヴォーグ(ノルウェー)405点
タイトル争いはこの3人に絞られたが、誰が勝っても初のタイトルだ。スラロームはもっとも波乱の起きやすい種目だけに、勝負の行方は最後までわからない。
シーズン半ばは腰痛で苦しんだが世界選手権18位と健闘した加藤。成長の跡をワールドカップで示してほしい
今週末のクラニスカ・ゴーラには日本から小山陽平(日本体育大学)と加藤聖五(野沢温泉スキークラブ)が出場する予定だ。
期待された世界選手権は不本意な滑りで終わってしまった小山。その後のヨーロッパカップで10位と大健闘し復調の兆し
加藤が土曜日のGS第9戦に、小山は日曜日のスラローム第10戦にそれぞれエントリー。彼らにとっては今季最後のワールドカップとなるだろう。ふたりとも今季の目標としていたワールドカップの2本目進出はまだ果たせていないが、加藤はヨーロッパカップ18位、世界選手権18位、小山もヨーロッパカップ10位とそれなりの結果は残している。そんな成長をワールドカップでも証明することができるかどうか。悔いのない滑りを見せてほしい。
着実な成長を世界選手権のスラローム10位で証明した安藤。次の目標はワールドカップ・ファイナルへの進出だ
また女子では、世界選手権のスラロームで10位入賞という大活躍を見せた安藤麻(日清医療食品)に注目だ。男子のクラニスカ・ゴーラと同じ日程で、オーレ(スウェーデン)でにスラローム2連戦が控えている。スラロームの種目別ランキングは現在32位だが、この2レースで25位以内に上がればワールドカップ・ファイナル(最終戦)出場の権利が得られる。現状25位の選手とは16ポイント差なので、まだ望みは残されている。2000/01シーズンの廣井法代に続く、日本女子ふたり目のワールドカップ・ファイナル進出に向けて、オーレ2連戦での上位入賞を期待したい。
なお、J SPORTSでは通常の男子に加えて、最終戦では女子スラロームも生中継する予定だ。
■【FIS W杯 最終戦】女子スラロームも放送/配信!
アルペンスキー FIS ワールドカップ 20/21
男子 ジャイアントスラローム/女子 スラローム(レンツェルハイド/スイス)
2021年3月20日(土)午後 4時 45分~午後 11時 00分
J SPORTS 3 / J SPORTSオンデマンド
https://www.jsports.co.jp/program_guide/06/01/89821_3239415/
文・田草川 嘉雄
SKI GRAPHIC
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