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鍵山優真は貪欲なる質の求道者。端正なスピンやステップ。雑味のないスケーティング。まるで脚に羽が生えているかのようにふわりと飛び上がり、着氷の衝撃をちっとも感じさせない柔らかなジャンプ……。GOE出来栄え点加点やPCS演技構成点を確実に積み上げることで、高得点をたたき出す。しかも故障からの復帰シーズンとなった今季、カロリーナ・コストナーに師事し、表現の幅が広がり、氷上に描き出す物語がさらに豊かになった。
今の鍵山は、「勝ち」への強いこだわりも、隠そうとはしない。新しい武器の開発にも着手し、初のISU選手権タイトルを得た四大陸では、4回転フリップに公式戦初トライ。残念ながら着氷で乱れがあったものの、回転は最後まで「締め切れた」と、手応えは十分。世界選手権では、完成形を披露してほしい。
こんな3人の後輩たちの躍進が、宇野の心を刺激した。昨シーズンは全戦全勝を貫き、大本命としてワールドへ乗り込み、前評判通りに2連覇を果たし……もしかしたら宇野にとっては少し退屈だったのかもしれない。「今後どういう形でスケートをやっていくのか分からない」と漏らし、ジャンプの難度や結果にこだわるのではなく、ひたすら自分自身を感動させるような表現力を磨き上げていきたい……そうも語った。
ところが状況は大きく変わる。今シーズン参戦した国際大会3戦で、上記3選手に、世界チャンピオンは打ち負かされた。初戦GP中国杯ではシャオ・イム・ファに、NHK杯では鍵山に、そしてGPファイナルではマリニンに。追われる側ではなく、追いかける側になり、それが宇野のモチベーションに再び火をつけた。全日本は意識的に「勝ち」に行き、6度目の制覇を果たした。
来る世界選では「競技人生最高の演技をしなくては勝てない」と、宇野は理解している。単純にPBの比較では、マリニンに約2点及ばない。今季いまだ300点に到達していない宇野に対して、アダムは306.78点を、鍵山は307.58点を記録している。だからこそモントリオールでの宇野は、表現力も、ジャンプも、もちろん結果にも強くこだわる。世界の頂点に2年連続で登り詰めてもなお、新たな高みを目指す。
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