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フィギュア スケート コラム 2023年1月24日

特別な輝きを放つ全米チャンピオンの称号をかけた大一番 | 全米フィギュアスケート選手権2023 ペア プレビュー

フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部
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アレクサ・シメカ・ケネリム&ブランドン・フレイジャー組

アレクサ・シメカ・ケネリム&ブランドン・フレイジャー組

フィギュアスケート大国アメリカの、ナンバーワンを決する大一番。昨年末のISUグランプリファイナルでは全4種目でメダルを獲得し、この春の世界選手権では全4種目3枠を誇る地上唯一の国において、全米チャンピオンの称号は特別な輝きを放つ。

昨年3月にすでに世界の頂点へ上り詰めたペアも、母国での栄光に強いこだわりを持っている。コロナウイルス陽性で棄権を余儀なくされ、「もしかしたら人生最後のナショナル出場チャンスを失ったのかもしれない……」と涙した1年前の辛い経験があるからなおのこと。アレクサ・シメカ・ケネリム&ブランドン・フレイジャー組の、2023年全米選手権にかける意気込みは大きい。

競技への情熱は、幸いにも、燃え尽きなかった。米国チームの一員として冬季五輪団体戦で美しい色のメダルを手に入れたことや、米国ペアとして43年ぶりの世界選手権優勝を成し遂げたことは、むしろケネリム&フレイジャー組にとってはさらなるモチベーションの泉となった。

結成3シーズン目の今季は、さらなる進化を続ける。互いの関係性は深まり、ペアエレメンツは淀みなく流れる。目を見張るほど幅のあるスロージャンプ。フレイジャーが繰り出すリフトは高くダイナミックでありながら、いつだって安定感抜群。なによりドラマチックなSP「Separate way」も、どこか詩的なFS「sing of the times」も、ケネリムの芯の強さと凛とした美しさが最高に際立っている。

成績も順当についてきた。アメリカ杯でカップルとして初のグランプリ大会優勝(2000年大会も制したがコロナ禍での特殊開催だった)。イギリス杯では米国ペアとして史上初の同一年グランプリ2大会制覇。そしてグランプリファイナルで米国ペアとして史上初のメダル獲得!

……もちろん、GPFで表彰台のてっぺんを逃したことは、2人にとっては悔しい思い出でもある。サイド・バイ・サイドのソロジャンプでSP、FSともにフレイジャーにミスがあり、わずか1.3点という僅差で銀メダルに甘んじた。だからこそカップルにとって2年ぶり2度目の全米王座は、パーフェクトな演技で射止めたい。

日本の「りくりゅう」こと三浦璃来&木原龍一組の好敵手だからこそ、「シメフレ」の演技は、シーズン後半戦の四大陸選手権と世界選手権の行方を占う上でも絶対に見逃せない。

一昨季初出場5位、昨季4位ピューターメダルとひとつずつ順位を上げてきたエミリー・チャン&スペンサー・ハウ組は、今年はもっともっと上を目指す。

自身やパートナーのケガに悩み、キャリアの方向性に迷い、ずいぶんと遠回りをしてきた2人がチームを組んだのは2019シーズン。それまでほぼシングルメインで活動してきたチャンにとって、いきなりシニアレベルでの転戦はかなりの難関だったという。

それでも昨冬は2人にとって初めてのISU国際チャンピオンシップ、四大陸選手権で銀をつかみ取った。熱っぽく官能的なSP「Nyah」と、優しく軽やかなFS「Unchained Melody」と好プログラムを2つ揃えたこの冬は、NHK杯を含むグランプリ大会で2度の表彰台乗り。初めてのグランプリファイナル進出さえ果たした!

いまだリフトやスロージャンプで、思わぬミスがでてしまうこともある。かつてハウに引退さえ覚悟させた肩の痛みが、シーズン前に再発したことも影響しているのかもしれない。全米選手権では万全の演技が披露できるよう、願いたい。

五輪の翌シーズンだからこそ、見慣れた顔が少なくなり、ちょっぴり寂しい気分にもなる。昨全米覇者アシュリー・ケイン&ティモシー・ルデュク組は競技引退を決め、2位ジェシカ・キャララン&ブライアン・ジョンソン組は解散(男性は引退)。3位オードリー・ルゥ&ミーシャ・ミトロファノフ組もチームを解消し、別々の道を歩き出した。その一方で、懐かしい選手が帰ってくる。

以前のパートナーと全米選手権優勝はもちろん、四大陸優勝経験をも持つダニエル・オシェイは、今季エリー・カムと共に、新たなキャリアへと滑り出した。しかも初公式戦アイスチャレンジ優勝、初チャレンジャー大会ゴールデンスピン銀と、好成績を積み重ねている。カップルにとって初の、オシェイにとっては3年ぶりのナショナル。あのチャーミングな笑顔を、きっと見せてくれるに違いない。

新しい風も吹いてくる。一昨季全米ジュニアチャンプのアナスタシア・スミルノヴァ&ダニーロ・シアニツィア組(*)は、初めての全米シニア挑戦。生まれ故郷ウクライナのために、米国籍を得た先の2026年冬季五輪のために、大きな一歩を踏み出す。

また結成1年目の昨季に全米ジュニアを制し、先日のジュニアグランプリファイナルでは銀メダルに嬉し泣きした14歳ソフィア・バラム&20歳ダニエル・ティウメンツェフ組も、サンノゼではシニアペアとして参戦する。ケネリム&フレイジャー組と同じコーチの下、同じリンクで研鑽を積む2人の、輝かしい未来はここから始まるのかもしれない。

(*)アナスタシア・スミルノヴァ&ダニーロ・シアニツィア組は女性側の怪我により棄権が発表されました。

文:J SPORTS編集部

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