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国立競技場に潜入!レガシーとは何か | 町田樹のスポーツアカデミア 【Repotage:東京に誕生したレガシーの今】
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部町田樹のスポーツアカデミア 【Repotage:東京に誕生したレガシーの今】
スポーツアカデミアへ、ようこそ。町田樹です。
この番組では、初回放送から「Repotage アリーナの今を訪ねて」と題した企画に取り組んできました。このRepotage企画では、国内において注目すべきスタジアムやアリーナに行って、施設の仕組みや構造を見学。施設を管理・運営している方々と対談をしながら、スポーツ施設の現場を多角的に放送してきました。
なぜ私たちはスポーツ施設を取り上げてきたのか。それは、スタジアムやアリーナが、スポーツ文化を根本から支えているインフラだからです。スタジアムやアリーナは、選手の練習場にもなれば、選手がパフォーマンスを発揮する競技会場にもなり、「スポーツをする・見る・支える」と、全面的に支援しています。
また、スポーツだけでなく、時には文化芸術、ライブエンターテイメントのイベントで利用されたり、災害が起こった時などには防災拠点になったりもします。そうした多くの役割を担っているスタジアムやアリーナですが、その管理・運営は決して簡単なことではありません。
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町田樹のスポーツアカデミア 【Reportage:東京に誕生したレガシーの今①】 #10
配信期間 : 2022年9月20日午後9:00 ~ 2022年11月30日午後11:59
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町田樹のスポーツアカデミア 【Reportage:東京に誕生したレガシーの今②】 #10
配信期間 : 2022年10月25日午後8:00 ~ 2022年10月25日午後9:00
本番組のRepotage企画では、このようにスポーツ文化を支えているアリーナを調査し、これからの時代のスポーツ及び文化施設がどのように運営されていくべきなのかということを考えてきました。そんなRepotage企画も、今回が最終回になります。
最終回のテーマは「東京に誕生したレガシーの今」です。東京オリンピック、パラリンピックが閉幕して1年が経ちましたが、今、思い返してみても、数多くの素晴らしいパフォーマンスが見られましたよね。そうした選手のパフォーマンスをいろいろな施設が影ながら支えてきたわけです。
東京オリ・パラの新規恒久施設
今回の東京大会では、すでに国内に設置されている既存の施設を有効活用してきた一方で、恒久施設、仮設施設を含め、複数の新しい施設を建設しました。これは、その一例です。
ここに示されているのは、東京オリンピック・パラリンピックで作られた新設の恒久施設です。これからも残っていく施設で、合計7つあります。今年の9月には、大会経費の最終報告が出されの整備には合計3491億円がかけられたという報道もなされました。この3491億円という莫大な経費に加えて、実はこの7つの施設の多くでは、まだまだ赤字になってしまっているという現状があります。そうした現状の中では批判的な見解も出されているわけです。
しかし、施設ができたことには変わりはありませんから、東京オリンピック・パラリンピックでできた恒久施設は、今後どのように運営していけば黒字化が見込めるのか。あるいは日本のスポーツ界、文化芸術界の発展に貢献できるのかということを、建設的に考えていかなければいけません。
国立競技場、有明アリーナ、日本財団パラアリーナ
今回、Repotage企画では、これらの施設全てを調査することは難しいので、その中から代表して国立競技場と有明アリーナを調査することになりました。加えて東京パラリンピックを契機として設置された日本財団パラアリーナも調査します。この3カ所を調査しながら、東京オリンピック・パラリンピックにおいて新設されたレガシー施設の現状と未来について考えていきましょう。
また、東京オリンピック・パラリンピックの報道を見てみると、よく「レガシー」という言葉を聞きます。これらの施設もそのうちの1つだと言われていますが、レガシーとは何か、皆さんはご存知でしょうか。まずは、そのことを説明するために、東京オリンピックに関わるこれまでの経緯を説明していきます。
東京大会の文化オリンピアード期間
東京オリンピック開催からさかのぼること約11年前。東京都が招致活動を始めました。そして、2013年にIOC総会にて東京オリンピック開催が決まったわけです。そこから3年後の2016年のリオデジャネイロオリンピック開催から東京オリンピックが閉幕するまでの5年間が「東京2020文化オリンピアード」期間とされ、この期間にはスポーツを振興するための様々なイベントや文化・芸術を振興させるためのいろいろな取り組みが継続的に行われてきたわけです。
こうした期間に行われたスポーツや文化・芸術のイベント。あるいはそのために設置された数々の施設を「末永くレガシーとして継承せよ」ということが、実はIOCから要求されています。
つまりレガシーとは、IOCによると「オリンピックが開催都市やそこに住む人々にもたらす長期的なベネフィットである」と説明されているのです。ですから、これまでオリンピックを開催した都市も、このレガシーを育み、継承させていくための様々な努力、創意工夫をしてきました。そしてそれは、今回の東京オリンピックも例外ではありません。
東京大会のレガシー戦略
東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会もレガシーレポートを作成し、(1)スポーツ・健康、(2)文化・教育、(3)復興・ALL日本、(4)街づくり・持続可能性、(5)経済・テクノロジーという5つの柱でレガシーを残していこうという取り組みを5年間してきたのです。
これから調査する施設も、そうしたレガシーを生み出す拠点になります。東京オリンピック・パラリンピックで建設された新設の恒久施設は、今後どのようなレガシーを生み出していくのでしょうか。潜入調査をしていきたいと思います。
国立競技場に潜入
国立競技場
昨年開催された東京オリンピック・パラリンピック。開催都市東京に生み出された数々のレガシーを調査するべく町田樹が潜入取材。各施設の現在の姿と、それぞれが示した未来を解き明かします。
まずは東京都新宿区明治神宮外苑にある国立競技場。東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとして2019年に新設された総収容人数6万人を超える巨大なスタジアムです。オリンピックを象徴する国立競技場は東京2020の後、改修工事を行い、今年4月から一般利用が開始されました。そんな国立競技場は今、どのように運営されているのでしょうか。
町田:こんにちは、町田樹です。よろしくお願いします。
牧野:はじめまして、日本スポーツ振興センターの牧野美穂と申します。よろしくお願いします。それでは早速、国立競技場をご案内します。まずは最上階です。こちらは国立競技場の5階になり、空の杜という遊歩道になっています。1周は約850mあり、歩き応えがあるんです。植栽がぐるっとしてあるので、お花を眺めたり、桜も見ることができます。
町田:虫の音もすごくしていますよね。もうすぐ秋ですが、鈴虫などの声を聞きながら涼しく歩けます。
牧野:はい。楽しんでいただけると思います。
牧野:次は、3層目の最上段です。国立競技場は6万7750席ありますので、たくさんの人に入っていただくことはできます。
町田:やっぱり壮観ですし、素晴らしいですね。
牧野:ここから見ると、ちょうど三層の上の辺りがぐるっと1周、開いています。ここから風が吹き込んでくるのですが、気流を作って、真ん中の天井から上がっていくというような仕組みになっています。それなので、観客席にいても、この風を感じることができるんです。
町田:実は私、矢沢永吉さんの50周年記念ライブで、一観客としてここ来まして。三層目の高いとこから見たんですけど、確かに常に心地よい風が感じられて、全くストレスなく快適に見ることができました。
矢沢永吉さんのライブに行った際の写真
牧野:良かったです。ありがとうございます。
屋根は鉄骨と木材を組み合わせたハイブリッド構造。主に国産のカラ松と杉が使用され、温かみや日本らしさを感じることができる
町田:国立競技場は、木が施されていますが、これがついていないのを想像すると、ただの無骨な鉄骨の屋根という感じですよね。でも、木でコーティングされていることで全然雰囲気変わりますよね。そして、ひとつフロアを降りてきました。
車いす席
牧野:こちらが2層の3階エリアになります。ここは車いす席・介助席になっていて、介助している方と一緒に、ご覧いただくことができます。
町田:今回のオリンピックでは、多様性と調和というスローガンが考えられています。施設もアクセシビリティやユニバーサルデザインが重視されていますが、そういう仕掛けが国立競技場にもたくさん施されているということですよね。
牧野:おっしゃる通りです。また、こちらの白い筒はなんだと思いますか。
町田:ジェット機のエンジンみたいな感じですね。
牧野:この白い筒が全部で185台あります。名前は気流創出ファンというのですが、大きな扇風機になっています。風がない日などはこちらを動かして、観客席に風を送ることができる機械です。
町田:先程最上階で天然の風を感じたけれど、それがあまりない時は、人工で気流を起こすんですね。
気流創出ファン
牧野:そうですね。人工で気流を起こすことができます。次に、ぜひピッチに行きたいと思います。
町田:いよいよ、ですね。
牧野:ぜひ選手の気持ちを味わっていただきたいです。
町田:ここで「うわあっ!」と、なるわけですもんね。
牧野:はい。6万7750人の歓声が聞こえると思います。
町田:大きいですね。圧倒されてしまいます。
観客席
牧野:トラックに立つと、大きさを感じていただけると思います。特徴的な観客席は5色になっていまして、上に行くほど白い椅子が多く、下に行くほど茶色っぽい椅子が多いんです。こちら森の木漏れ日を表現をしていて、光に近い色。木々に近い色、土に近い色という形で、一周、ぐるっと森を感じられるような座席になっています。
町田:確かに、そうですね。せっかくのピッチなので、芝生の方まで近づかせてもらいますけれども、青々として美しいですね。
屋根にはガラスが使用されている
牧野:ありがとうございます。国立競技場は屋根がとても大きいので、芝生への日照が厳しい条件になっています。日照を大きく取り入れるために、屋根がガラスになっているのが分かりますでしょうか。
町田:本当だ。
牧野:あちらから南側の光をより取り入れやすくなっています。この角度であれば光が入るというようなことも計算し尽くして設計した上で、デザインされていますが、それでも日陰ができてしまうんです。そのため、国内では珍しい品種で、日陰に強いティフグランドという芝を選んで使っています。
町田:スタジアムを丁寧に説明いただき、ありがとうございます。いろいろな魅力を発見することができました。この巨大施設。今、国立競技場はどのように運営されているのでしょうか。
牧野:国立競技場は、私たち日本スポーツ振興センターが運営をしております。ただ、警備ですとか、今日もスタンドの清掃しておりますけれども、清掃や芝生の管理などにつきましては民間事業者に委託をしております。
独立行政法人 日本スポーツ振興センターとは
町田:なるほど。ところで、私はよく知っているのですが、日本スポーツ振興センターについて、まだまだ知らない人もいると思いますので、改めてどういった組織なのか説明していただけますでしょうか。
牧野:日本スポーツ振興センターは、国立競技場のほかに秩父宮ラグビー場や国立代々木競技場なども所有をしています。そのほかに、トップアスリートの育成なども担っており、西が丘の味の素ナショナルトレーニングセンターでは、トップアスリートが日々、活動しています。
町田:様々な形で日本のスポーツをサポートする、支援する組織だということですよね。
牧野:その通りです。
町田:国立競技場ですが、今年4月に再オープン。一般利用が始まって、ようやく半年が過ぎようとしていますけれども、今までどのようなイベントが行われ、そしてこれからどんなイベントを招致しようとお考えですか。
牧野:これまでには、6月6日にサッカーの日本代表戦。7月9日にはラグビーの日本代表戦も行われました。国際的な大きな試合が行われていまして、今後も、こういった日本代表戦やサッカーですとJリーグ。ラグビーはリーグワンといった国内の大きなイベントも実施していきたいと思っています。
町田:基本的に芝のピッチを使った競技はもちろん、フィールドを使った陸上も行われるんですか。
牧野:そうですね。今年はセイコーゴールデングランプリ陸上という国際的な大会も行いましたし、2025年には世界陸上の招致が決定しています。
青々とした芝生が印象的
町田:観戦するスポーツイベントだけではなく、いろいろな方々にここを使ってスポーツをするイベントも考えられているということですよね。
牧野:おっしゃる通りです。6万人を埋めるようなイベントというのは、国際的にも、国内的にも、年間スケジュールをたくさん埋めるほどに誘致することは難しいと思っています。ですので、ビッグイベントとビッグイベントの間を埋めるような企画や、本日、スタジアムツアーもやっていますが、こうした取り組みを続けることで収益であったり、国民の皆さんに親しんでもらったりということをしていきたいと思っています。
町田:例えば、サッカーのファン。あるチームのファンだから見に行くとか、ラグビーファンだから見に行くというのは当然だと思うんですけれども、私は施設への愛着もあると思うんです。国立競技場だから見に行く。それがたとえサッカーをあんまり知らなかったとしても国立競技場でサッカーがあるなら1回見てみようかという形です。施設見学ツアーで実際に自分がその施設をくまなく体験することによって「すごく素敵な施設だな」と思ったら、スポーツでもエンターテイメントでも、1度はここに観客として来てみようかなという気になりますからね。そういう試みを地道にでも続けていってほしいなと思います。
牧野:ありがとうございます。
町田:もちろんスポーツだけじゃなくてエンターテイメントも開催されていますよね。
牧野:先日、矢沢永吉さんのコンサートも開催しました。そのほかには企業のイベントや撮影。スポーツだけではない利用も、今年4月からたくさん受けており、今後もたくさん予定が入っていますので、またいろいろな記事で見かけていただけると思います。
町田:そうですね。私もまたここに観客として戻ってきたいと思います。
牧野:ぜひお願いします。
学校教育にも取り入れられている国立競技場のスタジアムツアー
子どたちに話を聞く町田
国立競技場では今年4月からスタジアムツアーを開始。選手と同じ目線で夏の興奮を堪能することができます。さらに、会場内には大会で実際に使用された様々なアイテムが並び、聖火リレートーチや表彰台では記念撮影も可能です。
また、スタジアムでのレガシー体験は、学校教育の中にも取り入れられています。取材をした日は、都内の小学生たちがツアーに参加。陸上トラックでは徒競走も行われ、生徒たちは特別な時間を過ごすことができました。
生徒A:走ったことない人と一緒に走れたし、楽しかった。一生に1度の思い出だし、みんなの笑顔が見れて嬉しいです。
生徒B:オリンピック選手とか、いろいろな人が走っている中で小学生の子も走ることができてとても楽しかったし、嬉しかったです。
先生:オリンピックが行われた同じ場所でというのは子どもたちには嬉しいことだと思いますし、スタジアムに入った時に、「わぁ!」と笑顔になる瞬間が本当に起きるんだなと感じました。子どもたちにもやっぱり必要な体験だなと思います。ここでスポーツをすること、知ること、支えること。すべてができますし、オリンピックのレガシーを大事にしたいので、本当にいい機会だなと思います。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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